茨城県の新ブランド豚「常陸の輝き」とは?
「常陸の輝き」は、養豚生産者,流通業者,行政や関係団体が中心となって開発を進めてきた、茨城県の新しいブランド豚です。ブランドネームとロゴは、オンラインでの一般公募を基に、関係者が協議を重ねて決めました。茨城県の養豚を盛り上げ、全国のトップブランドになってほしいという関係者皆の思いが込められています。
茨城県の養豚を元気に! 新ブランド豚開発の背景
茨城県にはすでに「ローズポーク」という銘柄豚がありますが、新ブランド豚の開発に踏みきった背景には何があったのでしょうか。
茨城県は、1988年には養豚農家戸数が全国第1位(5,120戸)でしたが、2000年には全国2位の990戸、2017年には全国第6位の350戸ほどまで減少しました。減少した原因としては、豚価の低迷や飼料価格の上昇などによる経営の悪化による廃業、後継者不足や非農家の増加、宅地開発が進むなどの周辺環境の変化などが挙げられます。
さらに、TPPや日欧EPAなど、農産物流通のグローバル化が迫る中で、養豚農家が生き残るための手段として銘柄化が重要であること、また、地域や個人ブランドが乱立する中で、既存のブランド豚との違いを明確にすることが課題となっていました。
そのような中、茨城県の畜産センター養豚研究所で5年をかけて開発してきた種豚ローズD-1が、2016年12月に完成。ローズD-1は,赤身内に脂肪が高く入るという能力があり,特徴ある豚肉の生産が可能になります。
前述の課題を踏まえ、県や生産者で検討した結果、この新しい種豚を効果的に活用し,県統一ブランドの開発に取り組むことになったのが開発の背景です。
「常陸の輝き」の特徴や認定方法は?
「常陸の輝き」生産への足掛かりとして、まず2017年11月に、5年をかけて改良されたデュロック種という品種の種豚ローズD-1が、同研究所から県内の養豚農家へと出荷されました。デュロック種は,三元豚(※1)の最後の交配に使われる品種で肉質に影響を与えます。ローズD-1は赤身の中の脂肪含量が約5%と、一般的な国産豚の約2倍の脂肪が含まれます。「常陸の輝き」は、この種豚と交雑種のメス豚を交配して生産したものとなります。年内12月ごろには各農家から出荷が始まり、店頭販売や飲食店などでの提供が始まる予定です。
※1 三種類の品種を掛け合わせる、国内の肉豚生産において中心的な生産方式のこと。
「常陸の輝き」として認定されるには?
「常陸の輝き」として認定されるのは、指定生産者が「常陸の輝き生産流通マニュアル」に基づいて、生産・出荷した豚肉です。マニュアルでは、種豚はローズD-1を活用すること、そして、肉質を良くするために設計された「常陸の輝き」専用飼料を、定められた期間給与することになっています。また、出荷時点での体重は、通常の肉豚出荷より重めに育てることで、脂肪含量や旨味の向上を図るとしています。
品質については、基準を設定したうえで、定期的に脂肪含量などの肉質検査や、関係者による食味評価を実施することにより、バラツキのない高品質な豚肉を供給していく方針です。これまでにも、「常陸の輝き」の試作品の評価は、肉が柔らかく、旨味があり、香りも良いという評価を、料理人の方などから得ているとのことです。
ブランド確立に向けた施策
競争力のあるブランドとして確立するためには、まず知名度を上げることが必要です。本格的な販売が始まる来年度以降は、イベントや販売フェアなどの実施,メディアを活用したPR対策を重点的に実施し、首都圏の百貨店や高級レストランなどでの取り扱いを目指しています。
将来的には、2020年度には3万頭、2025年度には7万頭の出荷を目標にしています(※2)。「常陸の輝き」が豚肉の全国トップブランドになるように関係者とともに取り組みを進めていきたいとのことです。
※2 茨城県養豚振興計画
【取材協力・写真提供】茨城県農林水産部畜産課