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野菜が主役のスイーツ 人気の理由は作り手の食にかける思いにあり!

野菜が主役のスイーツ 人気の理由は作り手の食にかける思いにあり!

トマトや小松菜、アスパラガスなど、普段ケーキには使われないような野菜を主役にしたスイーツがあることを知っていますか。野菜という素材の美味しさを引き出した「野菜スイーツ」は、健康志向が高まっていることもあって、女性を中心に人気を集めています。また、野菜の新たな活用方法としても注目されており、野菜の普及にも一役買っていると言えそうです。今回は野菜を使ったケーキ作りに取り組む店のオーナーに、使用する野菜へのこだわりや、野菜を提供してくれる生産者への思いを聞きました。

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「野菜スイーツ」にまつわる認定試験が開催されるほど高まる人気

パティスリー ポタジエ

写真提供:パティスリー ポタジエ

野菜を使ったスイーツは、「ヘルシーだから罪悪感なく食べることができる」、「野菜の新たな魅力が発見できる」などの理由で、女性を中心に人気が高まっています。現在、「野菜パティシエ認定試験」(※1)と「ベジスイーツマイスター認定試験」(※2)という、2つの認定試験も行われていて、「野菜スイーツ」に関心を持つ人が増えていると考えられます。
具体的に「野菜パティシエ認定試験」では、野菜の種類や産地、含まれる栄養素、そして正しい保存方法という野菜についての基礎的な知識が備わっているかどうかチェックされます。そして、野菜の特長を活かしたスイーツ作りの技術などが身についている人が「野菜パティシエ」として認定されるのだそうです。
それでは、実際に野菜を使ったスイーツを販売する店では、どのような人がどんな思いでスイーツ作りを行っているのでしょうか。今回は2つの店のオーナーに話を聞きました。

※1 野菜パティシエ認定試験(日本インストラクター技術協会)
※2 ベジスイーツマイスター認定試験(日本安全食料料理協会)

野菜スイーツの先駆け 「パティスリー ポタジエ」

パティスリー ポタジエ

写真提供:パティスリー ポタジエ

東京・中目黒の「パティスリー ポタジエ」は、2006年に初めて野菜スイーツの専門店としてオープンした先駆的な存在です。2年前からは、野菜を使うだけでなく低糖質であることにこだわり、「ローカーボ&ベジスイーツ専門店」と打ち出し、消費者に対して良質な食の場を提供し続けています。オーナーパティシエールの柿沢安耶(かきさわ・あや)さんに話を聞きました。

野菜スイーツへの関心の高さを知って専門店をオープン

オーナーパティシエールの柿沢安耶さん

オーナーパティシエールの柿沢安耶さん(写真提供:パティスリー ポタジエ)

柿沢さんは幼いころから野菜が大好きで、料理について勉強していたころに、身体の健康について深く考えるきっかけとなった出来事があったそうです。「フレンチの勉強をしているときに体調を崩すことがあり、身体を健康にするために何を食べるべきか考えるようになりました。そして、マクロビオティック(※3)の勉強を始めたのです」。
そして、栃木県にマクロビオティックのカフェレストランをオープンさせた柿沢さんは、その店で野菜スイーツを提供し始めました。「お客様は野菜スイーツに驚き、使われている野菜や生産者さんのことにまで興味を持ってくださったんです。そのことを知って、野菜スイーツの専門店を開こうと決意しました」。そして、柿沢さんは2006年に「パティスリー ポタジエ」をオープン、現在も新たな野菜スイーツを提案し続けています。

※3 玄米、野菜、海藻などを中心に摂取する食事法

豊富な種類の野菜スイーツを提供し続ける

柿沢さんは、現在店舗で人気の定番商品から新作まで、10種類以上の野菜スイーツを提供しています。

グリーンショート・トマト

グリーンショート・トマト(写真提供:パティスリー ポタジエ)

