北陸地方の特徴は?
毎年豪雪に見舞われる北陸地方。大陸から吹く季節風は、日本海を流れる暖流の影響を受けて、湿った空気でできた雲を多く作り出します。その雲が山を越えようと上昇したときに冷やされることで、北陸ではたくさんの雪が降るようになるのです。豪雪のため、冬の間はなかなか農業ができません。しかし、春になると冬に積もったたくさんの雪が溶け始め、豊富な雪解け水を得ることができます。北陸地方で米作りが盛んな理由の一つは、この豊富な雪解け水を稲作に用いることができるから。豪雪がもたらす「豊かで良質な水」が、おいしい米作りを支えているのですね。
新潟県の農業の中心は米、富山県も米!
米の産出額全国第1位を誇る新潟県。稲作を主とする農業は、越後平野(別名・新潟平野)などを中心に営まれています。信濃川や阿賀野川が運んできた土砂が長い年月をかけて堆積してできた越後平野。平野を流れる川は、昔は雪解け水や豪雨などによって2〜3年おきに氾濫を繰り返していました。せっかく植えた稲も、洪水によって泥に覆われてしまうため、かつては非常に苦労をして農業を行っていたようです。その後、水害をなくすために、用水路や排水路の整備が進められ、現在のような美しい水田が広がるようになりました。そんな新潟県の農産物といえば、やはりブランド米のコシヒカリが有名ですが、その他にも、新潟県では多様な気候風土を生かし、やわ肌ネギ、枝豆、里芋、スイカ、西洋ナシなど、さまざまな野菜、果樹の生産が行われています。その中でも特に枝豆は、生産量、栽培面積ともに全国上位です。
富山県も、耕地面積のうち9割以上を水田が占めるほど稲作が盛んです。砺波(となみ)平野を中心として行われるチューリップ栽培は、もともとは水田の有効活用のために始められたものでしたが、今では日本一のチューリップ球根生産地として、毎年1500万球前後の球根を全国へ出荷しています。富山県でチューリップ球根の栽培が盛んな理由として、冬の積雪と豊富な雪解け水が挙げられます。球根は秋に植えられた後、冬の間は積雪の下にあることで適切な温度と湿度で保護されます。また、チューリップは成育中に大量の水を根から吸い上げるため、豊富な雪解け水が役に立つというわけです。
石川県、福井県でも主力は米!
石川県も、新潟県、富山県と同様、米を中心とした農業を展開しています。県南部の加賀地域では、米作りをメインに、山間部ではナシなどの果樹、海沿いの砂丘地帯ではダイコンやスイカなどの野菜の生産が盛んです。また、県北部の能登地域では、かんしょ(サツマイモ)、カボチャなどの野菜が生産されています。石川県を代表する果樹として有名なのは、14年の歳月を費やして開発された県オリジナルのブドウ「ルビーロマン」です。巨峰の約2倍の粒の大きさで、鮮やかな紅色を持つ高品質のブドウとして知られています。また、城下町として栄えた金沢市では、加賀藩の藩政時代より受け継がれてきた伝統野菜「加賀野菜」をブランドとして後世に引き継ぎ、生産と消費の拡大を図る取り組みもされています。
福井県でもコシヒカリを中心に米が多く生産されています。コシヒカリは新潟県で生まれたと思っている人も少なくないかと思いますが、実はコシヒカリ発祥の地は福井県。最近では県が“ポストこしひかり”として新たに開発したブランド米「いちほまれ」にも注目が集まっています。米の他にも、山間地ではソバ、砂丘地ではラッキョウなどが生産されている福井県。県東部に位置する大野盆地では、昼夜の気温差が大きい気候を利用して里芋が栽培されています。また、県西部の若狭町西田地区を中心とした地域では、春先の安定した気候が梅の栽培に適していたため、江戸時代より「福井梅」の栽培が行われています。
今回は北陸の農業をご紹介しました。北陸ならではの気候や、豪雪による雪解け水を最大限に生かし、米を中心に地域に合った農業が行われているようですね。北陸産の作物を食べる時は、ぜひ雪解け水の恵みを感じてみてはいかがでしょうか。
※ 生産量・産出額はいずれも2016年、農林水産省調べ。
参考
北陸地域の農業をめぐる情勢について – 農林水産技術会議 – :農林水産省
雪がいはなぜ起こるのか:国土交通省北陸地方整備局北陸技術事務所
農林水産業のすがた 農業:新潟県
特色 [産業]:富山県
石川県オリジナルぶどう品種「ルビーロマン」:石川県
福井の代表的な農林水産物:福井県