あいちサトラボとは?
青少年公園から愛・地球博へ、そして記念公園へ
緑豊かな愛知県長久手市東部に愛知青少年公園ができたのは1970年のこと。それから30年以上にわたって県民に親しまれてきた同公園は、2005年開催の「愛・地球博」の会場に選ばれ、日本中の注目を集めました。
そして博覧会終了後、再び整備され、2006年「愛・地球博記念公園(モリコロパーク)」に姿を変えて新たにオープンしました。
未整備の「県民公園づくり空間」
この時、同公園の中心部とも言える大芝生広場の東側(全体の北東部)の一角、約8.1ヘクタールのエリアは、未整備のまま残されていました。
このエリアは「県民公園づくり空間」という位置付けで、博覧会の理念“自然の叡智(えいち)”を継承し、青少年公園から現在までの歴史を生かし、新しいニーズにも対応して、多様な自然環境を育む、といった四つの基本方針のもとに県民が自分の意志で参加。積極的に意見を出して、活用方法・管理運営プランを練り上げました。
「あいちサトラボ」の誕生
2007年秋から約2年半にわたる協議の中で、「里山づくりに取り組む中で多くの学びを得られる実験場」というコンセプト、そして一般の人たちが農業体験できる開放空間にするという目標がまとめられました。
エリアの名称は「あいちサトラボ」に決定。プランづくりに励んできたメンバーを中心に新たな参加者も募集し、61人で「あいちサトラボ里山開拓団」を結成。2010年4月から里山づくりの活動がスタートしました。
里山開拓ストーリー
合言葉は「火星で収穫」
スタート時、まったくの更地だった同エリアは、メンバーがみずから「砂漠」「火星」などと呼ぶ状態でした。畑を作ろうと土を掘れば、石ころに混じって博覧会の建物の残骸(コンクリートの破片など)が出てきたり、森を手入れしようとすれば青少年公園時代の遺物(昭和の空き缶など)が発掘される始末です。
当初は田畑を作って米や野菜を育てるどころか草もほとんど生えず、メンバーは「火星で収穫」を合言葉にして作業に励んだといいます。
農のエリアの充実
それでも活動を続けるうち、田んぼ・畑・自然の湧き水を貯める池などが出来上がり、秋にはジャガイモ、サツマイモ、ソバなどが収穫できるようになりました。かまどを備えた炊事場も作られ、秋には最初の収穫祭が行われました。
翌年は米作りという大テーマに挑み、見事、田植えから収穫まで完遂。畑や果樹園も整備され、里山はしだいに形をなしてきました。
メンバーはほとんど素人
開拓団のメンバーはほとんどが農業未経験者で、当初入っていたコンサルタントの指導のもと、ここでの活動に取り組むうちにさまざまなノウハウを身に着けたといいます。
年齢層は多様ですが、核になっているのは時間に余裕のある定年退職者。県内各地から、中には車で1時間以上かけて通っている人や、ほぼ毎日作物の世話をしに来る人もいます。
農業体験を楽しむ里山
イベントの運営や管理プランなど、開拓地に一般の人々を招き入れる準備を整えるのにさらに1年を要し、その間に和座敷や土間、いろり、調理設備も備えたラボハウス(開拓団の拠点であり、一般来園者の無料休憩所でもある)も完成。2013年6月、いよいよ「あいちサトラボ」が公式オープンしました。
本格的な米づくり・野菜づくり・果樹づくりが体験できる場に毎年、多くの人たち(2017年度は1121人)が参加し、新しい形の農業+学習+レジャー施設として愛されています。
もののけの里の建設
日本的な景観と調和を図って
普段開放されている「農のエリア」は1.7ヘクタールで、このサトラボ全体の4分の1足らず。その他の土地の大部分を占める森はまだほとんど手つかずです。
「もののけの里エリア」はその未開拓部分の一画に作られることになっており、報道ではサトラボの日本的な景観と調和を図った「もののけ姫」の「タタラ場」をモチーフとしたデザイン画が発表されていました。広場には「タタリ神」や「乙事主(おっことぬし)」を想起させるオブジェが作られる予定です。
動向に応じて意見も
公式オープン後も継続的に活動を続けてきた開拓団のメンバーも、このジブリパーク整備の動向を興味深く見守っています。同事業をマネジメントするのは県の建設部公園緑地課ですが、「何か意見を求められることがあるかも」と、メンバーのひとりはつぶやきます。
人の流れが変わる
彼らが推測しているのは、モリコロパーク内の人の流れが変わるだろうということ。サトラボのあるエリアは奥まっているため目につきにくく、農業体験を目的に来る人以外にはよく知られていません。「もののけの里エリア」ができれば、それを利用する人たちの目にもとまるだろうと考えています。
お互いに良い相乗効果が起これば、と整備に期待を寄せるメンバーも。開業目標は2022年度中です。
里山を育て上げた実績をもとに
開拓活動を開始して以来、農の魅力にとりつかれ、石ころだらけの更地からまさしくアニメに描かれるような美しい里山を育て上げた、あいちサトラボ里山開拓団。今後の課題は里山をどう保っていくか、そして世代交代をどう行っていくか、ということだそうです。
ジブリパーク整備と並行して、その活動は新しい段階に入ろうとしています。