米もアイガモも豚もスイーツも 農業400年を次世代へつなぐ澤井農場 – マイナビ農業

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生産者の試み

米もアイガモも豚もスイーツも 農業400年を次世代へつなぐ澤井農場

米もアイガモも豚もスイーツも 農業400年を次世代へつなぐ澤井農場

最終更新日:2018年09月14日

東京都八王子市高月町で400年以上、代々農業を営む澤井農場。
現在は12代目当主で、ブランド豚「TOKYO X」の生産組合長を務める澤井保人(さわい・やすと)さんを中心に、親子3世代が生産・販売に参加。家族経営でアイガモによる米づくり、養豚、小麦や野菜などの栽培、さらに豚肉や加工品の生産・直売も行っています。
「環境保全型農業」の先駆者として注目を受け、複数の事業を組み合わせて経営を支えてきた保人さんは、東京など都市部の農家が今後どんなビジョンを持って、どんなスタイルを打ち出して農業経営に取り組んでいけばいいかを、まだ年若い子供たちと話し合い、次世代への受け渡しも視野に入れた活動を続けています。

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都内最大級の農地を使って

農業

宅地開発されなかった丘陵農地

八王子市の北部・高月町には約30ヘクタールにおよぶ農地(その大半は水田)が広がっており、その一部となっているのが澤井農場です。
この辺りは多摩川と秋川が合流した流れが丘陵を削り、戦国時代にはその地形を利用して作られた高月城、滝山城といった天然の要害がありました。
この地域は宅地開発がしにくい地形だったため、農地として残りました。
都内にこれだけの広さの水田がまとまって残存している所は、他にほとんどありません。
澤井農場では、この土地から家族7人で力を合わせて作る農産物・自家製の加工品を八王子市および東京都市圏に供給しています。

澤井農場400年の歴史

代々、水田での稲作と畑での耕作をしてきた澤井家の過去帳をたどっていくと、戦国時代末期から記録があるとのことで、江戸時代には多摩川を使って材木のいかだ流しをする仕事をしていた時期もあるそうです。
明治時代から昭和38(1963)年ごろまでは養蚕も行っていましたが、高度経済成長期に豚肉の需要が増えたこともあり、養蚕に代わって庭先養豚を始めました。その時期はどこの農家でも、野菜づくりに必要な堆肥を作るために2~3頭の豚が飼われていたそうです。
澤井農場ではやがて小規模ながら本格的な養豚事業にシフトし、現在では約200頭の豚を飼育しています。

環境保全型農業の実践

アイガモたちを見守るおいの高沢浩幸(たかざわ・ひろゆき)さん
 

ドイツ研修をきっかけに環境保全型農業へ

昭和期の農業を体験して育った保人さんは、大学卒業後、1982年に後継ぎとして就業。その6年後、ドイツのミュンヘンで農業研修を受けました。
その経験が、従来の農薬や化学肥料を投入して生産性を上げる農法とは異なる、いわゆる「環境保全型農業」に転換するきっかけとなりました。

“東京でアイガモ農法”が話題に

この頃、高月町地域では農家が高齢化などを理由に水田を手放し、若い保人さんが働く澤井家に耕作を依頼するケースが続出。澤井農場では次第に周囲の水田も手掛けるようになっていきました。
そうした状況の中で、増えてしまった水田を維持していくために保人さんが実践したのが、1990年代に話題となっていた「アイガモ農法」です。
田植えの時期にアイガモのヒナを水田に放ち、害虫や雑草を食べてもらうことで農薬の使用を抑え、また排泄物が稲の養分になるため、化学肥料の使用も抑えられます。実際、澤井農場では農薬は有機JAS認定の微生物農薬のみ使用。化学肥料は一切使っていません。
「東京の水田でアイガモ農法を実践」はニュースになり、澤井農場の取り組みは数多くのメディアで取り上げられました。
これをきっかけにして以後しばらくの間、澤井農場では水田にアイガモを放す日に公開イベントを行っていました。

アイガモ水稲同時作

なお、成長したアイガモは、収穫を迎える秋には食肉として処分するため、この農法は、稲作と畜産を組み合わせた複合農業「アイガモ水稲同時作」とも呼ばれています。澤井農場ではお米を購入するお客さんにアイガモ肉も買ってもらったり、都内の料理店に納品したりしています。

新しい農場経営へのステップ

常時約200頭のTOKYO Xを飼育
 

家族の提案でアイガモ農法公開イベント復活

2015年からは、しばらく休止していたアイガモ農法公開イベントを、「SNSなどで公開したら?」という家族からの提案を受けて、復活させました。
毎年6月初旬に「合鴨(あいがも)を放す会」を開催し、お米を予約購入したお客さんや、可愛いアイガモを見たいという近隣の子供たちを招いて、50アールの水田に約100羽のヒナを放鳥。高月町の歴史と水田や畑の説明、参加者同士の交流会を含めた、楽しい地域イベントに育てています。
また、そこではアイガモ農法に興味を持つ他の地域の農業者、新規就農を考えている人たち、家族で協力して農業をやりたいという人たちの見学や相談にも応じています。

アイガモ米+TOKYO X+スイーツetc. 多彩な事業メニュー

澤井農場は現在、このアイガモ米の栽培・販売と、脂肪が甘く肉質が良いことが評判のブランド豚「TOKYO X」の飼育・出荷、および食肉販売を中心に、野菜や小麦の栽培・販売、そして近年始めたクッキーやシフォンケーキなどの「米粉スイーツ」をはじめとする加工品の生産・販売という複数の事業メニューを組み合わせて経営しています。

TOKYO Xの生産に取り組みたい人の相談も

長年、この地域で農業を続けてきた澤井農場に対する周囲からの信頼は非常に厚く、保人さんはTOKYO X生産組合の組合長も務めています。
肉のおいしさだけを追求して品種改良されたブランド豚です。早く大きくなる、子供をたくさん産むといった生産性の高さを度外視し、味を良くするためだけに品種改良をするのは世界でも珍しい例とされています。
開発当初から携わってきた保人さんは、このTOKYO Xの飼育に取り組みたいという人の相談も受けています。
飼育法や流通に関する取り決めさえ守れれば誰でも組合員になれ、都内や関東在住者のみといった制限もありません。

地域を守るための農業

「もしうちが農業をやめたらこの一帯は荒れ地になってしまうかもしれません」
保人さんはそう言います。澤井農場の農業は澤井家の暮らしを支える経済活動であるとともに、人々の暮らしの基盤としての高月町地域を守るためにも必要な活動になっています。
近年は、成長した子供たちが少しずつ経営に参加し、家族で力を合わせて事業を展開。農業の楽しさ・大変さ・かけがえのない価値を人々に広く訴えていこうとしています。
豊かな農地、数多くのノウハウ、人々の信頼。培ってきた有形無形の資産を生かし、今後どんな経営スタイルを作っていくのか、新たな時代への模索が始まっています。

 
澤井農場
TOKYO X 生産組合

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