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生産者の試み

そのまま食べてもおいしい油。原料の良さを生かした、こだわりの製法

そのまま食べてもおいしい油。原料の良さを生かした、こだわりの製法

最終更新日:2018年06月13日

2017年に創業70周年を迎えた、熊本県八代郡氷川町の堀内製油。自社農園で農薬を使わずに育てた菜種やツバキ、ゴマなどを原料に使い、創業当時から変わらない製法で、一番搾りのみを使った油づくりを続けています。丁寧に作った油には、原料自体の風味や香り、栄養分が残るため、そのまま食べてもしっかり味がわかるのだとか。健康によく、「おいしい」油を届けるために。手間ひまをかけたこだわりの油づくりについて、三代目の堀内貴志(ほりうち・たかし)さんに伺いました。

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70年の伝統を受け継ぐ、油のおいしさを極めた製法

原料の良さを生かして抽出される油

──堀内製油では油の製法に特徴があるとお聞きしましたが、どのような方法で作っているのでしょうか。

私たちは、創業当時から変わらない「古式圧搾製法」で油づくりをしています。

油の製法は、大きく抽出製法と圧搾製法の2つに分かれます。抽出製法では、原料に溶剤をかけて油を抽出します。市場に出回っている多くの油がこの製法で作られています。コストも手間も少なくてすむので、大量の油を安価で作ることができますが、溶剤をかけるために香りや味が損なわれ、無味無臭に近い油に精製されています。

これに対して、圧搾製法は、原料に圧力をかけて油を搾ります。溶剤を使わないので、原料の風味や香り、味をしっかりと残すことができます。原料からとれる油の量は抽出法と比べて少なく、細かい手間がかかりますが、私たちは原料本来の良さを残した油を作ろうと、創業当時から続く圧搾製法を守り抜いています。

さらに、一番搾りの油のみを使っているところも特徴ですね。原料を圧搾すると、油の他に油粕(あぶらかす)が出ます。油粕には油分が残っているので、溶剤をかけると2度、3度とまだ油を搾ることができますが、私たちは原料の味や香りを損なわないよう、1度しか搾りません。もちろん油の収量は減ってしまいますが、量よりも質を大切にして作っています。

手間ひまかけて作るからこそ、多くの人に知ってほしい

機械で原料に圧力をかけ、油を搾る

──具体的には、どんな工程で進んでいきますか。

まず、原料を焙煎します。使う原料やその日の天候などに応じて微妙に温度を調節するほか、煎り方や香りは手作業でチェックします。

次に圧搾です。原料を機械に入れて圧力をかけ、油を搾ります。出てきた油に対しても、良いものができているか五感を使って確かめていますね。

さらに、一番搾りの油に含まれている不純物を取り除きます。湯洗いと呼ばれる工程で、油よりも比重が重い水を入れることで、水と一緒に不純物を取り除きます。

このままだと油の中に水分が残ってしまうので、加熱して水分を飛ばします。火で直接加熱すると油の味や香りが落ちてしまうため、私たちは油の中にパイプを入れ、その中に温水を流して緩やかに温めることで、水分を蒸発させるようにしています。

水分を飛ばした油を3日間寝かせたあと和紙でろ過し、油が出来上がります。ここまで1週間くらいかかります。

また、油の原料となる菜種、ツバキ、ゴマの栽培にもチャレンジしています。農薬は一切使いません。安心できるしっかりした原料を使おうと、15年前くらいから自社での栽培を始めました。

──仕事のなかで、特に大変なことは何ですか。

まず原料の収穫ですね。ゴマなどを自分たちの手で収穫するのは、やはり手間がかかり大変です。しかし、より良い油づくりのためには必要なことだと思っています。

それから販売です。私が家を継ぐため戻ってきたとき、堀内製油ではほとんど卸売りしかしていない状態でした。せっかく手間ひまをかけて納得のいく製品を作っていても、消費者に届けられなければ意味がありません。そこで、全国を回って地道に販路を作っていきました。油の良さを伝えるほか、容量や価格、サービス内容など、現地で聞いたお客さんの声を製品に反映して改善しました。

今は、物産展などに出店したり、ウェブサイトを作ったり、お客さん向けの「あぶらやたより」というチラシを発行したりして情報を発信しています。少しずつお客さんも増えていますが、どうやったらより多くの方に知っていただけるか、試行錯誤を続けています。

「さしすせそ」に油の「あ」を

伝統を受け継ぐ、親子三代(左から、二代目克矢さん、初代義信さん、三代目貴志さん)

──実際出来上がった油は、どんな特徴がありますか。

香り高く、しっかり味があるほか、原料の栄養分が損なわれず残っているところが特徴です。また、後味が香ばしく、さらっとしていますね。

使い方としては、なたね油は天ぷら、揚げ物にすると他の油との違いが分かりやすいです。油自体に味があるので、塩をつけるだけで十分おいしい。ソースや醤油はいらないと思います。生の油を塩と一緒にして、刺身や野菜にかけて食べるのもおすすめです。

圧搾製法で作る油は、煎り方や湯洗いの加減で全く味が変わるんです。油はひとくくりにされがちですが、作り手による味の違いも楽しんでみてほしいですね。

また、油というと健康を害するものと思われがちですが、私たちは圧搾製法を用いることで、原料に含まれる栄養素を壊さないように油を作っています。油を食べることによって、人間の体に必要だけれど自分では作ることができない、植物系の脂肪酸を取ることができます。

──最後に、今後の展望を聞かせてください。

よく、料理に必要な基本の調味料は「さしすせそ」と言われますが、私はこれに油の「あ」を加えたいと思っています。油も料理によく使われますが、調味料として認識している方は少ないと思うんです。でも、丁寧に作った油はきちんと香りも味もある。料理の味付けや香り付けに大きな役割を果たします。そのことをもっとたくさんの方に伝えていきたいです。

また、先代からの思いや製法を継承しつつ、お客さんに新しい提案をしていきたいと思っています。例えば、他の食材とのコラボレーション。現在は、ネギを油に漬けて風味を出した季節限定の「ねぎあぶら」や、焦がしニンニクと油を合わせた「黒マー油」などの“香味油”を作り、販売しています。油を効果的に使ったレシピや健康への影響なども発信しているので、多くの方に知っていただきたいですね。

70周年を節目として、商品のデザインなども大幅に変更しました。創業者である祖父の筆跡を商品のロゴにするなど、先代の思いが伝わるよう工夫しています。お客さんのニーズに応え、関係性を築きながら、脈々と受け継がれてきた油づくりをこれからも伝えていきたいと思います。

堀内製油

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