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十五夜とは? 〜農と暦の豆知識〜

連載企画:農と暦の豆知識

十五夜とは? 〜農と暦の豆知識〜

日本は、一年を通じて多彩なイベントが楽しまれている国です。クリスマス、ハロウィン、イースターなどは海外発祥の行事で比較的近年日本にやってきたものですが、古くから存在する日本独自の行事には、先人たちが大切に受け継いできた“和の心”が通っています。その中でも、私たち日本人の日々の糧をつないできた「農業」をルーツとする行事を、「暦」とともにご紹介したいと思います。今回は「十五夜」。十五夜といえば、美しい満月を愛でる日です。なぜ、農業と深い関わりを持っているのでしょうか。

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長い歴史を持つ“十五夜”

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「出た出た 月が……」「十五夜お月さん ごきげんさん……」「十五夜お月さま見てはねる……」──わらべ歌にもあるように、古くから日本人に親しまれてきたのが、十五夜です。

かつて旧暦では、毎月15日を十五夜と呼んでいました。特に、旧暦8月15日の月は“中秋(または仲秋)の名月”と呼ばれ、1年のうちで最もきれいな満月を見ることができる日と言われてきました。なぜ夏であるはずの季節に「秋」という言葉が使われているのかというと、旧暦では7~9月を「秋」としていたため。7月を初秋、8月を中秋、9月を晩秋とそれぞれ呼んでいたのです(ちなみに、旧暦では1~3月が春、4~6月が夏、10~12月が冬にあたります)。

中秋の名月を鑑賞する月見のイベントをすなわち十五夜と呼んだわけですが、この行事は古く唐の時代の中国で行われていたもの。平安時代に日本に伝わると貴族たちがまねをし、その後庶民の間でも広まったことで、日本国民の一般的な行事として定着したと伝わっています。
ちなみに、現代の暦では、中秋の名月を拝める日付は年により異なり、今年2018年は9月24日がその日に当たります。

十五夜と農業の密な関係

農業

月見の宴を催す十五夜は、これから始まる秋の収穫期を前に、“豊作を願う”“収穫に感謝する”という収穫祭としての意味合いも含まれるもの。「お月さま」にささげるのは、イネに見立てて飾ったススキ、木製の台(三方)に積み上げた月見団子、それにお神酒などが代表的です。

月見団子は、十五夜に見られる満月の形を模して、真ん丸に作るのが古くからの習わしです。ところが、地域によって形は異なり、静岡県では平たい形で真ん中がくぼんだ形状の団子、新潟県では芋の形に似せた団子などが作られます。十五夜の別名は「芋名月」。これは、かつて畑で収穫したばかりの芋を供物としていたことに由来するといいます。

現代では幻となった「十三夜」

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昔は十五夜の他にも、旧暦の9月13日にあたる「十三夜」に月見の行事がありました。この十三夜、実は十五夜よりももっと広く民間に普及していたといいます。

当時、十五夜と十三夜の月は大きな意味を持つものでした。なぜなら人々は、月の出具合によって、その年の作物の豊凶を占っていたからです。十五夜が大麦、十三夜が小麦の作柄を占うとされ、よく晴れれば豊作になると信じられていました。先人たちは、どんな思いで毎年十五夜と十三夜の月を見上げていたのでしょうか。

ちなみに、十五夜だけに月見をして、十三夜に月見をしないことを「片月見」といい、縁起が良くない、不幸が起きると恐れられていたといいます。しかし一説によれば、この「片月見」、かつての遊郭で生まれた“営業戦略”がもとになったものだといいます。遊女たちは「十五夜だけでなく、十三夜も一緒に見たい」となじみの客にせがみ、2カ月続けて自分の元へ足を運ばせたそう。それがやがて一般の人々にも広まり、なぜだかある種のカルト的な逸話として伝承されたようです。

現代の暦においては、十五夜と同様、十三夜も毎年日付が異なります。今年2018年の十三夜は10月21日。なお、十三夜は別名を「豆名月」「栗名月」といいますが、これは、供え物として出される豆や栗がちょうど食べごろになる時期だったため。実り豊かな秋らしいイベントであるにもかかわらず、今ではすっかり廃れてしまった十三夜。いつの日かまた、盛り返す日はくるのでしょうか。

 
参考
「子どもに伝えたい年中行事・記念日」
著者:萌文書林編集部(編)
出版:萌文書林

「日本のしきたり 伝統行事の知恵と心」
著者:飯倉晴武(編著)、藤島つとむ(絵)
出版:宝島社

「三省堂年中行事事典」
著者:田中宣一、宮田登(編)
出版:三省堂

「本当は怖い日本のしきたり」
著者:火田博文
出版:彩図社

 
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