バーボンはなぜ「バーボン」というの?
「世界の5大ウイスキー」と呼ばれるのが、スコッチウイスキー、アイリッシュウイスキー、アメリカンウイスキー、カナディアンウイスキー、ジャパニーズウイスキー。その質や味が世界で評価され、それぞれ多くの人々に愛されています。今回紹介するバーボンは、アメリカのケンタッキー州バーボン郡で生まれた、アメリカンウイスキーの一種です。
バーボンの発祥には、ケンタッキー州の開拓を推し進めた、第3代アメリカ合衆国大統領トーマス・ジェファーソンが関係しているといわれています。トーマスは独立戦争でアメリカ側に協力したフランスへの感謝を示すため、ケンタッキー州の一地域をフランスのブルボン王朝にちなんで「バーボン郡」と名付けました。ウイスキー作りに必要なトウモロコシ、水、樽材がそろったケンタッキーの地は、瞬く間にアメリカ内でも有数のウイスキー生産地となりましたが、その中でもバーボン郡で生産されるウイスキーを、「バーボン」と呼ぶようになったのです。
このように、もともとは単に生産地を意味していた「バーボン」。しかし、現在は必ずしも「バーボン郡で作られたウイスキー=バーボン」というわけではないのだそうです。それでは、一体どのような基準で「バーボン」が定義されているのでしょうか?
「トウモロコシを51%以上使用」と法律で定められている!?
現在のアメリカでは、法律で定められた原料と製法に基づいて作られたものだけを、「バーボン」と呼ぶことができます。
まず原料は、「穀物中にトウモロコシを51%以上含んだもの」。製法は「アルコール度数80度以下で蒸留し、ホワイトオーク材で作られ内側を焦がした新樽を使い、アルコール度数62.5度以下で熟成させたもの」という決まりがあります。
他にも、「アメリカで製造されているもの」「製品として瓶詰めする場合は、アルコール度数40度以上であること」など細かな規定があり、これらの条件を満たしたウイスキーが、晴れて「バーボン」に分類されます。
アメリカンウイスキーの中には、なんと原料の80%以上をトウモロコシが占める、「コーン・ウイスキー」というものもあります。バーボンと原料は同じですが製法は異なり、蒸留したものは熟成せずに、そのまま出荷することが認められています。熟成させる場合は古い樽か、内側を焦がしていない新品の樽に入れなければなりません。熟成していないものは、ほぼ無色透明で、アルコールの味が強く刺激的。「ウイスキーはロックで楽しみたい」という人には、バーボンの方が向いているでしょう。
ちなみに、「大麦を51%以上含んだもの」は「モルト・ウイスキー」、「ライ麦を51%以上含んだもの」は「ライ・ウイスキー」、「小麦を51%以上含んだもの」は「ホイート・ウイスキー」になります。これらは原料こそ異なりますが、製法はバーボンと同じく、「内側を焦がした樽で熟成したもの」。
このようにとても細かな決まりがあるアメリカンウイスキーですが、飲み比べしてみると楽しそうです。
まだまだある! トウモロコシを使った世界のお酒

中南米のお酒・チチャ
ウイスキー以外にも、世界には数々のトウモロコシを使ったお酒が存在します。その一つが中南米のお酒「チチャ」。ペルーなどのアンデス地域で愛されているチチャは、かつてインカ帝国では神聖な飲み物として重宝され、祭りなどの宴にも用いられていたそうです。
そして何よりも驚きなのが、その製法。伝統的なチチャ造りでは、トウモロコシのデンプンを分解・発酵させるために、人の唾液の酵素を使っていたのだとか。でも実は、唾液を使ったお酒造りは珍しいわけではなく、日本を含むアジア一帯でも、こうした製法の記録が残っているそうです。なお、ヨーロッパの影響を受けた中世以降のアンデスでは、唾液ではなく、発芽させたトウモロコシを使って発酵させる方法が一般的になりました。
また日本では、各地でトウモロコシを使用した焼酎が製造されています。ほんのり香ばしく、甘みのある味わいです。現在の日本では、「穀物」としてのトウモロコシはほとんど輸入に頼っていますが、「野菜」に分類されるスイートコーンの自給率は約99%(※)。今後は、スイートコーンを利用したお酒の開発も進んでくるかもしれません。
このようにさまざまな種類があるトウモロコシを使ったお酒。まだ飲んだことがない方は、ぜひ試してみてはいかがでしょうか?
※ 本庄市広報誌「広報 ほんじょう」2017年7月1日号「特集 スイートコーン」(PDF):本庄市
参考
ウイスキー:日本洋酒輸入協会
洋酒の用語集[ウイスキー]:日本洋酒酒造組合
上記の情報は2018年6月26日現在のものです。