畑の害虫図鑑〜アブラムシ編〜【畑は小さな大自然vol.26】

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畑の害虫図鑑〜アブラムシ編〜【畑は小さな大自然vol.26】

連載企画:畑は小さな大自然

畑の害虫図鑑〜アブラムシ編〜【畑は小さな大自然vol.26】
最終更新日:2019年05月30日

こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。家庭菜園をされている方から相談されることの多い害虫の問題。その中でも特に多いのがアブラムシです。特に春や秋の時期に葉物やナス・ピーマンなどにびっしりと付いて「どうしよう!?」と困った経験のある方も多いのではないでしょうか。アブラムシの特徴は何よりもその繁殖力の強さです。アブラムシのことをあまり知らずに、下手な対応をしてしまうと逆に増えてしまったということもあり、注意が必要です。そこで今回はアブラムシがどういった虫なのかをご紹介し、賢く予防・対策する方法についてご紹介していきます。

生まれた時には既にお腹に子供がいる!驚異の繁殖力

畑の害虫は数多くありますが、その中でもアブラムシは特に繁殖力の強い虫です。暖かい時期や地域ではメスだけでも子供を産むことができ、成長速度を早めるためにお腹の中で卵を孵化させ、なんと生まれた時には既にそのお腹にはまたその子供を宿しているというから驚きです。そして生まれて10日で成虫になり、そのあとは毎日数頭ずつ子供を産み、30〜40日の寿命が終わる頃にはその数が1万倍にもなると言われています。

羽のあるアブラムシ

もう一つアブラムシならではの特徴があります。アブラムシは最初は羽のない子供を産むのですが、数が増えて来て、住む場所が狭くなってくると、なんと羽の生えた子供を生むようになります。そして新たな住処を求めて飛んでいき、またそこで繁殖するのです。

他の生物と協力して生き残る。アブラムシの賢い生き残り戦略

アリはアブラムシの用心棒

アブラムシは繁殖力がすごい分、それを餌とする天敵も数多くいます。例えばテントウムシやヒラタアブの幼虫などが有名です。そんな天敵から身を守るため、ガードマンとしてアリを雇っています。アリにとっての報酬は、アブラムシがお尻から出す甘い露です。この「甘露」がアリの大好物で、これをもらう代わりにアリが外敵を追い払う役目をしているのです。

ブフネラとアブラムシの共生関係

またアブラムシと共生関係を築いている生き物としてブフネラという微生物がいます。このブフネラはアブラムシのお腹の中にいて、アブラムシの吸った師管液(※1)やアミノ酸をもらって生きています。その代わりアブラムシが自分では作れない必須アミノ酸を作っていて、お互いに生きていく上で欠かせないパートナーとなっています。

※1 植物の葉で光合成によって作られた養分。

アブラムシは何を食べる?どんな場所が好き?

アブラムシはセミのように植物に口針を刺して、師管に流れている栄養(師管液)を吸って生きています。特に柔らかくてアミノ酸の濃度も高い、成長点の部分や老化し始めた下葉の部分が特に好きです。またコマツナやダイコンのようなアブラナ科、ナスやピーマンなどのナス科、ソラマメのようなマメ科の野菜が特に好きなようで、よく見られます。野菜だけでなくナズナやホトケノザのようなアブラナ科雑草、カラスノエンドウなどのマメ科雑草にもよくつきます。

アブラムシは基本的に高温で乾燥した環境を好むと言われていて、春ごろから数を増やしていきます。はっきりとした原因はわかりませんが、雨には弱く梅雨ごろになると数を減らします。逆に雨が少ない年は大量発生することがあります。真夏になり気温が高くなりすぎると、共生しているブフネラが熱に弱いため、数は減っていきます。そして気温の落ち着く秋頃にまた増えやすくなります。

厄介なアブラムシの被害

モザイクウイルスにかかったオクラ

アブラムシは野菜の樹液養分を吸って野菜の生育を阻害することがありますが、厄介なのはそれ以外にも害をもたらすことです。

ウイルスの感染

アブラムシが野菜に口針を刺す時に、様々な野菜の病源となるモザイクウイルスを運んでくることがあります。ウイルスが原因による病気は農薬でも治らないため、一度発生したらそれが広がらないように引っこ抜くなどの対策しかありません。

