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農家が教えるナス(茄子)の栽培方法 名人になればあなたも菜園ヒーロー!?

鶴田 祐一郎

ライター:

連載企画:農家が教える栽培方法

農家が教えるナス(茄子)の栽培方法 名人になればあなたも菜園ヒーロー!?

ナス・トマト・キュウリをどれくらい継続して立派に育てることができるか。その能力こそが家庭菜園において最も重要であり、やりがいを感じられるものだということを、菜園数年目の中級者たちはヒシヒシと感じているでしょう。本記事では、その中でも「人気No.1菜園作目」と言っても過言ではないナス栽培についてより深く理解いただけるよう解説していきます。5カ月間立派なナスを毎日のように採り続けて菜園仲間のヒーローになりましょう!

引き出せナスのポテンシャル!目指せ1株100本

家庭菜園でナスを植えている人は最も多いように見えますが、ナス本来の能力を50%でも発揮させている人はごく一握りのようです。
一般的に4月下旬頃販売される苗は、おおよそ1~2月に播種(はしゅ)されています。ナスの一年間を見てみると、8~9月までかけて急激かつ長期間にわたって枝葉を茂らせ、涼しくなってきてようやく生育が鈍くなっています。
また、それだけ枝葉を茂らせながら次々と花をつけ、実をならせていきますから、ナス科作物の本領を発揮させることができれば、1本のナスの株で100本以上はゆうに収穫することができるはずです。

なすの成長する時期を現した図

ナスはどのような野菜?特徴や由来など

ナスはインドを原産地とするナス科ナス属の植物です。日本の露地栽培では冬に枯れてしまいますが、暖かい気候であれば多年草として生き続けます。原産地では紀元前から栽培されていた歴史のある野菜で、日本には奈良時代に渡来しました。江戸時代には広く庶民の間に普及し、「一富士二鷹三茄子」や「秋茄子は嫁に食わすな」のような複数のことわざに残るなど、日本文化に深く根付いています。
ナスの果実はその艶やかな紫色が特徴で、品種によっては白色や緑色のものもあります。淡色野菜に分類され栄養価はあまり高くありませんが、食物繊維やカリウムを含みます。料理の幅が広く、煮ても焼いても揚げても漬物にしても大活躍のうれしい野菜です。もやし並みにカロリーが低いのも特徴です。

ナスを育てる前に知っておきたい栽培のポイント

ナスは高温性作物で、適温は22~30℃です。寒さには弱く、定植には17℃以上の地温が必要です。そのため十分に温度が確保できる時期に栽培することが重要です。
品種によって露地栽培向きとハウス栽培向きがあります。苗を選ぶときは自分が育てる環境にあった品種を選ぶようにしましょう。
ナスには紫色、白色、緑色、まだら模様など非常に多くの品種があります。収穫量も品種によって差があるので、たくさん収穫したいときは多収品種を選ぶとよいでしょう。収量が少なくスーパーなどでは見かけない品種を自分で育てるのも家庭菜園の醍醐味です。

ナスの栽培に必要な道具

ナスは背が高くなるので1.5メートル以上ある支柱が必要です。畑で栽培する場合は栽培期間が長いので雑草対策や泥の跳ね返り防止としてマルチを使うのがおすすめです。また、非常に鋭いトゲがあるので作業には軍手が必須です。気になる方はトゲなしの品種も販売されています。

ナスの栽培カレンダー

ナスの種まき

育苗土に深さ1cmの溝を作り、種をまきます。ナスの種は小さいので、覆土は薄く5mmくらいにします。昼夜の温度差を好み、昼25~30度、夜20度くらいが適しています。栽培暦にあるようにナスの種まき時期は2~3月でまだ寒いので、発芽育苗機やトンネル、ハウスで保温できないと発芽までにかなり時間がかかります。セルトレイに播種した場合は本葉が2,3枚になったらポットに移植して本葉7~8枚の定植苗まで育てます。

ナスの定植~活着期

最近では4月の上中旬頃から夏野菜の苗が店頭に並ぶようになりました。
苗木業界は、早ければ売れるし、失敗してまた買いにくるしと、年々早売り競争になっていますが、「苗半作」と言われるように、苗の選択が栽培の半分を決定するとも言われます。優良苗の入手は必須です。少なくとも売れ残りの品質が劣る苗で一年間栽培する訳にはいきませんから、売り出されたからには買わざるをえません。

