複数産地からの仕入れで、在庫不足を解消
──まずはじめに、Foremaのサービスについて教えてください。
一般消費者向けの国産ジビエのオンラインマーケット「Forema」と、飲食店向けの国産ジビエ発注システム「Forema Pro」を運営しています。
Foremaは、シカやイノシシを中心に、国内の野生動物の肉を扱っています。珍しいものでいくと、アライグマやカモなどもありますね。
1種類の動物に対して、もも肉やひれ肉、ばら肉など、部位によって7、8種類の商品があります。ウインナーなどの加工品、燻製肉もあるほか、いろいろな部位の肉を楽しめるバーベキューセットも用意しています。ジビエだけでなく、野生動物の角やレザーを使った派生品もそろえています。
飲食店向けには、「Forema Pro」というWebプラットホームを展開しています。商品は一般向けのForemaでは扱っていないような希少部位や大型のブロックなど、業務用ならではのものも多く揃っています。2017年に始めたばかりですが、全国の飲食店150店舗ほどに登録していただいています。
──サービスの特徴はどんなところにありますか。
国内の複数産地から仕入れているところです。これによって、年間を通して安定的にジビエを供給できます。
これまで、ジビエは在庫の予測が難しいとされていました。それは、複数の地域と取引していなかったからです。一つの地域からしか仕入れないので、その地域に在庫がなければ欲しい肉が手に入らなかった。そこで、Foremaでは、中国地方、九州地方、北海道などの猟師さんを中心に全国の産地と取引する方針をとっています。その結果、今では「大抵どこかには在庫がある」という状況を実現できています。また、九州と北海道ではだいぶ気候が違うので、さまざまな動物の肉を確保できます。
自然の豊かさを内包するジビエ
──ジビエはどんなところが魅力ですか。
やはりおいしさですね。特におすすめはシカ肉で、高級な牛肉の赤身のような味がしますが、牛よりもさっぱりしています。家畜として飼われている動物とは違い、山林を駆け回って暮らす野生動物ならではの引き締まった肉になります。また、添加物が入った飼料ではなく、自然界の食べ物を食べて育つため、化学物質に対してアレルギーのある方が購入することも多いですね。イノシシ肉は、豚肉の代わりとして同じように料理に使えるので、ジビエが初めての人でも親しみやすいと思います。
季節による違いを楽しめるところも魅力です。ジビエというと、秋が旬だと思われる方が多いようですが、実は年中楽しめます。春もの、夏もの、秋ものと、季節ごとに味わいが変わります。例えば、秋の肉は脂がのっていますが、夏は少ないので、あっさりしたものが好きな方には夏のジビエをおすすめしています。
また、個体差があるところも面白いと思っています。野生動物ですから、例えば同じシカ肉でも、産地ごと、季節ごと、個体ごとに差はあります。何度買っていただいても、以前食べた肉と同じ肉には出会えません。そこにジビエの良さがあります。画一化された工業製品にはないばらつきを、自然の豊かさとして味わっていただきたいと考えています。
日常的にジビエを楽しむ文化をつくる
──最後に、今後の展望を教えてください。
サービスを通して広くジビエを普及させたいと思っています。
現在、野生鳥獣を捕獲した後、食肉などに活用している割合は、全国で5~10%といわれています。活用されなかった鳥獣は、無用に殺されている状態です。ジビエを普及させることで、野生鳥獣の活用率を上げたいと考えています。
普及が進まない背景には、まず販路がないことがあげられます。そこで、私たちのサービスで、消費者がジビエを気軽に買えるようになり、飲食店がジビエを恒常的に仕入れられる状況をつくろうとしています。猟師さんの情報やジビエをおいしく食べられるレシピなどを発信して、もっと日常的にジビエを食べる文化をつくっていきたいです。
最近は、ペット用ジビエの販売も始めました。以前から、一部の人の間ではペットにジビエを食べさせる習慣があり、それをもっと多くの人に広められないかと思ったんです。人間が食べる以外の用途も積極的に開発していきたいです。
また、販路がないことに加え、価格にも問題があります。ジビエの肉の値段が高い背景には、猟師さんが高品質を追求しすぎるという実情もあるんです。猟師さんは地元の山野に誇りと愛着があり、肉を厳選して出荷する傾向が強いです。それで良い肉ばかりが市場に回るわけですが、結果的には単価が高止まりする一因にもなっています。
もちろん、良い肉に適正な値段がつくのは良いことですが、「最高級でなくてもいいから、もっと気軽にジビエを楽しみたい」という要望もあります。そこで、多少品質が落ちてもおいしく食べられるジビエを、手頃な値段で販売することも検討しています。
買い手にとっても、売り手にとっても、野生動物にとっても幸せな仕組みを、サービスを通して作っていきたいです。
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