そのうちの1つ、「グリーンショート・トマト」はオープン以来一番の人気商品。緑がかったスポンジ部分には小松菜が練り込まれていて、間に挟まれているのは真っ赤なトマトです。上にちょこんと乗ったトマトが可愛らしく、見た目でも楽しめる野菜スイーツです。

ルッコラゼリー&黒ゴマ豆乳ムース(写真提供:パティスリー ポタジエ)

また、ルッコラと黒ゴマを使用した「ルッコラゼリー&黒ゴマ豆乳ムース」は、豊かな香りが魅力のスイーツです。糖質が約4.9gと低カロリーで、気兼ねなく食べられることも人気の秘密。

ルッコラゼリー&黒ゴマ豆乳ムース

ルッコラゼリー&黒ゴマ豆乳ムース(写真提供:パティスリー ポタジエ)

さらに、にょきっと生えたアスパラがポイントの「グリーンアスパラのムース」は、思わずほっこりしてしまうフォルムも魅力。周りを覆うほうじ茶スポンジが香り高くムースを包み込んでいます。

小松菜とモリンガのチーズケーキ

小松菜とモリンガのチーズケーキ(写真提供:パティスリー ポタジエ)

そして昨年発売された「小松菜とモリンガのチーズケーキ」は、人気が高まりつつあるスーパーフード「モリンガ」を使用。小松菜入りのチーズケーキの上に、抹茶の味わいに似た「モリンガ」を使用した生クリームを絞っています。(※4)

お客さんが求める新たな野菜スイーツを追求し続ける姿勢が、注目を集め続けていると言えそうです。

※4 参照:低糖質(ローカーボ)×スーパーフード「モリンガ」~糖質カット+α効果の野菜ケーキ開発を支援~(PR TIMES)

農家さんとの信頼関係を大切にして取り組むケーキ作り

柿沢さん

畑でニンジンと映る柿沢さん(写真提供:パティスリー ポタジエ)

その野菜スイーツ作りにおいて、使用する野菜選びへの工夫を聞いてみると、「むやみに取引先を増やさず、農家さんと信頼関係を築けるようなやり取りを心がけています」と柿沢さん。生産者の畑は、柿沢さんか会社の代表取締役が必ず訪れるようにしています。柿沢さんは、「最初に栃木でレストランを始めたとき、畑にほとんど足を踏み入れたことがなかった私に、畑にできる野菜の温かみや、流通に乗らない野菜の存在を教えてくれたのが農家さんでした。畑に行くことで、初めて知ること、気付くことがあるのだと、今も信じています」と話していました。
そして、「消費者の皆さんにもぜひ畑に行っていただき、実際に野菜が育つ様子や、農家さんの仕事を見てもらいたい。そうすると、野菜に対する想いが変わってくると思います」と柿沢さんはいいます。その先に見据えるのは、食の質、さらには生活の質の向上。野菜スイーツを通して柿沢さんが叶えたいものは、食という生活に欠かせないものを通して、消費者への気づきを提供することだと言えるかもしれません。

パティスリー ポタジエ

野菜の美しさや味わいをケーキに生かす「菜園カフェドーノ」

菜園カフェドーノ

写真提供:菜園カフェドーノ

東京都三鷹市にある「菜園カフェドーノ」は、東京都中心に「こだわりお肉と菜園料理のレストラン カムラッド」など8店舗の飲食店を展開する会社が、2013年にオープンしました。野菜ソムリエ協会に認定されていて、シェフが考案した野菜スイーツが、季節ごとに新たなメニューを追加して提供しています。それまでに別の店で好評だった野菜スイーツを守りつつ、独自に新たなメニューを追加するなどして、工夫を続けています。菜園カフェドーノを運営する株式会社ラディアーレの代表取締役、林卓(はやし・たく)さんに話を聞きました。

野菜スイーツが好評を集めレストランの看板商品に

林卓

菜園カフェドーノを経営する林卓さん(写真提供:菜園カフェドーノ)

