秘境に佇む古民家民宿「おもや」が世界中から愛される理由【前編】

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秘境に佇む古民家民宿「おもや」が世界中から愛される理由【前編】

秘境に佇む古民家民宿「おもや」が世界中から愛される理由【前編】

最終更新日:2018年09月14日

古民家民宿「おもや」は、 三重県と奈良県の県境、奈良県御杖村(みつえむら)にある農家民宿です。切り盛りするのは、徳田福男(とくだ・ふくお)さんと恵子(けいこ)さんご夫婦。徳田さんが「村をもっと多くの人に知ってもらいたい」と考えて始めました。最寄りの名張駅から歩くと約6時間、車でも30分はかかる辺境の地にあるのに、すぐに予約が埋まる人気の宿です。「おもや」はお客さんに特別なサービスを提供するわけではありません。実は、サービスを提供しないことがなによりのサービスなのです。

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「村の役に立ちたい」という想いから古民家民宿をスタート

おもやは、500年以上前からあり、「差鴨居(さしかもい)」という伝統ある構法で建てられた、歴史ある田舎の家を古民家民宿として活用しています。
主人の徳田福男さんは長男としてこの家で生まれました。中学まで地元で育ちましたが、地元には高校がないため、単身、奈良市に移り住み、下宿屋から学校に通いました。その後、大阪に出て大学時代を過ごした後、卒業すると書店に務めたそうです。奈良県内に戻ってきたのは32歳ごろ。実家から近隣の名張市にある老舗の書店に勤務します。しかし、50代半ばに有機農業がしたくなって早め目に退職。そして、村で有機栽培をしている人を師匠として農業をはじめました。

転機となったのは、60歳のころでした。
「農業は上手くいっていたのですが、僕が病気になってしまったんです。そこから『この村で役に立てることはないか』と考えるようになりました。『もっと多くの人に御杖村を知って欲しい』と思うようになり、『何かできないか?』と思案したとき、実家を民宿にできないかと思いつきました」

最初は農家民宿にすることを考えたそうです。徳田さん達が作った野菜などをお客さんが収穫し、それをお客さん自身が調理する。お客さんにはゆっくりしてもらって村を知ってもらう。そんなスタイルの民宿を構想しました。
そこへ「農家民宿だとありふれているから、古民家民宿の方がいいよ」とアドバイスをしてくれたのが、息子さんでした。
「実際、来た人に聞いたら『古民家で検索した』とのことでした。息子にそのことを話したら『ほら、当たっただろう』と言われました(笑)」

こうして、古民家民宿「おもや」が2015年4月からスタートしました。

囲炉裏。ここで徳田さん夫婦とお客が一緒になってくつろいだ時間を過ごす


 

アクセスは徒歩で約6時間!辺境の地で民宿?

おもやがある場所は三重県と奈良県の県境です。一番、近い駅は近鉄大阪線・名張駅。そこから徒歩だと約6時間はかかってしまいます。 車でも30分。もちろん、徳田さんは車を走らせて送迎します。
ここは、江戸時代、大阪から歩いて伊勢神宮に詣でる人達が通る、伊勢本街道(伊勢街道)の側にあり、宿場町として栄えていた場所です。今でも時折、大阪から伊勢神宮まで伊勢本街道を歩いて行かれる方もいますが、多いわけではありません。

「正直にいうと、こんな辺境の場所で古民家民宿としてやっていけるとは思っていませんでした。病気になって人生観が変わって始めたことなので、お金儲けは考えていなかったんです。極端な話、お客さんは来なくてもいい、という気持ちでした」

おもやは場所を提供するだけ、を基本としています。そのため、1日1組限定とし、素泊まり3500円(1泊/1人)、朝食付きだと4000円(1泊/1人)ととてもリーズナブル。最寄り駅までの送迎は無料だし、ひとりで泊まっても歓迎してくれます。また、別途料金でピザ体験プランと夜のBBQがありますが、食事はムリに注文しなくてもいい、というのがポリシーです。

「ガソリン代がどれくらいで、お布団をお貸しして次の日、敷布を洗濯したらどれくらいの経費がかかるとか、そんなことはまったく考えていません。そんなことを考えていたらできなかったと思うし、途中でやめていたと思います」

利益は考えず、友達が遊びに来るような民宿を目指しました。そもそも実家だし、所有する田んぼと畑から米と野菜が取れる。自分達が食べることができればいい、そんなことしか考えていなかったのだそうです。
「民宿を始めるために用意したものもなにもありません。ピザを焼く窯は自分が食べたくて作ったものだし、囲炉裏は友達と鍋を囲んで飲んだりしゃべったりするために作ったので」

実は、奥さんの恵子さんは兵庫県の宝塚の出身で、もともとはマンション住まい。そのため、ここで住むこと自体、最初は大変だったといいます。
「土を触ることなんてなかったですからね。『虫は怖いから、畑仕事なんか絶対にしないよ。民宿をするのはいいけれど、大勢の人の食事の支度はできないよ』と言っていました」
それが今では自然に馴染み、畑仕事に精を出す日々です。
古民家民宿を続けていられるのは「夫婦そろっておしゃべりが好きで、人と話をするのが楽しいから」と笑います。

台所の上に飾られたツツミ。屋根裏から出てきたという歴史を感じる品


 

癒しとは特別のサービスではなく普通の生活

恵子さんも「利益を出したい、と考えたら失敗すると思うんです。お客さんも来ないんじゃないでしょうか。うちに来るお客さんは、普段は仕事で一生懸命に働いて、それからおもやでのんびりしたい、という人たちばかり。『おもやに行くというより『田舎に帰る』という感覚のようですよ」といいます。
お客さんはリピーターが多く、「ただいま」といって入ってくる人ばかりだと徳田さんも笑います。なかには帰るときに次に来る日を予約する人もいるのだとか。
「お客さんが来る、というより、ご縁のある方が来てくれる、という感じです。引き寄せられるように来ていただいて、その方がまた来てくれる」と恵子さん。
でも、最近は埋まっている日も多く、リピーターからは「どんどん予約が取りにくくなっている」とぼやかれるそうです。

「お客さんをおもてなしする、ということをよく言われるけれど、私たちはおもてなしをしたことがありません。普通にしているだけ。家族みたいな感じです」とお二人。
おもやの魅力は、なにもサービスがないこと。自分の家に帰ってくるような、そんなところにあるようです。
もちろん、朝は清らかな空気が満喫できるし、夜は満天の星を眺めることができます。そして春は樹齢100年以上の桜の名所(丸山公園・三重県津市美杉町の三多気<みたけ>)を楽しみ、夏はホタルの観賞に興じ、秋は神社の秋祭りや紅葉をめで、冬は三峰(みうね)山の樹氷を見にいくことができます。四季折々に美味しいものを味わうこともできます。つまり、自然に触れることができることが一番のおもてなしのようです。

後編では古民家民宿「おもや」が世界中から愛される理由を紹介します。

徳田福男さん(右)と恵子さん(左)

古民家民宿おもや

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