ITを駆使するスマート農場、それが「SAC iWATA」
静岡県の西部に位置し、サッカーJリーグ・ジュビロ磐田のホームタウンとして知られる磐田市。東名高速「遠州豊田」P.A.の目の前に、軒高のある真新しいハウスが立ち並んでいます。ハウスを運営するのは、日本のスマートアグリの先駆者とも言える富士通株式会社、およびオリックス株式会社、株式会社増田採種場により2016年に設立された株式会社スマートアグリカルチャー磐田。通称「SAC iWATA(サークイワタ)」のハウスではITを駆使し、ケールやホウレンソウなど葉もの野菜、パプリカ、トマトといった付加価値の高い作物が栽培されています。今回はトマトハウスを担当する生産技術部マネージャーの志久菜美子(しく なみこ)さんに、栽培時のご苦労などを伺いました。
■IT導入によって栽培管理の大部分を自動化
SAC iWATAの設立には、実際にハウスを建て自分たちで作物を育てるなかで「ITと農業を組み合わせたとき何が必要なのか」を洗い出しつつノウハウとして蓄積し、周辺のサービスも含めてパッケージ化していきたいという狙いがあります。実証実験の場という意味はありますが、そこにとどまるのではなく、採算性を重視しながら、一つの成功事例としてつくりあげていきたいと考えています。
ここでは一定の温度になると天窓を自動的に開閉したり、冬場にはボイラーでお湯を沸かしてハウス内に張り巡らされた温湯管に流し、温室内を常に最適の温度に保つなど、細かな制御によって栽培環境をコントロールできます。液肥の量なども含め、管理している項目数は100程度になります。これらを人手でこなそうとすると24時間張り付いていなければいけませんが、人がいない時間帯もITによって理想的な栽培環境を維持することが可能になっています。
スマート農業でも病害虫はつきもの。安全な薬剤を効率よく使う
いま栽培しているのは「富丸ムーチョ」というピンク系の大玉トマトです。こだわっているのはやはり品質面。大きさや食味、成熟度合いなどスーパーに並んだとき消費者の皆さんが同じ品質のトマトを手にできるよう、気を配っています。そんなトマト栽培で困るのが病害虫問題。なかでもやっかいなのは黄化葉巻病を媒介するコナジラミという小さな虫。黄化葉巻病は収量に直接影響が及ぶため、トマト農家にとって天敵ともいえる病気です。
対策として薬剤を使います。スマート農業だからといって環境制御だけで害虫防除はできませんから。有機野菜にこだわる方からは「農薬を使うのは…」という声も聞かれます。でも用法をきちんと守れば安全性にはまったく問題ありませんし、健全な農作物を安定的に供給することを目的とするアグリテックにはなくてはならない必須アイテムのようなものなのです。
■即効性があり使い勝手のよい『トランスフォーム™フロアブル』
コナジラミに用いる薬剤の種類は成虫に効くもの、幼虫に効くもの、両方に効くものなどさまざまですが、それぞれ状況に応じた安全性の高い薬剤を選択し、ローテーションを組んでいます。また、コナジラミには殺虫剤に抵抗性を持つタイプもいるため、定期的に新しいものを取り入れていくことも必要です。例として、今期取り入れたダウ・アグロサイエンス社の『トランスフォーム™フロアブル』という薬剤は、有効成分自体が新しく比較的高い効果も得られました。同じ系統の薬剤が重ならないようローテーションを組むことも防除には大事ですので、そのような新しい薬剤には期待も膨らみますね。
これからの就農は「ライフスタイル」で選ぶ時代
1年を通して栽培したのは2017年からですが、単純収量で10アールあたり40トン超を達成できています。ベテラン農家なら達成できるレベルですが、初年度からそれができたのはITによる営農支援と、防除を含む適切な栽培管理ができたおかげであると考えています。いま国を上げて農業人口の増加を目指していますが、休みなく面倒を見続けなければならないとなると新規就農に二の足を踏む若者が多いかもしれません。でもここSAC iWATAはライフワークバランスもしっかり図れます。こうした待遇や福利厚生は大手資本の株式会社組織だからこそ。”ライフスタイルで選ぶ農業”という選択肢が、ここにはあります。
株式会社スマートアグリカルチャー磐田では現在、農業に興味ある人材を募集しています。
お問合せは0538-86-3621(担当・伊藤)まで。メールの場合はinfo@saciwata.co.jpへ。
いずれも「マイナビ農業」を見たとお伝えください。