農業に関わるすべての人を繋ぐ存在に
株式会社マイナビ 執行役員 農業活性事業部 事業部長
池本 博則(いけもと・ひろのり)
農業界の課題は、情報分散と、新しい社会や未来を創る‟束ねられた力“の不在です。
当社は人材ビジネスを主力事業としてきましたが、昨年8月に情報サイト「マイナビ農業」を立ち上げるなど、農業のステークホルダーを繋ぐ存在になろうと挑んでいます。
農業事業から撤退する企業は少なくありませんが、我々は情熱を持って変革しようとする人々を繋ぎ、農業界を盛り上げていきたいです。今日は日本の農業の未来を皆で考える、有意義な場にできたらと思います。
農業を、若者の“就きたい職業No.1”に
公益社団法人日本農業法人協会 専務理事
吉永 俊雄(よしなが・としお)氏
日本の農業界は注目と期待を集めている一方で、外部からの新規参入が少なく新陳代謝が進まない、プロとアマチュアが混在しているなどの課題があり、産業として成熟していません。現状、農業は次世代にとって魅力的な業界と映らず、結果として高齢化や労働力不足を招いています。
これらの課題に対する我々の使命は、産業の先駆者・リーダーとして、会員とともに「プロ農業の核」となることです。世界最高品質の農業経営を実現し、その成果によって社会を幸福にすることを目標に掲げています。
我々が考える究極の未来像とは、若者が就きたい職業の第一位に農業が選ばれることです。実現を目指し、『農業法人白書』の発刊、東京で将来の農業の理解者を育成するイベント「ファーマーズ&キッズフェスタ」の開催、農業体験バスツアーの企画など様々な活動を通し、認知度向上に励んでいます。農業生産法人へのインターンシップ斡旋、国への政策提言も行っています。
女性経営者を対象としたセミナーや、全国の50歳以下の農家が集まる「次世代農業サミット」の開催など、経営発展支援にも力を入れています。農業支援企業には、ぜひ応援団となってご理解とご支援を賜りたいと思います。
<基調講演>農業支援企業の取り組み事例①
NTTグループの農業×ICTの取り組みと未来像
日本電信電話株式会社(NTT) 研究企画部門 農業プロデュース担当部長
久住 嘉和(くすみ・よしかず)氏
1995年 日本電信電話株式会社に入社以降、設備計画、企業 買収、グローバル事業展開、技術戦略などを経て、現職(NTT 研究企画部門 農業プロデュース担当部長)
農業は重要な成長分野
NTTグループは、医療、交通、農業、教育、街づくり、観光、スマートワーク(テレワーク)などの各分野と「ICT」を掛け合わせ、「〇〇×ICT」として自社の研究開発技術を活用する取り組みを行っています。
農業を重要な成長分野の一つと捉えて、全国の自治体やJA、生産法人や関連メーカーと連携し、農業へのICT活用に取り組んでいます。外部だけでなく、NTTグループ約30社との内部連携も強め、技術など強みを持ち寄っています。具体例をいくつか紹介します。
NTTドコモは、水位・水温センサーによる圃場遠隔監視サービス(水稲)を開発しました。圃場や収穫の状況をデータ化してクラウドに収集し、情報の見える化を実現しました。導入する全国約40の自治体からは、見回りなど生産者の労力が約25%軽減したことや、コメの品質と食味の向上が報告されました。
気象予報士が30人在籍する株式会社ハレックスは、気象庁のビックデータを独自手法で解析して、30分毎に1km四方単位の予測を更新するなど、非常に“鮮度”が良く、きめ細かい情報を提供しています。大手農機メーカーと提供し、農家がトラクターの上から自分の圃場の気象予報をピンポイントで確認する、という世界を実現しています。
NTTテクノクロスは、ICTセンサーを活用し、反芻や起立など、牛の主要行動を記録・分析し、発情や疾病の予兆通知や、起立困難による突然死防止に繋げる仕組みを作りました。
自社の技術で新たな価値創り
また、豚の体重をスマホで推測できるアプリ「デジタル目勘」を伊藤忠飼料と共同開発。豚の取引価格は、重量と背中の脂のノリで決まります。豚の体重を測ることはなかなか難しいといわれ、業者さんは豚専用の体重計を使う、トラックに載せて集団計測するなどをしています。あるいは農家さんが、月齢や目勘から体重推定を行っていました。
しかし、アプリを使えば、AIの画像認識技術を組み込んだ計測ロジックのもと、簡単に正確な推測ができるようになります。この秋口にサービス開始を目指しています。これは、「Bto Bto X」「〇〇×ICT」の非常に良い例になっていて、我々がICTを提供し、伊藤忠飼料さんが農家さんにサービスを提供していくモデルです。ちなみに、大変なことになるかもしれないので、このカメラを人に向けないようにしてください(笑)
もう一つ、「産地推定」というものを紹介します。一見、農業と関係のないレーザー通信の技術を使って、食品の産地を推定しようというチャレンジを行っています。農作物は、雨水を吸って育つわけですが、産地によって重い水、軽い水の割合が違います。気流の関係で、南側ほど重い水がたくさん含まれています。
この特性を活かし、お米・果物・はちみつ・日本酒・ワイン・葉物などの産地特定を行い、産地を証明する付加サービスとして活用して頂いています。
今後は生産面のみならず、流通、販売、消費などバリューチェーンに沿ったソリューションを提案し、自社の技術を活かして農業に新たな価値づくりを行っていきます。