特集 次世代を担う若手農業者の姿
農業において担い手の高齢化や減少は課題の中心ですが、近年は40代以下の新規就農者数が比較的高い水準で推移するという明るい兆しも現れています。農業の持続的発展に向けて、彼ら若手の農業者が規模の拡大や投資を通じた生産性、付加価値の向上に挑戦し、効率的でなお安定的な農業経営を実現していくことが重要です。29年度白書は、冒頭の特集で、40代以下の若手農業者に焦点を当て、農林業センサス(※1)などの統計データやWEBアンケート(※2)から明らかになった経営構造の特徴、農業経営に対する考え方について記述しています。
若手農業者においては、規模の拡大とともに、常雇いの拡大、単位面積・頭数当たり労働時間の短縮を図る投資が行われていることと、アンケートを通じて、農業生産、出荷・販売先で今後伸ばしていきたい方向についての回答者の考えが確認されました。効率的かつ安定的な農業経営者の育成に向けての施策については、農業経営の法人化、AI、IoT、ロボット、ドローンなどを取り入れた革新的な技術の開発や、農業者が今後伸ばしていきたい方向を後押しできる環境づくりが重要としています。そのためには、革新的な技術を農業者が導入可能な価格で速やかに商品化していくことや、生産資材価格の引下げ、農産物の流通・加工の構造改革などの農業競争力強化プログラムの着実な実施を進めていくことが必要と結んでいます。
※1 日本の農林業の生産構造や就業構造、農山村地域における土地資源など農林業・農山村の基本構造の実態とその変化を明らかにし、農林業施策の企画・立案・推進のための基礎資料となる統計を作成し、提供することを目的に、5年ごとに行う調査。
※2 2017年10月26日から11月5日までに、同年10月1日時点で49歳以下の農業者を対象に「農家・法人役員編」と「雇用者編」の2種類を実施。1,885人から回答を得た。
アンケートから見る 若手農業者が伸ばしていきたい方向
若手農業者自身の置かれている現状や将来の姿など幅広い項目を用意したアンケートで、彼らの考えが如実に現れたのは、農業生産、出荷・販売先で今後伸ばしていきたい方向についての設問でした。複数選択可の選択肢の中で、農業生産で伸ばしていきたいポイントは①単収の向上、②高品質化・ブランド化、③面積・飼養頭数の拡大、④資材費等コストの削減、⑤異業種との連携、⑥新たな品目の導入が上位に。また、出荷・販売先では①消費者への直接販売、②外食中食業者、③自営以外の直売所などに関心を寄せているという結果が。収益を向上させるための品質・イメージの追求、生産量・品目の拡大、複数の販売チャネルを持つことや、異業種の交流など、需給関係にフォーカスし、産業の一つとして農業を捉えていることが数字で示されました。
29年度白書は特集のほか、4つのトピックスと4章からなる本章で構成されています。
トピックス1 産出額が2年連続増加の農業、さらなる発展に向け海外も視野に
トピックス2 日EU・EPA交渉の妥結と対策
トピックス3 「明治150年」関連施策テーマ 我が国の近代化に大きく貢献した養蚕
トピックス4 動き出した農泊
産出額が2年連続増加の農業、さらなる発展に向け海外も視野に
日本の農業産出額は2年連続で増加し、16年ぶりに9兆円台を回復した一方で、将来に向けた食料需要は、国内では人口減少や高齢化の進行で減少し、海外では人口増加や経済成長に合わせて増加すると考えられています。
白書は、国内需要を念頭に置いた従来の生産方法から、輸出を販路の一つに位置付け、生産量を拡大することで、販売額全体を増やし、農業所得を向上させることが可能な状況が整ってきたと記述。輸出体制や輸出インフラの整備、輸送技術や資材の開発、検疫条件の合意などが進展してきた現在は、農業者が輸出に取り組む好機となっているとし、国内需要に加えて世界需要も視野に入れた農業生産への意識の転換を促しています。
動き出した農泊
日本ならではの伝統的な生活体験と、そこに住む人々との交流を楽しむ「農泊」は、農家民宿や古民家などを活用した宿泊施設に滞在して、観光客にその土地の魅力を味わってもらう農山漁村滞在型旅行のこと。農林水産省は、地方創生や観光立国の関連施策に位置付けられている「農泊」をビジネスとして実施できる体制を持った地域を2020年までに500地域まで増やすことを目標としており、農村地域の所得向上につなげる取組を紹介してします。
様々なデータや全国各地の事例を用いて「日本の農業の今」を知ることができる最新の資料「平成29年度 食料・農業・農村白書」は、農林水産省のホームページで公開しています。
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農林水産省
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