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泉州野菜をピクルスに。日本の食卓を彩る、idsumiピクルス

泉州野菜をピクルスに。日本の食卓を彩る、idsumiピクルス

大阪の南西部に位置する泉州地域の野菜を中心に、一つ一つの食材に合ったアレンジでつくられる「idsumi(いずみ)ピクルス」。西洋風の味つけとは違う、日本人の口に合うことを重視して作られた和のテイストが特徴です。この商品を生み出したのは、泉州の地場産業として創業60年を超えるワイヤロープ工場。全国的に漬物の消費が落ち込み、日本の漬物の定番・泉州水なすの別の活用法を見つけようとする中で、このピクルスが生まれたのです。idsumiピクルスの魅力や誕生秘話について、製造するNSW株式会社の社長、西出喜代彦(にしで・きよひこ)さんに伺いました。

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現代の日本人への新提案、泉州野菜のピクルス

──まず、idsumiピクルスの特徴を教えてください。

私たちのつくるピクルスは、水なすやタマネギ、キャベツなど、大阪・泉州の野菜を主な原料にしています。泉州は昔から、「天下の台所」大阪を支える農作物の宝庫として知られており、良質な水と土壌によっておいしい野菜が育ちます。たとえば水なすは、皮が柔らかく甘みがあり、泉州を代表するブランド野菜です。これらの野菜を丁寧に瓶に詰め、ピクルスにしています。

特徴は、和のテイストを取り入れていることです。これまで、市場に出回っているピクルスの多くは西洋風の味付けでした。私たちは、昆布出汁やレモン、梅などを使い、日本人の口に合うよう工夫しています。また、素材ごとに下処理や味付けを変えていることもポイント。試行錯誤しながら、食材に最も合う方法を考えています。

たとえばタマネギのピクルスは、和風ベースにカツオ出汁やユズ、醤油を使って作ります。普通にタマネギを食べる時に、生のままスライスして醤油と鰹節をかけて食べたりしますよね。そこからヒントを得て、この組み合わせに行きつきました。むやみに組み合わせるのではなく、今ある調理法から構想を練るようにしています。

さらに、身体に良いものであることも大切にしています。私たちのピクルスは合成着色料、保存料無添加。出汁や酢などを使うため、通常の漬物より塩分も少なめです。食べておいしく、身体にもやさしいピクルスです。

一つ一つ丁寧に人の手で瓶詰めし、見た目もきれいに仕上がるので、贈答用にも人気ですね。

鉄から農へ、町工場の大転換

──もともとワイヤロープ工場をされていたと伺いました。ピクルスの製造を始めた背景や、現在の商品ができるまでの経緯を教えてください。

うちは60年以上続くワイヤロープ工場で、父が三代目の社長でした。もともと斜陽産業だったことに加え、2011年ごろから本格的に経営が厳しくなり、会社を潰すくらいなら、今後の泉州の地場産業としてやっていけるような新しい事業にチャレンジしようということになりました。

私は東京のIT系の企業で企画制作の仕事をしていましたが、退職してちょうど実家に戻っていたので、一緒に新しい事業を考えることになったんです。色々調べる中で出てきたのが、地元の特産品である水なすの漬物でした。泉州の水なすは漬物として有名でブランド力があり、市場規模もある程度見込めるだろうと判断しました。

ただ、漬物は全国的に消費が落ち込んでおり、新規で参入しても勝ち目があるとは思えませんでした。ほかに何か活用法がないかと考えた時、ふとピクルスにすることを思いついたんです。日本の漬物に対し、ピクルスは西洋の漬物。同じ漬物でも風味を変えれば、全く新しいものが生まれるのではないかと思いました。しかも、水なすのピクルスはまだ誰も作っていませんでした。それならチャンスがあるのではないかと感じたんです。

そこで母や姉、叔母に声をかけ、家族総出で水なすのピクルスづくりが始まりました。もちろん、誰も作った経験はありません。片っ端からピクルスの料理本を読み、ネットで記事を調べ、何がいいのか試していきました。

その中で、母たちからは「ピクルスって酸っぱい」「味がきつくて苦手」という声が出ました。母たちがそう思うなら、ほかにも同じように思っている人がいるはずです。だったら、自分たちがおいしいと思うものを作ろうと決めました。西洋風の味付けではなく、日本人が食べておいしいと感じる味に仕上げるべく、出汁や米酢などを取り入れ試行錯誤しました。

そうやって出来上がったのが、idsumiピクルスの原型です。昔から親しまれてきた漬物とも、海外のピクルスとも違う、現代の日本人の食卓に合う新しいピクルスができました。

父は一つの製品で百万単位の売り上げが出ていた鉄製品から、一つ売れても数百円にしかならないピクルスへの転換に不安もあったようです。食品は信頼が大事なので、何か一つ事故があればあっという間にダメになる。リスクが大きすぎると言われたこともあります。しかし、商談会や物産展などに地道に出店して売り上げが出るようになると、少しずつ認めてくれました。

今は、ワイヤロープ製造はやめ、ピクルスの製造工場として、新たに走り出しています。

見方を変えれば、新しいアイデアが生まれる

──最後に、今後の展望について教えてください。

今後は、現代日本の食卓に合う新しい漬物として、idsumiピクルスを全国に広めていきたいです。ピクルスの認知度はまだまだ低いので、日常的に食べる文化を社会に根付かせていきたいと思っています。少しずつ新商品を増やしていますが、いずれはすべての野菜をピクルスにしたいですね。食べ方の提案もしていきたいです。

新しい試みとして、フルーツのピクルスも始めました。国産リンゴ酢とハチミツ、キビ砂糖に果物を漬け込んだピクルスで、デザート感覚で「すっぱおいしく」食べていただけます。ヨーグルトにかけたりしてもおいしいですね。

また、ピクルス以外の商品開発も行っていきます。現在は、ピクルスを作る際に出る野菜の切れ端を使ってドレッシングを作っています。このほかにも開発の幅を広げようと思っています。

idsumiピクルスが生まれたのは、水なすに対して少し見方を変えたことがきっかけでした。その経験から私たちは、「新しいアイデアで楽しい食卓をつくる」を企業理念に掲げています。少し視点を変えて新しいアイデアを出すことで、農作物の新しい活用法を見出し、日本の食卓をもっと楽しくしていきたいです。

idsumiピクルス

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