林さんは、以前より別の店舗で提供していたケーキのうち、何点かは野菜を使ったケーキを販売していました。その野菜ケーキが好評を集め、8年ほど前にその店をリニューアルする際、デザートをすべてオリジナルの野菜ケーキにしたのだそうです。「ケーキに野菜を使用する理由は、ヘルシーということだけではありません。素材として、その野菜でしか出せない美しい色や深みのある味わい、食感を取り入れ、ケーキの魅力につなげていきたいと考えています」と林さんはいいます。

2013年に「菜園カフェドーノ」をオープンする際も、デザートには迷うことなく野菜ケーキを選んだという林さん。そんな魅力の詰まったケーキは今や看板メニューとなり、野菜ケーキを目当てに訪れるお客さんも少なくないのだそうです。「菜園カフェドーノ」では、東京の20軒以上の契約農家から毎日送られてくる新鮮な野菜を使った食の提供が行われていて、多くの支持を集めています。

多彩な魅力で消費者の興味を惹くケーキ

「菜園カフェドーノ」では、季節限定商品の内容を変えながら、約10品の野菜スイーツが提供されています。

こまトマトケーキ

こまトマトケーキ(写真提供:菜園カフェドーノ)

「こまトマトケーキ」はトマトを練り込んだスポンジで、小松菜を混ぜたクリームを挟んだケーキ。キッズ野菜ソムリエとの共同開発でできたそうです。オレンジと緑の鮮やかなコントラストが、野菜の色の美しさを表していて、目でも楽しめるケーキと言えます。

マンゴークリームとビーツのロールケーキ

マンゴークリームとビーツのロールケーキ(写真提供:菜園カフェドーノ)

夏限定(9月中旬から下旬までを予定)の商品の1つ「マンゴークリームとビーツのロールケーキ」は、ビーツの彩りが魅力。ビーツの鮮やかな色を生地に出すために、湘南の農家さんに、濃度が高く熟したビーツを育ててもらっているのだそうです。そのビーツをコンポートにすることで、さらにきれいな色を出して、ケーキに使用するというこだわりが詰まっています。

焼きとうもろこしのチーズケーキ

焼きとうもろこしのチーズケーキ(写真提供:菜園カフェドーノ)

毎日変わる野菜だからこそ、試行錯誤でケーキの魅力が惹き出せる

林卓

農家さんと写る林さん(左)(写真提供:菜園カフェドーノ)

このようにユニークなアイデアが詰まったケーキはどのように生まれるのでしょうか。「旬の食材やそのケーキに合った野菜、面白い組み合わせの食材などを使って、試作を繰り返しながら、どんなケーキを商品にするか決定しています。同じ野菜でも、品種や時期によって、色や食感、味が変わってくるので、試行錯誤を繰り返していますね」と林さんは話します。機械では作ることができない野菜だからこその苦労もありながら、それをケーキの魅力に変換するという作業が行われているようです。
そのためには、農家さんたちとの細かいコミュニケーションが必須だといいます。現在、ケーキ用に使う野菜や料理使用する野菜など、それぞれの要望に合った野菜を栽培してもらっています。「どんなに暑い日でも寒い日でも、お願いした野菜を朝早くから最高の状態で出荷してくださっていて、本当にありがたいです。毎日続けるという事に敬服しています」。そう、農家さんたちへの思いを語ってくれた林さん。野菜スイーツを通して、消費者と生産者をつなぐ林さんの取り組みは、これからも続きます。

菜園カフェドーノ

 

ここまで、野菜が主役のスイーツを提供している2つのお店を紹介しました。どちらのお店も、野菜を使って質の高い「食」を提供したいという思いを抱き、農家の人たちに対して感謝をしながら日々新しいスイーツの開発に努めていることが伝わってきました。野菜とスイーツの組み合わせを一度体験してみてはいかがでしょうか。

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