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「半農半芸」を実践 畑仕事と芸術創造が交わる高須ハウス(前編)

「半農半芸」を実践 畑仕事と芸術創造が交わる高須ハウス(前編)

茨城県取手市と市民と東京藝術大学の三者共同で展開する「取手アートプロジェクト」。その主要事業である「半農半芸」の活動拠点が、市内高須地域にある「高須ハウス」です。ここでは、若手アーティストたちが農作業を行いながら、自身の創作活動を探求しています。
拠点の斜め向かいにある畑を地域住民から借り、周囲の農家からアドバイスを受けつつ農作業を行い、自分たちの食料となる野菜や果物を栽培しています。毎日の生活の中で、農家の人たちとの交流や農作物を育てる体験から得たもの、また農村地域が抱える問題などを、表現活動・研究活動の主要テーマにしたり、創作のエネルギーとして生かしたりしています。前後編にわたり、高須ハウスの半農半芸プロジェクトに迫ります。

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高須ハウスという舞台装置

高須ハウスの壁に描かれた絵。佐藤香(さとう・かおり)さん作
 

農のエッセンスを散りばめた空間づくり

取手アートプロジェクトは、茨城県取手市とその市民と、市にキャンパスを置く東京藝術大学との共同で1999年にスタートしました。芸術による文化都市を目指し、アーティストの活動支援や、市民の芸術体験の機会提供をするなど、アートを通じた地域づくりは各方面で評価されています。
取手アートプロジェクトが12年目を迎えた2010年に、さらに長期的な視野に立った取り組みとして、半農半芸プロジェクトが立ち上がりました。
田畑の広がる取手市高須地域の真ん中に、高須ハウスは半農半芸プロジェクトの活動拠点として2013年にオープンしました。元は農協の事務所だった2階建ての建物を、アーティストを中心にプロジェクト参加者、学生たちが自らの手でリノベート(改装)しました。古い農機具で階段や建具をつくるなど、農のエッセンスが空間に散りばめられています。
1階の広い空間は、作品や活動の展示発表、ワークショップなどに使われています。2階にはスタジオ、アトリエ、オフィス、キッチンスペースを備えており、アーティストの制作活動を支える施設となっています。

アーティストたちが畑仕事?

高須ハウスではアーティストたちが、入れ代わり立ち代わり創作活動を行っています。アーティストたちは別に住居を持っており、作品制作や研究のまとめなど集中して作業する必要がある時期にここへ来て、この地域の風や土や草や人に触れながら、期間限定で利用します。
ここから巣立ったアーティストの中には、福島県でりんごの栽培などをしながら農家カフェを開き、画家として自活している人もおり、自分の人生の指針を定めるうえでも貴重な体験を得られているそうです。

マルシェの会場としても活用

ときには、高須ハウスを会場に、地域で採れた野菜を使った食のプログラムを行ったり、地域でものづくりに関わるクラフト作家さんや半農半芸プロジェクトのアーティストたちが集うマルシェなどが開催されています。2017年12月に行われたマルシェでは23店舗の出店があり、1階をカフェスペースとして活用し、地域の人々も多数訪れました。

半農半芸の実践

農業

畑で育てて、自分たちで食べる

2018年7月上旬に訪れた時も、アーティストたちが農作業をしながら、制作に取り組んでいました。
育てていたのは、きゅうり、なす、ミニトマト、ブルーベリーなど。きゅうりやなすは市場で出回っているものよりも武骨で図太く、いずれも味や歯ごたえが野趣に富んでいます。

ちょっとしたご縁から農業を学ぶ「縁農(えんのう)」

高須ハウスでは「縁農」を大切にしています。
ちょっとしたご縁から農業について学び、学んだことをすぐに自分たちの畑仕事に反映させ実践します。
半農半芸プロジェクトでは岐阜や新潟へ農作業の合宿に行くこともあり、農業の専門家に来ていただき栽培の講習を受けることもあります。
地域の農作業をお手伝いする中で野菜の育て方を教わったり、おすそ分けをもらったり、野菜の種をもらったり、あるいは散歩やジョギング、ゴミ出しなどで出会って会話したり。そんな交流の一つひとつが学びをもたらすご縁となっています。

作品や企画展に対する自然なリアクション

こうした“農”を行いながら、アーティストたちは創作に取り組みます。
高須ハウスで活動するアーティストたちの作品や研究成果の発表は随時行われており、その都度、制作や研究の過程で協力してくれた地元の人たちの多くが高須ハウスに集い、自分が関わった作品や企画展に触れて、感じたこと・考えたことを素直に語ります。
そうしたごく自然なリアクションは、アーティストたちへの新鮮な刺激となって、さらなる創作意欲を湧き立たせるようです。

高須ハウスが生む可能性

農業

農業と芸術という、一見遠いように感じられる活動は、交わることで新たな可能性を生みます。高須ハウスの半農半芸プロジェクトは、そんな可能性を感じさせてくれます。続く後編は、高須ハウスで過ごす人々に注目していきます。

 
高須ハウス
取手アートプロジェクト

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