世界から注目される古民家民宿
前編では古民家民宿「おもや」が多くの人から愛される理由を紹介しました。
実は、日本人客だけでなく、2015年4月にオ―プンして以来、2015年には7か国から。2016年にも7か国から。2017年には8か国から10組が。2018年はすでにイタリア、リトアニア、アメリカ(ニューヨーク)、香港、中国、オランダ、アメリカ(ロサンゼルス)からと、世界中から旅行客が訪れています。
「なぜ、外国の方が泊まりに来ているのかというと、『これからはインバウンドだ!』ということでもなく、息子から『アメリカを旅行したとき、airbnbで宿泊先を見つけた。うちも一応、登録しておけば』と言われたからなんです」
airbnb(エアビーアンドビー、通称エアビー)とは、アメリカのITベンチャー企業が運営する、「空いてる部屋や家を貸したい人」と「借りたい人」とのマッチングサイトで、人気のシェアリングエコノミーサービスのひとつです。191か国にある安価な宿泊施設が見つかるとバックパッカーに重宝されています。(※1)
「今はインターネットの時代なので、登録しておけば、皆さん、調べて来てくださいます」
お客さんは「日本の古い民家の生活を知りたい、体験してみたい」という人たちばかり。観光地ではなく、逆に辺境の地だから良いのだそうです。
「先日いらしたお客様は『広告を出しているとか、PRしているところはむしろ避けてきた』とおっしゃっていました。ここは1日1組。だから、みんなゆっくりできる。それが良いようです」
日本人だと1泊か2泊ですが、外国から来る観光客は2週間から1か月ほど滞在します。ベルギーから来た6人の若者は、関西空港から車で直接おもやを訪れ、1週間過ごしたといいます。
「僕たちは英語を話せません。でも、スマートフォンを見せられて『ここに行きたい』と言われるとわかるので、連れていったりしています」
泊まりに来たお客さんに特別なサービスはしない。だから言葉がしゃべれなくてもやっていけるのだそうです。
参考:Airbnb公式ホームページ
外国のお客さんはなにも求めない
おもやに訪れる外国のお客さんのことを「サービスの行き届いたところを求めるのなら旅館やホテルを選ぶ。でも、自分たちで自由になんでもやる方が良い、という考えの方はおもやを選ぶようです」と恵子さんが説明してくれました。サービスを求めない人向けの旅館というのは盲点かもしれません。
「外国の方はベジタリアンが多くて、『台所を貸してくれ』といわれて貸したら、自分達が持ってきた食材で料理をしたりしています」と恵子さん。
エストニアから来た人は、日本料理が大好きで、自分が好きな食材をいっぱい持ってきたそう。恵子さんが料理の仕方を教えたらとても喜ばれ、その上自分も楽しかったと笑います。外国の人たちは食べることもそうですが、作り方に興味を持っている、と言います。旅館やホテルに泊まれば美味しい日本料理を食べられますが、作り方はわかりません。おもやではすごい日本料理を作れるわけではないけれど、おにぎりひとつでも大喜びしてくれるのだそうです。
「台湾から来た家族と一緒におにぎりを作ったんですが、三角のおにぎりをどうやって作るかということから教えて、中にどんな具を入れる、ということを教えたら熱心に作ってくれました」
持ってくる食材も高級なものではありません。お蕎麦とか、切り餅とか。切り餅は囲炉裏で焼いてあげるとのこと。逆にそんな素朴なものに心惹かれるようです。
日本人は特別なことをしてあげよう、というサービス精神が旺盛です。でも、外国から日本に来るお客さんは、特別なことは求めていないようです。日本の伝統文化に興味があり、日本人の普通の暮らしに関心があり、それを知りたいと思っています。
まずは自分たちが楽しむこと
お二人とも「言葉なんかしゃべれなくとも、Googleの自動翻訳機能でなんとかなる」と笑います。
「長い文章はあてにならないので、短い文章を翻訳したり。単語を少し並べるだけでも理解してくれますよ」と恵子さん。
お互い、わからないながらも一生懸命に会話をしようとするのが楽しいといいます。
「お客さんにサービスをしている、というより、むしろ、僕たちの方が楽しんでますね(笑)。そこに古民家民宿をやっている満足感があります」
来てくれたお客さんから学べる。会うこともない人と会えることが楽しみだそうです。
「今後の目標とか、そんなのもありません。毎日、楽しく過ごすことが目標みたいなもの。もちろん、嫌なことがある日もあります。でも、次の日はそんなのは忘れて楽しむだけですね」と徳田さん。
恵子さんも、「食の安全、ってよくいわれていますが、今の若い人たちは安心安全な本当の野菜の美味しさをご存じない方が多いように思います。私もそうでした。でも、私が御杖村にきて、御杖村のお水を飲んで、御杖村のお米を食べて、御杖村の野菜を食べていると、どんどん元気になっていきす。だから、ここに来たお客さんにも元気になって帰ってもらいたい、それだけが目標です」と笑います。
でも、他県や外国の人たちが御杖村を知ってくれるようになったけれど、御杖村の人たちが御杖村を知らない、と嘆きます。
「灯台下暗しというか、御杖村にある名所に御杖村の人たちは行きません。村の人たちはなかなか足を運んでくれない。これからは、村の中で海外の方も巻き込んだ交流にも取り組んでいきたいと思っています」
さらに、徳田さんは「この御杖村に住みたい」という人たちにアドバイスをする活動もおこなっているそうです。もしかすれば、海外の方がおもやに宿泊したことで日本の良さを知り、海外から御杖村に移り住むこともあるかも。そんなふうに感じるほど、おもやは落ち着ける、素敵なお宿でした。
秘境に佇む古民家民宿「おもや」が世界中から愛される理由【前編】はコチラ!