ひとり農家で修行して、バラを育て始めた
──もともと農業に縁のあるご家庭だったのですか?
いえいえ、家族に農家はひとりもいませんでした。バラを育てようと思い立って農家で約1年間修行して独立したのですが、全くうまくいきませんでした。その後もう一度農業を勉強する学校に入り直し、今の事業を立ち上げたんです。
──全くうまくいかないというのは、どんな状況だったのでしょう?
最初はうまく咲いても、その後の気温の変化に耐えられず咲いている状態を保てませんでした。もともと修行していたのは大阪だったのですが、私がバラを育て始めたのは埼玉だったのです。水質も肥料も違うのでうまくいきませんでした。
──水質という言葉が出ましたが、土を使わずに栽培しているというのは驚きでした。
ロックウール栽培といって、スポンジ状のものに根っこをはわせる方法でバラを育てています。土を使わないので虫が来ないことや生産量を安定させることができるという利点があります。
──虫はやっぱり弊害になるんですね。
栽培の面でもそうですが、バラを食べることに対する抵抗をひとつでも減らせればと考えました。バラはもともと観賞用として親しんでいるものなので、土を使っていないというと、少し食べられるイメージを持ってもらえるのではないかと考えたんです。
甘くなりすぎないデザインも人気の秘密
「バラが好き」という気持ちからこのブランドを始めたこともあって、彼女ならではのこだわりが商品の細部に宿っています。
──食品のシリーズでこだわったところはありますか?
食品のシリーズは、バラを使うだけではなく、その他の材料にもこだわって商品を作っています。例えば白い砂糖を使わず、てんさいや大根から取れる成分を使用していることや、紅茶の茶葉を有機JASの認証があるものにするなどです。ハーブティーはノンカフェインで妊婦さんにもおすすめできますし、おやすみ前にも飲んでいただけます。
──コスメシリーズは、デザインも素敵ですね。
バラが持つイメージの赤やピンクを多く使わずに、可愛らしすぎないデザインを心がけています。ボトルの色は薄いグレーを使って、スタイリッシュなイメージを持ってもらえるように作っています。
バラを食べられないものだって誰が決めたんだろう
ROSELABOの商品を見ていると、バラを使うことやそれを食べられる珍しさだけではなく、ひとつひとつの商品が女性を応援してくれているかのような力強さを感じることができます。
──どんなコンセプトでこれらの商品を作っているのでしょうか?
バラが持つ、自分の女性性を改めて目覚めさせる力を信じて商品を作っています。女性っていつまでもお姫様のような可愛らしい気持ちを持っていたり、少しでも奇麗でいたいという気持ちを持っているものだと思うのです。私たちの商品を通じて、そんな気持ちに浸ってもらえたらうれしいです。
──田中さんご自身もその力を感じているのですか?
もちろんそうです。それに、バラは私に人生で大切なことを教えてくれました。
──というと?
大学生の時、国際政治経済学部という公務員や教員になりたい人が行く学科に通っていました。みんな何かしらの夢があるのに、自分にはやりたいことがなく悩んでいたんです。その時に、偶然食べられるバラがあることを知りました。その時ふいに、「バラを食べられないものだって誰が決めたんだろう」という気持ちが湧いてきたのです。バラが食べられないと決めつけてしまうのと同じように、その時の私は自分にはやりたいことがないと勝手な固定観念を持ってしまっていた。その固定観念を取り払ってみたら、自分の好きなことを仕事にしようと思えたんです。
──それがバラだったんですね。
そうなんです。だから、バラが私の人生を変えてくれたと同時に、私の人生そのものになったんです。
驚いたのは、力強く話してくれた彼女が弱冠25歳だったこと。その口ぶりからは落ち着きと気品、覚悟が宿っているように感じられました。それはバラが持つ、しなやかで美しいイメージに似ています。ROSELABOの商品を日常に取り入れれば、そんな女性に近づけるのかもしれません。