全国初の「農家レストラン」は、規制緩和を利用して誕生

「ラ・ビステッカ」の赤身ステーキ
今では市内に農家レストランが複数生まれ、全国的な農家レストラン人気の火付け役となっている新潟市ですが、農家が自分の農地をレストランにすることが認められたのは2014年。実は最近のことなんです。
それまでは、「農業用施設用地」に設置できるのは畜舎や倉庫などに限定されていました。しかし、農業を盛り上げていくために規制緩和を求める声が上がり始めます。その流れで2014年に「革新的農業実践特区(農業特区)」の指定を受けたのが新潟市。農家レストランを「農業用施設」と位置づけることで、農地にレストランを開くことが可能になったのです。
今回紹介する「ラ・ビステッカ」は、この規制緩和を利用して誕生した全国第1号の農家レストランです。新潟の風光明媚な田園風景の真ん中に、田んぼを埋め立てて造られました。
店名の「ラ・ビステッカ」は、イタリア語で「ビーフステーキ」のこと。その名のとおり、ステーキメニューが中心の農家レストランです。天井の高い広々とした空間がのどかな風景になじみ、街なかでは体験できない四季折々の景観と料理を楽しめるのは農家レストランならではのことです。
完全地域生産・循環型農業への挑戦

「フジタファーム」の牛たち
もちろん「ラ・ビステッカ」の魅力はその環境だけではありません。提供される料理はどれもこだわりの逸品です。レストランを運営する「藤田牧場」の関連会社「フジタファーム」は自然で優しい酪農を目指し、イタリア語で「贈り物の広場」という意味の「Piazza Regalo(ピアッツァ・レガーロ)」と名付けた一帯で、関連会社とともに循環型農業を実践。レストランで提供する食材も可能な限り地元のものを使用しています。
例えば、レストランで味わえる岩室牛。乳牛と黒毛和牛を掛け合わせて生まれた交雑種で、和牛に劣らず、脂が白く肉の旨みが強いのが特徴です。「フジタファーム」で生まれた仔牛たちは、関連会社の「米工房いわむろ」で生産される飼料米や稲わらを食べて育ちます。一方で「米工房いわむろ」では、「フジタファーム」で出る牛フンを発酵させた完熟堆肥の有機肥料を土づくりの元肥にすることで、減農薬・減化学肥料で新潟コシヒカリを生産しているのです。
岩室牛と新潟コシヒカリの他、レストランで提供される生乳を使ったデザートは自家製で、季節のジェラートは、関連会社の「ジェラテリア・レガーロ」で作っています。これらの名物食材や料理を楽しみながら、同時に循環型農業の良さも感じられるのが「ラ・ビステッカ」の大きな魅力です。
続々と誕生! 新潟市の農家レストラン
農業特区である新潟市で発展し続ける農家レストランは「ラ・ビステッカ」の他にも2店舗あり、どちらもこだわりの食材と居心地の良い空間で人を引きつけています。
北区新崎の「ラ・トラットリア・エストルト」は、隣のハウスで生産するフルーツトマトを使ったサラダやパスタが人気のイタリアンレストラン。食材だけでなく、施設も新潟県産の杉を使った日本古来の木組み造りです。県外からも人が訪れ行列になることも多く、長いときは2時間待ちなのだとか。
米を生かした優しい味わいを楽しめるのは、西蒲区下山の「トネリコ」。田園風景の中で味わえるのは、米粉を使ったピザやカレー、スイーツなど。近隣農家のとれたて野菜がならぶ直売所や、イチゴ狩りを楽しめる体験ファームも併設しています。
旬の新鮮な食材をその場で楽しめる農家レストラン。より安心でおいしい“食”を追求する農家の試みから、今後も目が離せません。ぜひ一度、足を運んでみてはいかがでしょうか。
ラ・ビステッカ|新潟 ピアッツァ・レガーロ
事業概要|新潟 ピアッツァ・レガーロ
写真提供:フジタファーム