「盆栽」とはそもそも何?
盆栽とは、山野で育つ樹木を鉢で育てながら、日本の自然の美しさを愛でる芸術性の高い趣味です。日本の盆栽の歴史では、古くは1300年代の絵巻物に見ることができ、当時は貴族のような身分の高い人たちの間で親しまれました。
江戸時代(17世紀初め)になると庶民の間にも広まり始め、明治時代になって芸術としての価値が高まり、大規模な「盆栽展」などが催されるようになりました。
盆栽の樹木の種類は豊富で、常緑の「松柏(しょうはく)」、モミジやブナなど広葉落葉樹の「葉もの」、桜や梅といった「花もの」、姫リンゴやカリンなど「実もの」の4種類に大きく分かれます。
盆栽の苗木は「盆栽園」で
出来上がった盆栽を購入して眺めるのもよいですが、すでにつくられた作品は高価なものが多く、簡単には手を出しづらいものです。苗木であれば比較的安価で手に入り、育てる楽しみをより一層味わうことができます。
盆栽の苗木は、全国各地にある盆栽園で購入するのがおすすめです。盆栽を観賞できるスペースのほか、盆栽用の土や鉢を置いているところもあります。愛好家が集まるので、最近の盆栽事情について情報交換できるスポットとしても人気です。
買ってきた苗木を鉢に植える際は、樹形が美しくなるよう枝を整えましょう。どの角度を正面に据えれば様になるかをよく見定めることが重要です。根を傷めないように優しく土を入れます。
盆栽はここでさかん うどん県は盆栽県?
鑑賞用の切り花や鉢植えの植物を育てる農業分野を花卉栽培といい、盆栽はこの分野の一つです(※1)。
埼玉県大宮市は全国を代表する盆栽の生産地で、高い栽培技術を持つ盆栽職人が集まる地として知られています。そこで生み出される盆栽は最高級ブランド「大宮盆栽」と呼ばれており、その優美さで多くの愛好家をうならせてきました(※2)。
香川県高松市は、松の盆栽が盛んで、全国シェアの約8割を占めています。樹形の美しさはもちろんですが、水はけの良い土壌のおかげで根腐れや傷みに強いという魅力があります(※3)。
また、香川県は近年、海外での盆栽ニーズに応えるため、県内農家と協力して輸出対策に乗り出しました。盆栽は輸出時、検疫のため土を落とさなければなりませんが、木が弱ってしまうリスクがあるのが課題でした。このため、土の代わりに、炭化した植物を材料とした「ピートモス」という素材で育て、そのまま輸出できる技術開発に力を入れています(※4)。
古くから伝わる盆栽を受け継ぐための技術は、農家のみなさんの手によって日々進化しているのです。
<参考>
※1 花きの現状について:農林水産省
※2 さいたま市大宮盆栽美術館
※3 盆栽の歴史:JA香川県国分寺盆栽センター
※4 盆栽、土なし栽培で輸出 香川県、新資材の実証実験:日本経済新聞