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無用に殺される命をなくすために。ジビエの普及にかける思い。

無用に殺される命をなくすために。ジビエの普及にかける思い。

国産ジビエを産地直送するオンラインマーケット「Forema(フォレマ)」を運営する、株式会社Forema代表の小泉靖宜(こいずみ・やすのぶ)さん。ジビエの販売を始めるきっかけは、数多くの野生動物が害獣として駆除され、無用に捨てられている現状を知ったことでした。野生動物の肉を食用に役立てることで、殺された命が少しでも有益になるようにと、ジビエの需要拡大に取り組んでいます。ジビエの普及を進めた先に、小泉さんが目指す理想の世界とは。お話を伺いました。

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野生動物が無用に殺される不条理をなくしたい

ジビエ

──サービスを始めた背景を教えてください。

きっかけは、山から下りてきたツキノワグマやヒグマが駆除される様子を特集したテレビ番組を見たことでした。その年はドングリなどの木の実が不作で、例年より駆除されるクマが多いという内容でした。

小さい頃から自然や動物が好きで、学生時代に自然保護への関心が強かった私は、それを見てとても悲しい気持ちになりました。調べてみると、農林水産省の統計では年間80万頭以上の野生動物が、農作物に被害を及ぼす「害獣」として殺されているということでした。罪のない動物たちが人間の生活領域に入ってきただけで殺されている。しかも、殺された後は何にも活用されずに埋められているとのことです。その事実を知り、不条理をなんとかしたいと強く思いました。

当時、私はIT系の企業でウェブデザイナーとして働いていたので、ITの知識を使って何かできないかと考え、ジビエを販売するECサイトを作ることにしました。これが今のサービスForemaの原型ともいえるものです。いきなり野生動物の駆除を止めることはできないので、殺されてしまった動物の命を、せめて有効に活用したいと思ったんです。

継続することが大切なので、ボランティアではなく、ビジネスとして回るように考えながら、サービスを作っていきました。その後、独立起業しWeb制作の受託業務などと並行して運営していましたが、ノウハウが蓄積され取引も増えてきたので、法人化して本腰を入れた取り組みを開始しました。

全国各地の猟師と関係性を築く

取引先の猟師さんたち

──野生動物が無用に殺される現状をなんとかしたいと始めたサービスだったんですね。現在の形ができるまで、特に大変だったことはなんですか。

猟師さんや自治体との人間関係を築くことです。ジビエを提供してくれる取引先がなければ、サービスは成り立ちません。そこで、新聞の地方欄から情報を得たり自治体に連絡をとったりして、猟師さんに会いに行きました。

初めは、私がしたいことをなかなかわかってもらえず、お話するのに苦労しました。それでも、一人一人の猟師さんと信頼関係を築いていくしかないので、小まめに通って少しずつ理解してもらいました。その結果、徐々に協力者が増えてきました。

サービスが認知されるようになると、逆に猟師さんから「肉を提供したい」とオファーもいただけるようになりましたし、最初は非協力的だった自治体も力を貸してくれるようになりました。今は中国、九州地方と北海道を中心に、約30カ所と取引しています。

また、サービスを拡大していくための資金調達も課題でした。都市部の投資家などにも話をしにいきましたが、活動が評価されても、一緒に何かやるところまでいきません。これは今も苦労しています。口で言うだけでは伝わらないので、取引実績を積み重ね、ジビエの需要があることや、このサービスの有益性をデータで伝えていかなければいけないと思っています。

“捨てられる動物の命”をなくすために

農村

──最後に、小泉さんの今後のビジョンを教えてください。

“捨てられる動物の命”がなくなることを目指しています。

今は一般消費者向けの「Forema」や、飲食店向けの「Forema Pro」を通してジビエの普及と需要拡大に取り組んでいますが、それだけでは十分ではありません。害獣として殺される動物がいなくなることが、私の理想です。

そのためには、人間と動物との紛争をなくすことが大事だと考えています。もともと日本の山間部は、人と動物が棲み分けをすることで調和を保っていました。しかし、過疎化や高齢化から、境界線の役割を果たしてきた里山の荒廃が進みました。それによって野生動物が人里に出没しやすくなり、結果として獣害が深刻化する大きな要因の一つとなっています。

現状を改善するために、山間部における人と動物の境界線を引き直していきたいと考えています。まずは、荒廃した里山を再生させる必要があります。そのために山間部での仕事、林業や農業に携わる人を増やしていきたいです。

どんな形で携わるのがより良いのか知るために、実際に山間部へ足を運んだり、農家を兼業している猟師さんに話を聞いたりしています。移住する若い人も増えているので、そういう方がしっかり稼げるようなモデルを開発していきたいですね。ただ農業をするだけでなく、グリーンツーリズムと組み合わせて海外の観光客を誘致するなど、広がりのある方法を模索しています。

私は自分が猟をするわけではないし、農業や林業の経験もありません。しかし、だからこそできることがあると思っています。ビジネスの視点を大切に、日本の山間部に向けて、新しい提案をしていきたいです。また、サービスをつくるまでにたくさんの猟師さんや山間部の方に助けられてきたので、みなさんの役に立つ仕事をしたいと思っています。

Forema

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