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濃厚野菜「エビベジ」 有名シェフを魅了する高級ブランドの育て方

濃厚野菜「エビベジ」 有名シェフを魅了する高級ブランドの育て方

最終更新日:2018年10月30日

徹底して味にこだわり、有名レストランや都内の百貨店、直接購入でしかお目にかかれない高級野菜ブランド「エビベジ」。レストランでは、専用のドレッシングが考案されたり「エビベジのフルコースを出したい」と言われたりと、付け合わせではなく一皿の「センター」に抜擢されることもしばしば。有名シェフたちから「特別な野菜」と評価されるエビベジの魅力はどこにあるのか、栃木県下野市の海老原ファームを訪ねました。

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人参ぎらいの農家、野菜に目覚める 「スパルタ農法」で濃厚な味わい

JR宇都宮線の自治医大駅から車で10分。ハウスや畑、田んぼの合間にある集落に、海老原秀正(えびはら・ひでまさ)さんの畑はあります。

畑に案内されて驚くのが、その栽培品種の多さ。例えば、ビニールハウスの一つには、ミズナやコマツナ、チンゲンサイなど12種類の葉物が栽培されていました。現在、露地畑とハウス合わせて2ヘクタールで栽培する野菜は、一年間に100種類を超えます。

現在は少量多品目の栽培を行う海老原さんですが、10年ほど前は生産量の8割以上がキュウリという専門農家でした。

現在も生産量の半分はキュウリ。すべて昔ながらのブルームキュウリだ

海老原さんが他の野菜に興味をもったきっかけは、15年ほど前の自身の「人参ぎらい」克服体験。
独特のにおいが苦手で長く人参を敬遠してきた海老原さんですが、ある日、妻の智子さんが畑の隅で育てた人参を食べてびっくり。「甘くて、臭みもない。なんでだ、品種か?といろいろ試したのですが、どうやら育て方だという結論に達しました」。
「本当に美味しい野菜を育ててみたい」と、キュウリ以外の野菜にも手を広げ、それぞれの持ち味を生かす農法を試行錯誤しました。

例えば、カブ。海老原さんは、「水やりを極限まで控え、あえて枯れる寸前の過酷な環境に置くことで、水を保とうとする植物本来の力が発揮される」と言います。
カブの植えられたハウスの土は白く乾いて、表面に触れるとはらはら崩れます。しかしその畑から抜き取ったカブは、かぶりつくと水が滴るほど水分を含み、フルーツのような甘くさわやかな味と香りが口に広がります。

極限まで水を控える「スパルタ農法」

このように水分を控える農法は「スパルタ農法」とも呼ばれます。
「スパルタ農法で育てる野菜は、野菜本来の味や香りが凝縮されます。一方で、成長には時間がかかり、収穫のタイミングも形もサイズもまちまちです。効率を重視した大量生産・大量取引はできませんが、『本物の味』を求める人に届けたい」。

海老原さんの取引相手は現在、都内を中心にホテル15か所、レストラン30軒、百貨店2つ、個人の「頒布会」参加者100人ほどにのぼります。

販路拡大「成功率は3割程度…」

ハウスの中では、8種類ほどの葉物が栽培されている

全国にファンを持ち、現在では高級野菜として知名度も得ている「エビベジ」ですが、これまでの道のりは平たんではありませんでした。

海老原さんが直接取引に取り組み始めたのは20年ほど前。主力商品のキュウリに加え、20~30種類ほどのハーブや野菜を少量ずつ生産しましたが、キュウリ以外の野菜の取引先はスーパーやレストランなど数件のみ。消費者の声を取り入れてさらに良いものを作りたいという気持ちはあったものの、どうしたら食にこだわる人とつながりを持てるのか、販路の拡大への突破口が見いだせずにいました。

しかし2008年6月、海老原さんに転機が訪れます。
視察で訪れたビジネスコーディネーターの渡辺幸裕(わたなべ・ゆきひろ)さんが、海老原さんの野菜の美味しさに感動。「エビベジ」と名付け、いち生産者としてブランド化することを提案しました。

さらに渡辺さんは、海老原さんを東京に招き、海老原ファームの野菜を扱っていた東京のレストランで有名シェフらと一緒に食事をする機会を設けました。
「自分の野菜がレストランで食べられるのを見るのは初めて。こだわって作った野菜を『美味しい』と食べてもらえて自信になりました。美味しいものを求める人はこういうところに来るのか、使い手はこうやって使っているのかと勉強になりました」と海老原さんは振り返ります。

渡辺さん(右)と海老原さん

その後、渡辺さんの仲介で、ホテルや有名レストランのシェフなどに野菜を使ってもらえないかと売り込みを始めました。
味のプロたちの目は厳しく、営業の成功率は3割程度。「うちの求めているものと違う」と厳しい意見を言われることも少なくありません。どんな野菜なら、どんな味なら使ってもらえるのか。シェフたちの要望に応えるべく新たな品種、栽培方法を試行錯誤していった結果が、現在の少量多品目栽培なのです。

最大のピンチを救ったブランド力

現在も、海老原さんはイベントや人脈作りで年に数十回、都内に出向きます。また、8年前からは一般の消費者向けに頒布会も始め、「本物の味を求める人たち」の間に、少しずつファンを獲得してきました。

2011年3月に日本を襲った東日本大震災。原発事故の影響、風評被害で、海老原ファームも多くの取引先を失いました。
しかし、一方でこれまでの人脈から生まれた復興支援の活動などを通して新たなつながりが生まれ、3割減った売り上げは3年で回復。

「周りの農家を見てもあり得ないほど速い回復だったと思います。長く野菜を買ってくれていたお客さんは原発事故後も『頑張ってくれ』と野菜を買い続けてくれた人もいた」と海老原さん。渡辺さんは、「大切なのは食べ手、料理人、生産者が心を一つにし、お互いがリスペクトする関係。「エビベジ」が評価されるのはそういう強固な関係が出来ているから」と話します。

パンフレットは、エビベジに感動した有名デザイナーが格安でデザインしてくれた

徹底した味の追求とブランディング、地道な市場調査によって販路を拡大してきた海老原さんの足取りは、「強い農業」へのヒントにもなりそうです。

海老原さんは、直接流通を主とする今の経営は、「自分で値段をつける喜びがある」と言います。「味の良いブルームキュウリも、市場に出荷していたころはほとんど値が付かない時期もあった。今は、100種類の野菜に100通りの値段を自分でつけ、値段に見合った期待に応える責任とやりがいがあります」。

「農業をどうにかしたい」、「もっとこれを聞きたい、やってみたい」と思っている生産者たちに、これまでに培った食べ手、料理人との関係づくりのノウハウを伝えていけたらと海老原さん、渡辺さんは話しています。

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