採卵鶏、果樹、施設野菜で女性の割合がアップ
日本政策金融公庫による「雇用状況等の動向に関する調査結果」から、農業に関わる女性の動向について調べてみました。パートや研修生を除いて、農業経営体で過去5年間における女性の割合はどのように変化しているのでしょうか。
その結果、「増加している」と答えた経営体が17.5%で、「減少している」の8.1%よりも9.4ポイント高かったのです。業種別では、採卵鶏(30.6%)、果樹(27.1%)、施設野菜(25.8%)、露地野菜(22%)などが特に高い割合を示しました。
地域別では、中国・四国(25.2%)、九州地方(20%)で女性増加傾向が特に高く、全体の平均(17.5%)よりも低いのは、北海道(12.2%)、北陸(16%)、近畿(17.2%)でした。
業種や地域によって多少の差はありますが、農業界全体で女性が経営に携わるケースが過去5年間で増えていることがわかります。
売上が高い経営体ほど女性を積極的に雇用
次に注目してみたいのが、女性の雇用と売上の関連性です。農業経営体の売上規模別に、女性の割合の変化について調べてみると、売上が1億円以上5億円未満の経営体では26.3%が、5億円以上の経営体では33.3%が「過去5年間で女性の雇用が増えている」と回答。売上高が大きくなるにつれて、女性の雇用が増えている経営体の割合も増加しているのです。
女性が関わる経営体は売上が高い傾向
では、経営者や役員、管理職として女性が農業経営に関与している場合について見てみましょう。「女性が経営に関与している」と答えた農業経営体は全体の53.8%にのぼり、過半数の経営体で、女性がなんらかの形で経営の重要な役割を担っていることがわかります。
さらに、女性が経営に関わっている経営体とそうでない経営体について、過去3年間の売上と経常利益の増加率について比較してみました。
すると、女性が経営に関わっていない経営体の売上高増加率は平均21.7%、直近経常利益増加率は55.2%に対して、女性が関わっている経営体では売上高増加率は23.6%、直近経常利益増加率は126.6%となったのです。
女性の経営関与の有無で経常利益増加率の差が大きく開き、法人に限ってみれば、女性が関わっている経営体の方が137.1ポイントも大きな伸びを見せていることがわかったのです。
営業・販売、6次化の現場で女性が大活躍
最後に、女性がどんな分野で農業に携わっているのか見てみましょう。女性の担当分野については、次のような結果となりました。
女性の担当分野(複数回答OK)
・生産 67.4%
・経営管理 49.7%
・営業・販売 25%
・6次化(加工・商品開発等) 17.8%
・その他 10%
女性が担当する分野として生産現場が最も多いことがわかりましたが、経営管理や営業、販売といった分野にも携わる方が少なくないことがわかります。
さらに、女性の担当分野別に直近3年間の経常利益の増加率について調べてみた結果が以下です。
女性の担当分野別 3年間の経常利益の増加率
・営業・販売 254.2%(法人672.3%、個人3.9%)
・6次化 232.7%(法人431.1%、個人13.1%)
・経営管理 124.7%(法人220.5%、個人14.6%)
・生産 120.5%(法人280.6%、個人10.9%)
・その他 165.1%(法人238.2%、個人16.9%)
・女性が経営に関与していない経営体の平均 55.2%(法人107.8%、個人9.9%)
営業・販売や6次化の分野で、特に経常利益の伸びが驚くほど高く、女性の関与が経常利益の大きな増加に結びついていることが明らかです。
農業は体力を必要とする力仕事が多く、主力となるのは男性の労働力と考えられていたかもしれません。しかし、営業・販売といった分野は、女性顧客へのアプローチがしやすいなど、女性ならではの関わり方があるようです。そして、それが農業経営体の利益を後押ししているということがわかります。
今回の調査結果から明らかになったのは、農業に携わる女性が増えてきており、女性が関与したことで経営が大きく前進している農業経営体がとても多いことです。農作物を購入して食べる消費者は、世代も性別も関係なくすべての層に該当します。だからこそ、女性の新しい発想や視点が、農作物の販売などのシーンで活きてくるのではないでしょうか。女性のさらなる活躍が、農業の将来を明るくする一つのきっかけになるかもしれません。
2016年9月 日本政策金融公庫調べ