購入時期に合わせて急いで畑を用意したり、時期が早いのに植えつけたりするようなことはやめましょう。5月のゴールデンウイークが過ぎてからでも十分に間に合いますし、好条件で植えられたナスはあっという間に悪条件の早植えナスを追い越していきます。
苗が小さくても、できるだけ葉が大きく、茎が太いものを選びましょう。背丈ばかり大きくて茎が細く葉も小さいようであれば、花が咲いていてすぐにでも収穫できそうに見えても、選んではいけません。

ナスの土づくりのコツ

土壌条件を整えておくためにも、できるだけ早いうちから畑の準備をしておきましょう。
ナスは肥料がたっぷり必要な野菜なので、土の保肥力を上げる役割をしてくれる「堆肥」をしっかり入れることが大切です。
堆肥(たいひ)と石灰を入れて耕し、できるだけ高く、広い畝を立ててください。11月まで使う畝ですから、一生懸命やってあげましょう。長期間の栽培になるのでマルチング(土の表面をビニールやわらなどで覆うこと)を推奨します。

耐病性のある接ぎ木苗であれば、連作も可能です。ホームセンターの苗で台木の品種が分からないようであれば、少なくとも3年間はナス科を植えていない圃場(ほじょう)を選びましょう。最悪最凶の青枯病(あおがれびょう)や半身萎凋病(はんしんいちょうびょう)の心配が軽減されます。

平均的に、高さが20~30センチ、畝幅130センチほどの畝を立て、60~80センチ間隔で植え付けます。2本仕立て(※)なら株間50センチでもなんとかなります。3~4本仕立てなら70~90センチほど悠々ととっても隙間は埋まります。

※2本仕立て:主枝のほかに脇芽1本を第2の主枝として伸ばしていく育て方。主枝をさらに増やすことにより3本仕立て、4本仕立て……となる。

粒状の殺虫剤を植穴にひとつまみ入れておけば、定植後約20日間、この時期の天敵アブラムシなどの被害は免れますのでお薦めします。
家庭菜園において、「行灯(あんどん)」は必須と考えましょう。以降の生育が全く違います。行灯とは植物の四方をビニールで筒のように囲うもので、内部の温度を上げて成長速度を促進するほか、まだ小さく弱い苗を風から守ってくれます。

行灯

ナスの仕立て(誘引・整枝)

行灯を飛び出して草丈が50センチ程度になったら誘引(※)することができるようになりますが、それまでに約1カ月を要します。その間にしっかりとした支柱を組んでおきましょう。

※誘引:茎や枝を支柱などで固定し、倒れるのを防いだり、成長の方向を調節したりすること。

菜園現場では、いろんな人がいろんな工夫をして仕立てています。どんな仕立てをしているのか、よその畑を見学してみたり、インターネットで検索してみたりしても良いでしょう。
最も一般的なものは、園芸用の竹状の支柱を使用した下図のような形。

農業

安価で組みやすく、誘引する直前で組んでも間に合います。しかし、強風に弱く、栽培途中で崩れちゃったという経験を持つ人も多いでしょう。支柱に更に補強を加えたり、ひもで引いてみたりして調整してください。
下図のようにひもでつるすやり方もありますし、畝の数が多い場合はキュウリネット用のアーチパイプなどを応用しても良いでしょう。他の夏野菜の仕立てにも使えます。

農業

どの仕立てでも、倒れなければ構いません。
基本的に一番花(最初に咲いた花)より下の脇芽は全て除去してしまいます。できるだけ小さなうちにとりなさいとよく言われますが、実は生育初期はまだ葉の数が少なく、脇芽の葉も充分に戦力として働いています。三番花が見えるくらいまでは残しておいた方が初期成育にはプラスの側面が大きいようです。
そのころになったら、将来主枝に選ぶべき勢いの良い枝も判断しやすいでしょう。基本的に一番花の上下に発生する強い枝を使用します。ただし、台木(接ぎ木の元である根に近い部分)から出てくる芽は早めに除去しましょう。

農業

農家のワンポイントアドバイス「一番果の摘果は状況を見て!」

ナス栽培において最も相談が多いのは一番果についてです。実はナス栽培においてそこまで重要なことではないのですが、中~後半のすさまじい勢いと収穫に追われる猛暑の最中よりも、栽培初期のまだまだ皆さんやる気満々の時期ですから、相談も多いのかもしれません。

「一番果はとった方が良い!」「いや! なり癖をつけるために残した方が良い!」

いろいろと言われていますが、結論は、「状況によりけり」です。
葉が大きく、茎も太く、生育順調で樹勢の強い時は、残しておいた方が花が咲き実を結ぶ「なり癖」と言われる成長に傾きやすく、収量が上がります。逆に樹勢が強くもないのに一番果を残していては、小さな体で果実を養わなくてはならず、木自体が完全に弱ってしまい大幅に収量を減らします。場合によっては二番果、三番果まで落とした方が結果増収することもありますので、そのときのナスの木に尋ねながら判断しましょう。

