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日本の食のこれから。農水省の若手職員チーム「Team 414」の描く未来。

日本の食のこれから。農水省の若手職員チーム「Team 414」の描く未来。

20年後、30年後の日本の食の環境はどう変わって行くのか。農林水産省の若手職員チーム「Team 414」が、100人以上の有識者と意見交換して見えてきた「食の未来」をつくるヒントと、彼らの現在進行形の取り組みを紹介します。

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「日本の食のこれから」について、農水省の若手たちが動き始めた!

「ワクワクする未来を創りたい」という思いで、若手職員が議論を始めた

「大事な日本の食を、地域を、世界に誇れるものにしたい。だからこそ、至っていないところを恐れずに知りたい」。そんな思いで、現在の農林水産行政に漠然と閉塞感や危機感を感じていた農林水産省の若手職員有志22人が集い、2017年10月から“勝手連”的に活動を始めた「Team 414」。通常の業務以外の時間を使い、およそ6カ月間で100人を超える有識者と「食の未来」について意見交換し、そこで得た意見や事例を踏まえ、今年4月「この国の食と私たちの仕事の未来地図」という報告書を取りまとめました。この中で最初に掲げられているのは、「ワクワクする未来を創りたい」という思い。安心できる食卓や、日本の食の価値の再評価、持続可能な農業など、明るい「食の未来」を見据えて議論が行われました。

Team 414の活動について教えてくれた渡辺さん

Team 414の一員、農林水産省経営局経営政策課の渡辺一行(わたなべ・いっこう)さんは、「農林水産業行政は、ビジネスモデルや社会の変化など、世間の潮流から隔絶されているように感じていました」と、Team 414で議論が始まったきっかけについて話します。「2018年の世界経済フォーラム(年次総会)で、技術革新が2030年までに『食』にどのような影響を与えるかがテーマとなるなど、新たな社会の到来を見越しています。その一方で、普段の農林水産行政では、“いま”起きている問題への対処が中心となっています」。このため報告書では、普段の農林水産行政ではなかなか議論される機会がない、「20年先30年先に食や農業の世界がどうなっているかを見据えて、テクノロジーやビジネスモデルが急激に変化して行く中で、日本における「食」のグランドデザインを描くこと」を目的としました。

100人以上の有識者と意見交換。見えてきたことは?

「さまざまな有識者から話を聞くことで、食や農業を取り巻く環境の変化が見えてきました」と話す渡辺さん

こうした目的のもとで若手職員たちが行ったのが、アグリテック企業や研究者など、さまざまな分野の有識者100人以上に直接話を聞くこと。意見交換の中で見えてきたのは、テクノロジーの進化による食を取り巻く環境の大きな変化でした。「細胞農業の台頭やブロックチェーンの変化、分子調理学などの料理に対する科学的なアプローチの普及など、さまざまな要因が見えてきました」と渡辺さん。生産分野では、植物工場のさらに先の未来として、細胞を培養して肉や野菜の成分を作る「細胞農業」で食料を生産する動きが。一方、実地では、世界中で中国資本による農地買収が進んでいることもわかりました。また、消費分野では、自宅で新鮮な野菜を収穫できる植物工場や3Dフードプリンターの普及で、食べ物の生産や加工が、個人の嗜好(しこう)や健康に合わせてパーソナライズされていくこと、さらに、食の世界にもシェアリングエコノミー(※1)が登場し、食を通じた交流が新たなビジネスになっていることなどもわかってきたと言います。

食と農業の未来について、半年かけて話し合った。Team 414の「414」は、定期的に集まっていた会議室の番号から

その上で、報告書の中で指摘されたのは、食の世界に大きな流通の変化が起き始めているということ。それは、これまでは大きな産業の側が情報を持つ「パイプライン型」の仕組みだったものが、消費者の視点に立って、その人がより豊かで幸福度の高い生活を送るためにはどんなサービスや情報があったらいいか逆算的にビジネスを組み立てて行く「プラットフォーム型」の仕組みに変わりつつあるというものでした。生産者、消費者、流通、小売が、それぞれに有機的につながることで、これまで見逃されていたようなニーズに対してもアプローチできるようになると予測しています。
また、技術の進歩によって農業の効率化、大量生産、自動化などが進んでいますが、さらに「Industry(インダストリー)4.0」(※2)によって農地のシェアが進み、穀物だけでなく野菜や果物などについても、国境を越えて“欲しい人が欲しい時に”供給される時代が来る可能性があるとしています。
報告書では、こうした可能性を見定めながら国づくりを提言していくことが重要だとしています。渡辺さんも、「今、世界的に注目されている日本の食や農業が、これから20年先も輝き続けるためには大切な視点です」と話します。

※1 シェアリングエコノミー:モノやサービス、場所などを他者と共同利用する社会的な仕組み。
※2 Industry4.0:IoTやAIを用いることによる製造業の革新のこと。「第4次産業革命」とも。

Team 414が、報告書の先に見る「食の未来」とは?

「Team 414」の活動について教えてくれた渡辺さんと、水産庁漁政課の冨士田通子(ふじた・みちこ)さん

「行政官はルールを作ることでやっと仕事になるが、半年ではそこまで到達できなかった」と、報告書について振り返る渡辺さん。報告書では、解決策を示すところまでは到達できず、「言いっ放しで終わりは悔しい」という思いがあったと言います。ただ、報告書をまとめた若手職員の熱意は農林水産省全体を動かし、今年4月、省内にこうした将来的な課題を話し合い、政策提言を行う「Open Lab(オープンラボ)」の仕組みができました。Team 414を母体として、20~30代の若手職員と外部から招いた有識者の数人でチームを組み、そこに審議官・局長級の決定権を持つ職員もメンターとして配置することで、現実の政策に落とし込んでいくというもの。それまでTeam 414は時間外に活動していましたが、正式に業務として取り組むことができるようになったということです。すでに6月からは3Dフードプリンターなどをテーマとした3つのチームが立ち上がり、議論を進めています。
20年後30年後を見据えて、食、そして農業の未来について議論を始めた農林水産省。若手職員を中心としたチームから、今後どんな政策が生まれてくるのか。Team 414の活動から、ますます目が離せなくなりそうです。

イベントなどで報告書の説明も行いながら、さまざまな分野の人たちと意見交換をする取り組みも行う

OpenLab with Maff-この国の食と私たちの仕事の未来地図を考える会-

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