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“金次郎像”の二宮尊徳は農政のヒーロー ~この人、この県!農業偉人伝(栃木編)

“金次郎像”の二宮尊徳は農政のヒーロー ~この人、この県!農業偉人伝(栃木編)

小学校などで校門近くにある銅像といえば「二宮金次郎像」。薪を背負って読書をしながら歩く少年の姿は、家の手伝いをしながらも学びを怠らない理想の姿として広められました。多くの人に知られている金次郎ですが、大人になってどうなったかを知っている人はあまり多くないようです。
農業の発展に携わった偉人たちの功績やエピソードを地域ごとに紹介するシリーズ。今回は、栃木県の農業の発展に大きな役割を果たした二宮尊徳(にのみや・そんとく)を紹介します。

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金次郎像で有名な二宮尊徳とは

農業

かつて小学校には必ずといっていいほど設置されていた「二宮金次郎」の銅像。その姿といえば、薪を背負って歩きながら本を読んでいるもの。家庭の手助けと学習の両立の奨励を表すものでした。

そんな二宮金次郎像のもととなった二宮尊徳は、天明7(1787)年に足柄平野の栢山(かやま)村(現在の神奈川県小田原市)に比較的裕福な農家の長男・金次郎として生まれました(天保14(1843)年より、名乗りを「尊徳」と定める)。両親の愛を一身に受け、教育の機会にも恵まれた幼少時を過ごしましたが、近くにあった酒匂川(さかわがわ)が氾濫し、一家が所有していた田の大半が流されてしまうという悲劇に見舞われました。しかも川の氾濫は一度ではおさまらず、両親は失意の中で疲弊して他界。幼い金次郎は親類の家に預けられました。

金次郎は、労働をしながら、わずかな間にも勉強をしました。そこで生まれたのが、歩きながら読書をする有名な彼の姿です。そして、家の仕事や勉強の合間にも、荒れた空き地で菜種や捨て苗などを育て収穫したことから、小さな努力の積み重ねが大切だという「積小為大(せきしょういだい)」の考えを体得します。この考えをもとに、金次郎は地道な努力で収益を増やして田畑を買い戻し、やがて実家の再興に成功しました。

二宮金次郎がつくった互助組織「五常講」。その功績とは

農業

実家の再興を成し遂げた金次郎に、小田原藩は家老服部家の財政再建を依頼、金次郎はそれを成功させます。また、さまざまな大名・旗本等の財政再建と領民救済を担い、成功を遂げたことで、一躍有名になりました。そのころは江戸時代の中でも大飢饉で農村が疲弊しきっていた時期であったため、金次郎が再建の手ほどきをした村は600カ所以上にのぼるといわれています。

また、彼の功績として知られているのが互助組織「五常講」です。これは、藩の使用人や武士たちの生活を助けるためにお金を貸し借りできる仕組みで、いわば信用組合のようなものです。信用組合の発祥はドイツといわれていますが、それよりも早く五常講を制度化、実施していたのですから驚きです。

このように、二宮金次郎は農業と経済に対する優れた発想と実践力の持ち主だったのです。

栃木県真岡市の地域農業復興に貢献する「穴川用水」

神奈川県小田原市・小田原城内にある報徳二宮神社。全国には他にも金次郎を祀(まつ)る報徳二宮神社が存在する

優れた才能を小田原藩主大久保忠真(おおくぼ・ただざね)に見込まれた金次郎は、大久保家の分家・宇津家があった下野国桜町領(現在の栃木県真岡市)を復興させるように依頼されます。

考えた金次郎が目をつけたのが、現在も栃木県真岡市を流れる「穴川用水」でした。茨城県の一部も含み、このあたりでは飛びぬけて大きな用水です。

金次郎は渇水することが多かったこの用水路の堰(せき)を改修して、渇水時にも下流側まで用水が行き届くように「お助け堀」という小水路を作りました。これが功を奏したことで、領内の農業は生産性を増し、領主の宇津家は財政を立て直すことができました。これにより、神奈川県出身の金次郎が栃木県の農政のヒーローとしても名を残すことになったのです。

晩年まで復興事業や飢饉救済など、人々のために尽力した金次郎。小田原城内にある「報徳二宮神社」は、金次郎の活動の基本理念となっている「報徳」(論語の“以徳報徳(徳を以って徳に報いる)”に由来した言葉)にちなんで名付けられた、彼を祀る神社です。各地に大きな功績を残した勤勉な少年・金次郎。銅像を見かける機会があれば、その後の成長した姿にも思いをはせてみてはいかがでしょうか。

次回も、日本の農業をリードした人物を紹介します。

 
参考
報徳博物館
報徳二宮神社
穴川用水(あながわようすい):関東農政局

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