ナスの肥料と水やり

二番果の収穫頃から2週間に1回、化成肥料8-8-8(数字は窒素・リン酸・カリウムの割合を表します)をお持ちであれば一株あたりおよそ50グラム、一握りをばらまいていきます。1~2回目の追肥だけはマルチをはがすか、穴を開けてでも畝の中に放り込む必要がありますが、6月下旬頃からの追肥は、普段歩いている通路部分にばらまきしても充分に効果があります。暑くなってくると追肥もおっくうになり、ついつい株を弱らせてしまいがちですが、通路にばらまくだけならすぐに終わりますね。ナスは肥料が足りなくなると途端に元気をなくしてしまい、回復にも時間がかるので追肥を忘れないようにしましょう。

そして何より水管理は非常に重要です。ナス栽培では肥料より水が足りていないことの方が多いようです。梅雨明け以降は、水をやればやるだけ綺麗な実がたくさんなります。
いつも生育中盤からは葉がボロボロになり、立派なナスができないという人は、窒素・リン酸・カリウムの肥料以外に、マグネシウムとカルシウムの不足であることが非常に多いです。いわゆる“苦土”と“石灰”ですが、液肥が手に入る人はぜひ定期的な葉面散布に挑戦してみてください。劇的に改善する場合があります。

追肥のポイント

ナスはどんどん実がつきますが、これは実を収穫するたびに肥料と水がどんどん畑からなくなっていくということです。ですから、失われた分をきちんと補う必要があります。ナスを長期間、たくさん収穫したいならばとにかく肥料と水が超重要ポイントなのです。暑い時期の作業は大変でやる気が出ないときもありますが、追肥したかどうかをきちんとカレンダーにチェックしながら頑張って継続させましょう。

ナスをプランターで栽培する方法

1. 用意するもの

1株植えでは直径30cm以上の鉢を、2株植えなら幅70cmくらいのプランターを用意します。植え付け用に根の通気性をよくするための鉢底石、メインの土である野菜用培養土、それにナスを固定するための支柱と誘因紐(ビニール紐や麻紐)を用意します。のちのち必要となる追肥用の肥料も早めに準備しておきましょう。

2. 植え付け

本葉7~9枚以上で一番花の蕾がふくらみ、 紫色に着色した頃が定植に適した時期です。市販の苗を買う場合は、葉の色が大きく色が濃く、厚みがあり、全体ががっしりとしているものを選びましょう。茎は太く、節間が詰まって間延びしていないほうがいいです。また、葉や茎などに傷や病害虫の跡がないか確認しましょう。鉢底石を入れたプランターに培養土を入れ、土をしっかり湿らせてから苗を植え付けます。植えたあとにも再度水をかけます。苗のときはまだ小さい支柱でよいので、苗が倒れないように結びつけて固定します。

3. 栽培管理

ナスが大きくなってきたら、大きい支柱を立てます。プランターでは2本か3本仕立てにします。主枝はしっかり支柱に誘引して伸ばし、主枝から出ているわき芽は1つだけ実をならせたら実の上でカットし、それ以上伸びないようにします。葉が混みあってくると光が当たらずナスの色づきが悪くなります。ベランダ菜園の場合は特に日照が足りなくなる傾向にあるので、日当たりのよい場所におき、わき芽をとったり余分な葉を落としたりして葉が密にならないようにします。

4. 水やりと追肥

プランター栽培で一番大変なのが水やりです。ナスの実をたくさん収穫するには水がたくさん必要ですが、プランターは露地に比べ土の量が圧倒的に少ないため、とにかく乾燥しやすい構造です。朝夕の水やりは欠かさず日課にしましょう。それでも足りなければさらに水やり回数を増やします。
最初の実を収穫したら追肥を始めます。追肥の過不足はプランターだと面積が小さいため露地よりも顕著に現れます。花の雌しべが雄しべに隠れている状態(雌しべの長さが雄しべより短い)だと肥料不足です。追加で肥料を与えてください。

気を付けたい病害虫

最も被害の多い害虫はテントウムシダマシ、カメムシ、ハダニ、オオタバコガになるでしょう。アザミウマやハダニは家庭菜園ではある程度黙認したほうが良いでしょう。どちらも専門的な薬剤が必要になります。この二つに目をつむればホームセンターの安価な有機リン系殺虫剤(スミチオンやマラソンなど)で対応可能です。

