形や香りがアクセントに! “雑草”や野菜を使う理由
お花屋さんといえばバラやユリ、カーネーションなど、華やかな花が販売されているイメージを持つ方が多いと思います。東京都内に多数店舗を抱える人気花店「レ・ミルフォイユ・ドゥ・リベルテ」では、バラなどのお花屋さんらしい花を販売する一方で、ススキなどの“雑草”や、ハーブや菜の花、麦といった“野菜”類を、季節に合わせて販売しています。バラやユリなどに比べると価格は抑えめで、1本約100~200円台です。
“雑草”や野菜類を使う利点について、同店・五反田店舗の店長・安田一平(やすだ・いっぺい)さんは「いわゆる雑草などを使うことで、ナチュラルな雰囲気や季節感を出すことができますし、形としてもアクセントになって面白いものもありますし、お客様との話題にもなります」と言います。
店頭に並ぶ“雑草”に対しては、小さいころに雑草で遊んだ経験があると思われるお客様から特によい反応があるそうです。「『あ、ぺんぺん草だ!』と、うれしそうな反応をいただきます」
ミントやバジルなどのハーブ類は香りがよく、「爽やかな香りでリラックス効果のあるアレンジメントなどになります」。店頭で売られているものは食用ではないので食べることはできませんが、食卓で見たことのある野菜が花屋にあるというギャップに興味を持って購入するケースもあると言います。
「雑草とは違いますが、山奥でよく見かけるガマズミの一種『ビバーナムコンパクタ』も晩夏から販売しています。実物(みもの)といって、実がついた枝類として販売します。実物は秋から冬に人気が出てくるのですがビバーナムコンパクタも人気です」
自然志向の高まりとともに出てきた流れ
「(このトレンドには)身近な自然が少なくなる中で、自然を懐かしむ思いがあるのではないでしょうか。オーガニック食品など、エコや自然回帰へ関心が高まる流れの一環だと思います」と安田さんは言います。
安田さんは10年ほど生花にかかわってきましたが、ナズナなどの雑草を市場で見かけるようになったのはここ5~6年のことだと言います。この自然への回帰主義的な傾向があるのは日本だけでなく、フランスのお花屋さんでも「シャンペトル(田舎風)」というナチュラルなスタイルが人気です。
ナチュラルなイメージでも天然ではない
これらの市場に出回る“雑草”について、「“雑草”と言えど、実は自然そのままのものではないんです」と安田さんは言います。「店頭で販売するには、茎に長さがあることが大事です。花束やアレンジにするには長さがある方が使いやすいからです。なので、当初は自然なものを出荷されていたかもしれませんが、現在では、丈が長くなるようになど、手を加えてあるものが多いです」
リベルテで販売する“雑草”や野菜類は、すべて花卉(かき)市場から仕入れており、農家から直接仕入れてはいないそうですが、研修の一環で生産農家を訪れることもあるとか。「生産者さんのところへお伺いすると、畑の一画全部がナズナということもありました」
店頭に並ぶのは春先から秋がメイン
温かくなってきた春先にナズナやバジル、ローズマリー、菜の花、豆の花などが花市場に出始めます。初夏にはラグラスなどイネ科のものや麦(穂)、ミント、秋にはススキ類が入ります。
「春先から秋にかけては、自然界でも草木がよく繁る季節です。野草などもその時期によく花卉市場で見かけますし、店頭にも並びやすい時期です。旬なのでもちもよく、元気なものが入ってきます」と安田さん。
鑑賞するもよし、食べるもよし 減農薬・無農薬ハーブのブーケやアレンジ
家族の言葉がきっかけで開発されたハーブ商品
オンラインでの注文を中心に扱う「オーガニックフラワーショップわなびや」では、減農薬・無農薬の花とともに、減農薬ハーブのブーケや、無農薬ハーブとエディブルフラワーの詰め合わせを販売しています。
2009年に減農薬・無農薬の生花店としてスタートした同店は、翌年2010年からハーブやエディブルフラワーを使った商品の販売を始めました。「具体的なきっかけは、デザインコンサルタントをしている主人が、ハーブをブーケにしてみては、と言ってくれたことです。ブーケに使う無農薬のハーブも、主人の仕事の関係で知り合った青森県の無農薬ハーブ農園さんから仕入れました」と、わなびや店主の古庄佳苗(ふるしょう・かなえ)さんは言います。もともと、無農薬で花卉栽培を行う生産農家はごく限られており、無農薬ハーブだったら花卉よりも栽培しやすいかもしれない、と古庄さん自身も考えていたそうです。
ブーケから始まったハーブの使用はその後、国産琺瑯として有名な野田琺瑯の容器との出会いで、詰め合わせのサラダセットも展開。今では看板商品となっています。
オーガニックなどに関心のある女性に人気!
同店の購買層は、女性が圧倒的に多いそうです。母の日や出産祝い、お中元など、何かの機会での購入がメイン。
「贈る方ご本人、あるいは贈る相手の方がオーガニックやエディブルフラワーなどに関心があったり、お料理やハーブが好きだったりということが多いようです。ヨガインストラクターやお料理教室の先生へのギフトのご注文もあります」
販売している商品には、「エディブルフラワーに興味があったので試したかった」、「見て楽しめて、そのあと食べられて、二度楽しめる」という声があるそうです。
仕入れは直接と市場ルートを使い分けて
同店で使用するハーブは「直接仕入れることが多いです。自分で収穫に行くところもあります(笑)」と、生産農家とのつながりを生かしています。その他の花などは、つながりのある生産農家から直接仕入れることもあれば、市場から仕入れることもあるそうです。花農家として市場のルートを持っている農家からは、入手したい量や、送料などを検討して、直接仕入れか市場経由かをその都度判断していると言います。
生花店での勤務を経て自店「わなびや」をオープンするまでの間に、古庄さんは有機農業を勉強したり、自分で畑を開墾して、実際に野菜や花を育てたり、農業にかかわるNPOでの仕事も経験したりしてきました。「自分でも野菜や花を育ててみることで、栽培の大変さを痛感しました」。また、実際に生産農家と会って話をする中で、経営的な側面など、農薬を利用する農家さんの事情も分かってきたそうです。「農薬を使ったもの、減農薬や無農薬のものもいろいろあって、お客さんが選べるという状況を提供したいなと思っています」
【取材協力・写真提供】
レ・ミルフォイユ・ドゥ・リベルテ
わなびや