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いま、卸売市場は必要か? 豊洲移転を機に考える卸売市場の役割

いま、卸売市場は必要か? 豊洲移転を機に考える卸売市場の役割

最終更新日:2018年11月06日

今年2018年10月11日、ついに日本最大の市場である築地市場が豊洲に移転しました。設立以来38年間、水産物を中心に東京の食を支え、観光地としても注目されてきた築地市場。築地市場は中央卸売市場の一つですが、卸売市場の具体的な役割とは何かをご存じでしょうか。自社物流網を持つ大手小売店がこれだけ増え、インターネットが普及し、産地とのやり取りが誰でも低コストで簡単にできるようになった今、卸売市場はどのような役割を持っていくのでしょうか。卸売市場の現状と今後について探ります。

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全国に64拠点。食品流通を支える中央卸売市場

「卸売市場」とは、一般的な定義では「野菜・果実、魚類、肉類などの生鮮食料品やその他一般消費者が日常的に消費する品目を効率的に流通させるために、多数の売買当事者が集合し、一定の規則のもとに卸売取引する場所」とされています。

卸売市場と聞くと、卸売業者が商品を並べてセリや交渉などをしているイメージを持つのではないでしょうか。日本では卸売市場は大きく2つに分かれ、農林水産省が認可・監督をする「中央卸売市場」と、都道府県知事(都道府県)が認可・監督をする「地方卸売市場」があります。豊洲市場も含まれる「中央卸売市場」は、2018年現時点では全国64拠点、40都市にあります。

卸売市場を含めた流通構造
(農林水産省「卸売市場をめぐる情勢について(食料産業局)平成30年」より抜粋)

衰退する卸売市場

豊洲市場の移転では、移転時に仲卸業者が減少する事が報じられました。収益の悪化や後継者不足により、築地移転前の530社の一部は廃業するようです。

築地・豊洲市場だけではなく、全体としても卸売市場の業者数、流通額は減少傾向にあります。農林水産省の資料によると、卸売市場での年間取扱金額は1980年の9.2兆円から2013年には6.7兆円となり、33年の間に27%減少しています。仲卸業者・卸売業者の数も1980年度の6741社から、2015年度の3444社と半減している状況です。

元来、市場が持つ機能は主に4つと言われていました。全国各地から商品を集めて需要に応じて再分配する「集荷・分荷機能」、需要と供給を反映させて公正に商品の相場を決める「価格形成機能」、決済の短期化・安定化を進める「代金決済機能」や、流通の情報を収集し川上・川下に伝える「情報発信機能」です。

卸売市場が持っていたこのような機能が他の手段でも実現できるようになり、その役割が減ってきてしまいました。具体的には、コンビニやスーパーなどの一部小売店は大規模化し、独自の調達網を持って市場外の流通ルートを築いてきています。また、インターネットの発達により、消費者でも直接卸売業者や生産者と取引ができる方法が出現しました。

さらに、情報技術が発達したことにより、卸売市場で行われていた慣習の一部も必要のないものになってきています。例えば、卸売市場の機能の一つである「価格形成」はセリ・入札を通じて行われるイメージが強いと思います。このセリ・入札は、現時点で既に取扱金額に対して10%程度しか行われておらず、1999年からどうしても必要なもの以外は原則禁止という形になり、その機能は薄れてきています。

しかし、卸売市場取扱金額は減少はしているものの、下図の経年変化を見てみると平成20(2008)年以降は横ばいに近づいて安定しているのがわかります。社会におけるその役割は依然として大きいといえるかもしれません。

農林水産省「卸売市場をめぐる情勢について(食料産業局)平成30年」より抜粋

時代に対応するための市場法改正

時代に適応する卸売市場に変わろうと、卸売市場法の改正が行われました。直近だと改正は2018年6月に成立し、2年以内に施行される予定です。改正のポイントは、市場の公正性を保つために導入されていた取引ルールを、各市場開設者が見直しできるようになった点です。

例えば、第三者販売原則という取引ルールは、定義された流通経路(産地-卸売業者(集荷)-仲卸業者(分荷)-小売事業者等)の一部を飛び越えて取引する事を禁じていました(卸売業者から直接小売事業者等への販売など)。これは卸売業者、仲卸業者の役割を明確にするためでしたが、不要に長い流通経路を作ってしまう可能性があります。各市場開設者がこの第三者販売原則の見直しをできる事になり、より自由な流通経路の構築が可能になりました。また、市場を通していない商品以外販売してはいけないという商物一致の原則も見直すことが可能になりました。

農業

実生活では、流通はさまざまな形で急速に変化しています。全国各地にコンビニが広がり、インターネットで物を買うのは普通になり、最近ではAIによる無人小売店の実験もされています。それを考えると卸売市場の変化は、川下の変化より緩やかな印象を持ちます。一方で、今後はAIやIoTを中心に、食産業・流通業の情報化のスピードがあがることは間違いありません。豊洲市場が誕生するこの機会に、卸売市場も時代に合った形でどのように変化していくのか思いをはせてみるのも面白いかもしれません。次の記事では次世代の市場について考えてみたいと思います。

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