そもそも野菜ソムリエとは?
日本野菜ソムリエ協会が認定する「野菜ソムリエ」は、野菜・果物の知識を身につけることで、その魅力や価値を社会に広めるスペシャリスト。生産者と生活者の架け橋となることが使命とされています。資格取得の目的は、家族の健康維持のため、キャリアチェンジのため、趣味など人それぞれですが、最近は「仕事に役立てたい」という人が多く、資格取得を目指す農業従事者も少なくないようです。
「農業従事者は、既に知識が豊富な方も多いと思います。しかし、『野菜ソムリエ』の講座では、“ベジフルコミュニケーション”といった野菜・果物の魅力の伝え方を学ぶ科目や、品種や調理法の違いを食べ比べる科目もあるため、お客さんが知りたいことをわかりやすく伝えるというスキルが身につきますよ」と協会広報担当の井上さん。実際に資格を取得した人たちからは、「イベントやマルシェなどで地元野菜の魅力をPRし、地域社会に貢献する活動ができてうれしい」「産地や品種だけではなく、栄養面や食べ方などまで提案する事ができるようになり、お客さんとの距離が近くなった」などの声が協会に届いているそうです。
野菜ソムリエ講座には、野菜・果物の基礎知識や、伝え方のノウハウを身につけられる「野菜ソムリエコース」と、ブランディングやマーケティング、購買行動など、より踏み込んだ内容を勉強する「野菜ソムリエプロコース」があります。「自分の育てた野菜のおいしさや感動を、自分の言葉で伝えられるようになりたい」「育てた野菜・果物のブランド力を高め、流通を拡大させていきたい」など、求めるスキルに合わせてコースを選ぶことができます。
資格を持つ農家さんに聞く!野菜ソムリエのメリットとは

79歳という最高齢で「野菜ソムリエプロ」に合格した髙村さん
実際に資格を持つ農業従事者の髙村公子(たかむら・たかこ)さんにお話を伺いました。79歳という最高齢で「野菜ソムリエプロ」に合格したという髙村さん。資格の勉強をするまでは、肥料や種のまき方などあまりよくわからずに野菜を育てていたため、栽培に失敗することも少なくなかったそうです。そんなとき、納入先であるスーパーの担当者に野菜ソムリエのことを聞き、興味を持った髙村さんは、まず野菜ソムリエの資格を取得。その後、さらにワンランク上の野菜ソムリエプロにも挑戦しましたが、なかなか合格することができず、16回試験に落ち続けます。しかし粘り強く努力し、79歳のとき、17回目の挑戦でようやく資格を取得したそうです。
「野菜をうまく作れるようになっただけではなく、知識を得たことから、プロとして自信を持ってお客さんとコミュニケーションを取ることができるようになりました。話を聞いて野菜を買ってくれるお客さんもいますよ」と髙 村さん。さらに、講座では他業種はもちろん、20代や30代の仲間とも知り合い、自分の世界を広げることができたそうです。
資格取得で広がる農業活動! 他にもこんな生かし方
髙村さんの他にも、資格を生かしている農業従事者はたくさんいます。例えば、京都府で農業を営む、野菜ソムリエプロ・清水弘明(しみず・ひろあき)さんは、これまで直売所で販売する商品に自分の名前しか表示していなかったそうですが、野菜の魅力の伝え方を勉強したことから、消費者にもわかりやすいよう、野菜それぞれの説明のラベルをつけて販売するようになりました。また、特製のリーフレットを作成したことから、興味を持った直売所の管理担当より依頼を受けて、「直売所だより」で「野菜ソムリエが語る○○」といったコーナーも任されるようになったそうです。
資格の勉強を通して農産物の原産地に興味を持ったというのは、広島県尾道市で野菜を作る、野菜ソムリエプロ・卯元幸江(うもと・さちえ)さん。卯元さんは、その知識を生かし、これまでの栽培品目に加え、尾道の気候にマッチする野菜の栽培を始めました。また、地元のホテルやレストランに納品する際にも、おいしく食べてもらうヒントになれば、と野菜の特性を書いたメモをつけて納品していくうちに「今、旬のサラダを作るのにぴったりの野菜は?」「お肉を巻くのに合う野菜は?」など相談を受け、提案するようになったそうです。
農業従事者におすすめの資格「野菜ソムリエ」。今回紹介した人たちのように、資格取得から新しい道が開けるかもしれませんよ!
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一般社団法人 日本野菜ソムリエ協会
写真提供:一般社団法人 日本野菜ソムリエ協会