ゴミだけではなく、農作物も荒らすインテリギャング
都市でも田舎でも頻繁に見かけるやっかいな鳥といえばカラス。日本にはハシブトガラスとハシボソガラスの2種類が全国に分布しています。ハシブトガラスは額が盛り上がっていてくちばしが太く、ハシボソガラスは体が少し小さくくちばしが細いのが特徴です。
賢い鳥として知られるカラスは、小学校低学年並みの知能があると言われていて、余った食べ物を100カ所以上の場所に隠してもその場所を覚えているそうです。視力も人の数倍良く、暗い夜でも目が利きます。若ガラス、親ガラスともに、それぞれ群れをなして集団で行動し、30種類以上の鳴き方で仲間同士のコミュニケーションを取る情報通です(※1)。
警戒心は強いものの、学習能力の高さで、すぐに慣れて獲物を襲撃する姿はまさにインテリギャング。こんなカラスに農作物を狙われたら、たまったものではありません。
被害総額第3位! シカ、イノシシに次ぐ害獣!
カラスは餌へのこだわりがなく、何でも食べることから、ごみ捨て場の生ごみを荒らし、畑の果実や野菜などの農作物に甚大な被害を及ぼします。農林水産省によると、2016年度のカラスによる被害総額は16億円を超え、シカ、イノシシの被害に次いで第3位という大きな金額になりました(※2)。
被害を受けた農作物は、果樹、飼料作物、穀物など多岐にわたり、特に好物の「甘いもの」に該当するトウモロコシやトマト、スイカなどの果菜類、ナシ、ミカン、ブドウなどの果実類への被害が目立っています。また、ニワトリの卵を食べたり、ビニールハウスを破ったりといった、他の鳥類に見られない特殊な被害も報告されています(※3)。
すぐに環境に慣れ、追い払ってもなかなか逃げないカラスの被害は、農家にとって悩みの種になっています。
※2 全国の野生鳥獣による農作物被害状況について(平成28年):農林水産省
※3 鳥類の基礎知識(PDF):農林水産省 p.10〜13「2 鳥類の生態と被害の特徴」(1)カラス類
効果のあった対策法に慣れてしまうことも……工夫が大切!
カラス被害への一番の対策は、カラスの“慣れ”を防ぐということです。カラスは非常に頭がいいので、防鳥テープや爆音機、カラスの死体や模型などの威嚇法は、時間とともに効果が薄れていきます。色・音・光などを使った撃退グッズを複合的に組み合わせ、効果がなくなったら片付けるなど、カラスの慣れを防ぐ工夫が必要です。
それらを踏まえた上で、防鳥ネットやテグスを張って農地への侵入を防ぎます。設置の際には、たるませない、すき間を作らない、農作物から離すといった点に注意して、カラスが入り込みそうな侵入路をつぶします。魚釣りに使うテグスは、糸が体に触れるのを鳥類が嫌がるため、低コストで一定の効果が得られる優れものです(※4)。
威嚇や防御をしても被害が減らないという場合は、「有害鳥獣捕獲の許可」を受けて、銃や箱わなによる捕獲という手段も考えられます。
空から農作物を狙うカラスは、ある意味シカやイノシシよりも農家にとって強敵です。一度狙われた場所は、カラスが学習して慣れた場所と考えられるため、その後の対策に苦戦を強いられます。まずはしっかりと予防することを心がけて、集落ぐるみでカラスが慣れない環境づくりに注力しましょう。
次回も農家にとっての憎らしい天敵、意外な害獣をご紹介します。
※4 集落ぐるみで取り組む鳥獣害対策(PDF):岡山県 p.14「カラスの生態と対策」
上記の情報は2018年6月14日現在のものです。