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水管理の自動化で、米農家の負担を軽減!富山発・スマート農業ベンチャーがサービス開発

水管理の自動化で、米農家の負担を軽減!富山発・スマート農業ベンチャーがサービス開発

最終更新日:2018年11月06日

最近よく耳にするようになった「スマート農業」。ロボットやAIなどの先端技術を活用した農業を指しますが、生産性向上に直結する具体的な活用法を構想できている農家は少数派ではないでしょうか。稲作で最も時間的コストが掛かるといわれる「水田の水管理」の自動化に焦点を当て、農家の収益アップに繋げるサービスを開発したスタートアップ企業に話を聞きました。

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米農家の骨を折る「水管理」 スマホアプリで自動化へ

水稲農家

2018年10月の「CEATEC JAPAN」で、水稲農家向けスマート水田サービスについて説明する下村さん

種撒き・育苗から始まり、土起こしに田植え、そして収穫…と米農家の一年は多忙を極めます。なかでも、4~5カ月間にわたって一日約6時間という膨大な時間を費やす作業は、水田の水位・水温管理(水管理)だといいます。にも関わらず、水門開閉の機械化は芳しくありませんでした。

そんななか、スマートフォンアプリを通した遠隔での水管理により、高齢化する生産者の負担軽減に繋がるサービスを開発したベンチャー企業があります。
IT企業出身の下村豪徳さんは、2013年に株式会社笑農和を富山県で起業。スマートフォンアプリを通した遠隔での水管理により、高齢化する生産者の負担軽減に繋がるサービスを開発しました。富山県は耕作面積全体のうち9割を水田が占める全国屈指の米どころで、下村さんは地元の米農家の長男として生まれました。

通常の水管理は、生育段階や気温に合わせて、用水路に設置された木の板を手で抜き挿し、水位と水温をコントロールします。「単純作業ですが、成果に与える影響はとても大きい」と、下村さんはいいます。例えば、適切な水管理が行われず圃場の温度が高くなると、米の内部に亀裂が生じる現象「胴割れ」を起こしたり、雑草の勢いに負けて収量が落ちたりと、生産性低下に繋がります。

「おいしい米を作るベテラン農家ほど、水管理にこだわる」と、下村さん。しかし、適切なタイミングや量などの判断は、経験と勘に依るところが多く、ノウハウを次世代に継承しづらいことが課題でした。

簡単操作で、水位・水温を自動管理 収益増に活用を

電源は、専用バッテリーではなく乾電池6本。新しいツールの導入へのハードルを少しでも下げて欲しいという、農家で生まれ育った下村さんの心配りが宿る

さらに、悪天候や深夜でも見回りの必要あり、事故リスクも潜んでいます。農業用水の水路が太く、急流になりがちな富山県は「水難事故率が全国ワースト1」(下村さん)だといいます。

現場の課題をテクノロジーで解決しようと下村さんが開発したのは、水稲農家向けスマート水田サービス「paditch (パディッチ)gate 02」。SIMカードと水位センサーを搭載するIoT機器を水田に設置することで、スマートフォンのアプリやPCからの簡単な操作のみで、圃場の水位や水温の把握・調整ができる仕組み。
インターネット経由で、どこからでも水門の自動開閉やタイマー設定ができるため、深夜や早朝、悪天候の下でも行っていた見回りが不要になります。一定の水温に達すると自動で開扉して水温を下げるという使い方も可能。栽培データはクラウド上で管理でき、時間的コストの削減と情報蓄積による経営効率化が期待できます。

当初に企画を農家に説明すると、下村さんが受けた反応は意外なものでした。
「そもそも水管理に時間が掛かかり過ぎていることに、疑問を持つ人がいなかった。短縮すべき仕事だという発想自体がなかったですね」。自信のバックグラウンドを活かし、丁寧な語り口で保守的な農家の抵抗感を解きつつ、余った時間で新たな収入源が作れるなど導入のメリットをアピール。クチコミで評判が広まり、徐々に問い合わせが増えていきました。

現在では北海道から九州まで、合計で100台が導入されています。北陸の企業で初めて、KDDIのスタートアップを支援するプログラムにも採択されました。
「規模拡大をしたい人など、30~40代の農家の利用も増えています。水管理に費やしていた時間を有効に活用して、収入を上げてもらえれば」と、下村さんは期待します。

100年後も、おいしいお米を食べるために

データの蓄積は、気候変動が予測される未来への活用も期待されます。

「温暖化が進むと、暑さが苦手な『コシヒカリ』のような現在の定番品種は育たなくなる恐れがあります。各県で奨励品種の切り替えが進んでいるのですが、農家の経験と勘だけに頼っていると、新たな品種に応用できなくなってしまう可能性もあります」。

しかし「paditch gate 02」のような機器が全国に普及すれば、新品種の肥料や水量のデータを蓄積し、次世代へのノウハウを引き継ぎが可能になります。

「プロの英知をデータに残せば、横展開できる。ひょっとすると、全くの素人がいきなり80点の品質の米を大規模生産することもできるかもしれない。産地の水路をAIで制御することによって、人の手よりも質の高い水管理をすることも可能だと思います。100年後もおいしいお米を食べ続けられる未来にしたいです」と、下村さん。「富山は米騒動発祥の地。富山からテクノロジーを通して、米の生産現場に革命を起こしたい」と、前を見据えます。

※「paditch gate 02」導入コストは、機器代12万円+通信費月額1,100円。

◆イベント情報◆
株式会社農業総合研究所の及川智正代表をはじめ、農業界で活躍する登壇者が、「スマート農業が変えるデータ活用の未来」について語ります。

「paditch summit2018」
日時:2018年11月14日(水)10:30~16:00
場所:インテックスカイホール(富山県)
詳細はこちら

【関連サイト】
スマート水田サービス paditch(パディッチ)

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