最近はプロの現場でも農薬散布より天敵利用を重視することが増え、研究も進んでいます。マリーゴールドやオクラ、ソルゴーなどをコンパニオンプランツ(※)として植えることで、アザミウマやハダニの天敵が増え、今まで後半はガサガサの汚い肌になっていたナスが、秋までピカピカ!なんてことが家庭菜園でも可能になるかもしれません。

※ コンパニオンプランツ:一緒に植えることで病害虫を予防したり生育を助けたりするなど、互いに良い影響を与え合う植物のこと。

ナスの収穫と剪定(せんてい)

ナス栽培のとき、皆さん支柱を立てて誘引はするのですが、仕立てきれないまま茂らせっ放しのことも多いようです。2本仕立て、3本仕立てといいながら、結局途中で10本仕立てや20本仕立てになってしまい、お盆には木が疲れ切っておいしい秋ナスにたどり着けていないことが多いです。
基本は、ナスの収穫と剪定作業は常に並行して行われます。

3本に仕立てたとすると、3本の主枝はずっと真っすぐ伸ばして誘引していき、7月中旬頃に摘心します(主枝の先端を切り詰める)。トマトでしたら主枝に生えてくる脇芽をひたすら除去しますが、ナスはその脇芽で収穫ができます。
しかし、その脇芽の果実だけを収穫すると、脇芽の脇芽からまた枝が生長し、あっという間にジャングルになっていきます。
そのため、ナスの収穫は脇芽の根元で枝ごと切り取ります。脇芽に一つならせてそれを実だけではなく枝ごと収穫すると、また同じ場所から脇芽が伸びてくるので、次の実が大きくなったら同様に枝ごと収穫します。

農業

これを繰り返すことで、同じ場所で何度も何度もナスを収穫しつつ、全体が茂りすぎずに5カ月間ずっとコンスタントに収穫し続けることができます。実の付きが悪くなった木全体を短く切り詰めて回復させる「更新剪定」と呼ばれる作業も必要ありません。一時に有り余るほどならせ過ぎて株が疲れているということがないためです。
この収穫方法をきちんとできるかどうかが菜園ヒーローへの第一歩です。

ナスの栽培に関してよくある質問

Q.変なナスの実がなるのはなぜ?

「石ナス」と言う、とても固いナスができることがあります。原因は低温や乾燥、肥料不足などの理由で受粉がうまくいかなかったことによります。石ナスだとわかったら、そこから回復することはなく木の負担になるだけなのですぐに摘果しましょう。
さらに、つやのない「ボケナス」があります。これは水不足が原因なので、対策としてはとにかく水やりです。ボケナスを見つけたらいつもより水やりを増やしましょう。

Q. 葉が茂りすぎて主枝とわき芽がわかりません。

地際からじっくり主枝をたどって判断していきましょう。ナスは生育が旺盛なのでちょっと目を離すとあっというまに枝葉が茂って10本仕立て状態になってしまいます。主枝が発見できたら、わき芽は実のすぐ上でカットします。実より上に葉を残すとそこにさらにわき芽がつき葉が茂って判別が難しくなります。初心者は特にわからなくなりがちなので、もったいないからと残さずに切っていきましょう。

Q. 実やヘタが茶色くガサガサになるのはなぜ?

チャノホコリダニという害虫が原因です。とても小さいので被害が出るまでよくわかりません。ナスの中身は問題ないので皮をむけば食べられます。繁殖スピードが速く、退治しにくいやっかいな虫で、ひどくなると葉全体が白茶色のホコリをかぶったようになります。対策としては適応のある殺虫剤を使うか、この虫は水で流れるので、毎日水やりのときにしつこく葉裏を洗い流すと効果があります。

Q. 花が落ちて実がつかないのはなぜ?

受粉がうまくできていないことが考えられます。PC筑陽のように名前の前にPCとつく品種は単位結実性と言って受粉しなくても実がつきます。受粉の必要ない品種を選ぶのもひとつです。また、温度が高すぎたり低すぎたりすると花が落ちやすくなります。

ナスのポテンシャルを最大限に引き出す栽培を

家庭菜園で育てる人は多いものの、ナス本来の能力を発揮させている人は多くないでしょう。
本記事を参考に、ナス科作物の本領を発揮させることができれば、1本のナスの株で100本以上を収穫することも難しくないはず。
ご自身の家庭菜園レベルアップに、本記事が参考になれば幸いです。

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