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国産ブドウの“にごりワイン”専門を貫く 滋賀のヒトミワイナリー

国産ブドウの“にごりワイン”専門を貫く 滋賀のヒトミワイナリー

にごり茶、にごり酒があるように、ワインにもある「にごり」というジャンル。にごりワインだけを造る日本で唯一の専門メーカーが滋賀県にあります。うま味がしっかりしていて個性の豊かなラインアップがファンを喜ばせている、ヒトミワイナリーです。日本産の生ブドウを100%使う、日本ワインにこだわるワイナリーの際立つ個性の理由について、聞いてみました。

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ヒトミワイナリーが造る、にごりワイン

右端が定番銘柄h3シリーズのCaribou(カリブー)。絶滅の危機に瀕した動物が描かれているのも特徴

にごりワインだけを専門的に造るワイナリー

ヒトミワイナリーでは、にごりワインだけを年間10~13万本造っています。
代表的な定番商品が、「h3(エイチスリー)」シリーズです。何度も開け閉めできて再利用できる瓶と、特徴的な黒地に白抜きの動物のシルエット。グラスに注げば、不透明な液体に穏やかな泡が立ち、果実感の強い味わいです。

濁っている理由とは

濁りの正体は、食物繊維や酵母などです。
透明なワインの場合、これらをろ過して取り除きます。ですが、ろ過することによって、これらが持つ香りや複雑味も目減りします。
ヒトミワイナリーも、1991年の創業当初は一般的な透明なワインを教科書通りに造っていました。しかし、お客様をうならせるほどではなく、悩む日々。
その中で、醸造家が普段、ろ過する前にタンクから直接すくって飲む「濁ったワイン」を、お客様に試してもらったところ、驚くほどの反響がありました。
そこからヒトミワイナリーは徐々に、にごりワインの銘柄を増やし、2006年には完全に、にごりワイン専門のワイナリーとなりました。

日本ワインとして、農家と連携

ヒトミワイナリーの自社農園はワイナリーから車で5分足らず

国産ブドウ100%のみが「日本ワイン」を名乗れる

2018年10月30日からワインの表示ルールが変わり、国産ブドウを100%使ったものだけが日本ワインを名乗れることになります。ヒトミワイナリーのにごりワインは、日本ワイン。つまり、国産ブドウのみを使っています。
約55アールの自社農場のほか、約85アールの賃借農場でブドウを作り、さらに長野や山形、山梨、岩手のブドウ農家とも契約を結んでいます。
無ろ過で、補糖も補酸もしないピュアでナチュラルなワインだからこそ、ブドウが命。自然相手に、ブドウの糖度が上がるタイミングを見計らった収穫などは、農家との連携無しには成り立ちません。

ブドウの個性を生かすうちに銘柄が増加

若い醸造家たちがブドウの声を聞きながらワインを造る

「やはりブドウは、農家さんによって特徴が違います」と話してくれたのは、ヒトミワイナリーの広報担当、澤田枝里(さわだ・えり)さん。
ヒトミワイナリーでは、年ごとに計画を立て、農家に足を運んで、ブドウの糖度・酸度のバランスなどの希望を伝えます。ですが、ほとんど計画通りにはいかないそう。
「農作物なので収量も変わりますし、糖度や酸度などの味わいも毎年変わります。ブドウが来ると、醸造家がつまんで食べて『計画とは違う仕込みのほうが、このブドウが生きる』となれば、別銘柄になります。なので、うちのワインは50銘柄以上と多くなっています。定番銘柄ももちろんありますが、100本しか造らないものもあります。普通のメーカーでしたら、管理が大変なので、こんなにたくさんは造らないと思います」
計画ありきでなく、何よりもブドウの個性を生かすことがヒトミワイナリーの個性でもあります。
「技術を駆使し、複雑な工程を踏んで“つくる”というよりは、ブドウがそもそも持つポテンシャルを発揮できるように手助けをして仕込んでいます」

醸造家がラベルもデザイン

個性は味だけにとどまりません。
ヒトミワイナリーのワインのラベルは、それぞれ雰囲気が違っています。
それもそのはずで、一人のデザイナーが一貫してデザインしているのではありません。ラベルは、4人いる醸造家がそれぞれ自分自身でデザインしています。これは、醸造家がブドウと対面したときのイメージを伝えるには醸造家自身が表したほうが良いだろう、という方針から。
お客様からは「統一感はないけれど面白いよね」と言われると、澤田さんは笑います。

滋賀県という土地が生むもの

現在、増え続けているワイナリーの数々。そのほとんどは山梨や長野、北海道。滋賀県のヒトミワイナリーは珍しい存在です。
澤田さんは、「滋賀県は日本でも比較的に温暖な地域。ワインのブドウとして代表的なシャルドネも、フランス北部など、涼しい地域に一般的な『ある程度の酸があってミネラル感がある』ものと比べ、しっかり熟して黄色っぽくなり『パイナップルっぽい香り』がついたりします。滋賀のワイナリーなので、県産のブドウの割合も増やしていきたいです」とも話します。
高齢化や離農により空いてしまう畑を引き継ぐ活動も行っており、「愛東ぶどう」と呼ばれ昔からこの地域で親しまれてきたマスカット・ベリーAという品種を、今後もワインにしていきたいと考えているそうです。

個性の掛け算がファンを生む

ワイナリー併設の店舗に立ちながら、ときに自社農場を手伝うこともあると話す溝上広明(みぞがみ・ひろあき)さん

にごりワインを、滋賀というワイナリーとしては珍しい土地で、複数の醸造家がブドウのポテンシャルを生かして造るヒトミワイナリー。
料理人からの評価も高く、独創性を引き出しやすいワインとも。MCNi(エムシーエヌアイ)という人気銘柄がしば漬けに合うというのも、料理人からの発想でした。ワインにしば漬けと聞けば、ワイン好きならずとも驚くことでしょう。
その多くが決してスタンダードとは言えないスタイルながら、強い個性でしっかりとファンを増やしているワイナリーです。

ヒトミワイナリー

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