4地区4品目のトレーニングファームを開設!

みどり地区きゅうりトレーニングファームでは最新の環境制御技術を備える施設できゅうりの研修を行います
佐賀県では、以前から新規就農希望者のサポートを行なってきました。しかしながら県の新規就農者は、2015年度135名、2016年度124名、2017年度103名と、減少し続けており、新規就農者の確保・育成が急務という状況。そこで、2017年度より、これまで継続してきた就農支援の取り組みをより力強く推進していくという方針を打ち出し、新たな活動をスタートさせています。
その中心となっているのが就農希望者に対して、栽培技術の習得から就農までを切れ間なくサポートする「トレーニングファーム」の開設です。現在、佐賀県内には「ほうれんそう」(富士町)、「施設きゅうり」(みどり地区武雄市)、「トマト」※(みどり地区鹿島市)、「いちご」※(白石町)の4地区4品目のトレーニングファームがあります。このトレーニングファームが開設される以前は、新規就農希望者が農業技術を学びたいと考えたとき、(1)農業大学校などの研修期間に進学する (2)先輩農家で実務研修をする という主に2つの選択肢しかありませんでした。それも、技術的なことが中心で、農地のこと、住宅のこと、経営的なことまでを一貫してサポートする体制が十分に整っていなかったのです。そこで、佐賀県では、市町・JA・生産部会などが連携し、全体でフォローアップするための体制づくりに取り組むことにしました。
※2018年度中に整備予定
地域が主体性を持ち、課題解決に取り組む仕組みづくり

佐賀市トレーニングファームでほうれんそうを育てる整地の1シーン
「佐賀県では、4地区4品目のトレーニングファームをモデル的な存在と位置付けています。県として研修するためのハウスや施設などのハード面は支援し、実際の運営は、あくまでも地域(市町・JA)が主体ととなって行ってもらっています」と、明石さん。
このトレーニングファームに積極的に取り組んでいるのが、佐賀県内の「佐賀市」と3市3町が協議会を立ち上げ活動する「みどり地区」です。加えて2018年度からは「白石町」で取り組みが始まりました。地域として農業者を確保していきたいという想いのもと、自主性を持った活動を行なっており、佐賀県は、それらの活動を手厚くサポートしています。
「各地域・地区の人々が”他人ごと”ではなく“自分ごと”として捉え、そこで生まれたニーズに対して県がサポートするというカタチが望ましいですね」と、明石さん。それぞれの地区が自主性を持って課題解決に取り組んでいかなければ、本当の意味での解決にはなりません。また、地域の農業者が1人増えることも大切ですが、その地域で暮らし、地域を守る一員となってもらうことも、とても大切なこと。「農」の担い手としてだけでなく、地域を守り続けるためにも、それぞれの地域に暮らす人々が考え、行動していくことが求められています。
困ったとき、悩んだときにすぐに相談できる「トレーナー制度」

厳しくも必要な指導が卒業後の実務に役立ちます
佐賀県では、新規就農を希望する研修生が、実際に農業を行なっている先輩農家から、生産技術や農業経営に関する考え方や経営の組み立て方などについて指導や助言をうけられる「トレーナー制度」にも力を注いでいます。新規就農者は「農業人材力強化総合支援事業」により、一定の条件を満たせば、就農前の研修期間(2年以内)の生活安定、就農直後(5年以内)の経営確立に資する資金(年間150万円)を得ることができますが、佐賀県では、資金面のみならず、困ったとき、悩んだときに相談できる体制づくりを強化することが、担い手の確保・育成には必要不可欠と考えています。就農希望者は先輩農家等で生産技術を中心に学び就農していますが、大切なのは就農後、経営を安定させていくことです。佐賀県では、この「トレーナー制度」を導入する各地域の生産部会を支援しており、先進地視察やトレーナー活動への謝金等へ補助を行ない、新規就農者へのフォロー体制の強化を推進しています。
佐賀県における「農業」のメリットやベネフィットを発信!

さまざまな経歴を持った研修生が集まるから新しい発見もあります
現在、佐賀県の農業は米・麦・大豆が中心ですが、米・麦・大豆で経営を行うには、広大な農地の確保やトラクターなどの大型機械の取得が必要なため、新規就農者にはハードルが高いのが実情です。近年、新規就農者が増加している「きゅうり」と「アスパラガス」などの施設園芸、特に「きゅうり」は収益性が高く稼げる品目であり、佐賀県内に全国的な知名度を誇る生産者がいる点が、就農希望者にとっての魅力となっています。
新規就農希望者といっても、高校生、大学生、U・Iターン希望者など、さまざまな人がいます。農業の実態(収入・労働時間・休日など)が不透明だったり、「3K(きつい・かっこ悪い・稼げない)」に象徴されるようなイメージを持っていたり。それぞれの人々がそれぞれに「農業」に対する印象を持っているなか、佐賀県では、「佐賀県の農業の素晴らしさ」を伝えることが重要と考え、2018年度より「佐賀の『農』の担い手プロモーション事業」をスタート。成功者の実例をはじめ、佐賀県の農業の実態をわかりやすく伝え、「農業」のメリット(価値)やベネフィット(経済的な利益)、「かっこよくて」「感動があって」「稼げる」(新たな時代の3K)を発信するウェブサイト「佐賀百家図鑑」を開設しました。(2018年7月23日)

農産課の明石さん。農業に対する熱い想いはとどまることがありませんでした
「今後は、農林水産部だけでなく、地域交流部(移住支援室)などの他部署との連携を図りながら、佐賀県の農業の魅力を発信し、担い手の確保・育成に取り組んでいきたい」と、明石さんは語ります。自治体主導ではなく、あくまでも地域が主体性を持たせる佐賀県の取り組みは、担い手不足を根本的に解決する大きな一歩となることでしょう。
【佐賀県】
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