すす病

アブラムシの出す甘い露で葉がベトベトになるとそこで黒いすすのようなカビが増殖します。これが広がると野菜は光合成がしにくくなってしまいます。

アブラムシの弱点をついて予防・対策をしよう

アブラムシは農薬で対処することもできますが、家庭菜園においてはオススメしていません。なぜなら、アブラムシは繁殖力がものすごいため、同じ農薬ばかりしようしているとすぐに抵抗性を獲得して、効き目がなくなってしまうためです。
また農薬によってその天敵までいなくなってしまい、時間が経つと逆に数が増えてしまうという悪循環を生むことも。初心者が中途半端に農薬での対策をしてしまうとこういう事態にもなることも多く、農家のように商品として完璧な状態を目指す必要はないと思いますので、ここでは農薬以外での簡単にできる対策をご紹介していきます。

対策① 黄色バケツトラップ

アブラムシに限ったことではありませんが、なぜか黄色がとても好きなようです。植物の花の色も黄色が多いので、そのためかもしれません。それを利用した黄色バケツトラップという方法があります。黄色いバケツに水、はちみつ、ヨーグルトなどを入れておびき寄せ捕まえたり、さらに油も入れることで油の膜をはり窒息させるなどします。油は揚げ物などで一度使った油の方が油膜を張りやすいのでオススメです。

★黄色バケツトラップの材料
(バケツ4〜6lのものに対しての分量)
○水を3分の1程度
○ヨーグルトまたお酢、乳酸菌飲料などを大さじ2〜3杯程度
○食用油 小さじ1杯程度

対策② 気門を塞いで窒息

足の付け根に呼吸する穴があり、そこが塞がれると窒息すると言われています。そのため牛乳や片栗粉、水あめなどの粘りのあるものを水に溶かし、スプレーで散布することで退治することができます。ただしこれらのものを散布することで、カビが発生する可能性も高くなりますので、使いすぎには注意が必要です。また単純に水がかかることを嫌うので、乾燥の強い時期は散水することで対策することもあります。

対策③ 天敵の利用

テントウムシは1日で50〜100匹ものアブラムシを食べる

アブラムシにはテントウムシ、寄生蜂、クサカゲロウ、ヒラタアブなどの数多くの天敵が存在しますので、これらの虫を利用してアブラムシが増えない環境にすることができます。テントウムシを捕まえてきて、アブラムシの近くに放したり、天敵が好んで住処とするソルゴーという植物を野菜の近くに植えることで対策するなどの方法があります。

ソルゴーにはアブラムシの天敵が好んで住む

アブラムシが運んでくるウイルスの対策としても、ソルゴーなどのイネ科の植物を植えることはおすすめです。ウイルスにかからないイネ科の植物を野菜の周囲に植えて壁を作ることで、そこにウイルスが置き去られ、野菜にはうつりにくくなります。

対策④ キラキラしたものを設置する

銀色のビニールマルチはアブラムシを寄せ付けない効果がある

アブラムシはなぜかキラキラしたものには近づかない習性があります。そのため銀色のビニールマルチやアルミホイルなどを野菜の根元に敷いたり、反射テープを張ることで対策する方法があります。

対策⑤ 防虫ネットを張る

物理的に野菜につかないようにあらかじめネットで覆う方法です。防虫ネットと呼ばれるものには大抵「銀糸」と呼ばれるキラキラする糸が縫いこまれていますので、これによってもアブラムシが近づかないように作られています。

対策⑥ チッソ過剰にならないような土づくり

チッソ分の多い堆肥や肥料を使うと、野菜の中のアミノ酸の濃度が高くなり、それがアブラムシ
を引き寄せると言われています。肥料や堆肥の使いすぎには注意しましょう。

対策⑦ 忌避剤を使う

虫を殺すのではなく、近づかないようにする資材を忌避剤と呼びます。よく使われるのが木酢液とニームオイルなどで、ホームセンターなどでも手に入ります。比較的安全なものではありますが濃度が高すぎると野菜を傷めますので、商品の説明書きなどをきちんと読んでからお使いください。

対策⑧ 捕殺する

手で捕まえたり、粘着テープでとる方法です。シンプルな方法ですが、数が少なければ効果的です。ただ全て取り尽くすと天敵までいなくなってしまう可能性があるので、そこまで神経質に排除しなくても大丈夫です。
ただ、そもそも天敵の住処がなさそうなベランダなどの環境では全て取ってしまった方が良い場合もあるでしょう。

対策⑨ 早めの間引き・剪定を行う

間引きや剪定が遅れ、風通しが悪くなったり、野菜に十分に栄養が行き渡らなくなって弱ると、アブラムシが来やすくなります。特に柔らかくて虫に食べられやすい生育初期に早めに間引きを行う必要があります。また、ある程度成長して黄色くなり役目を終えた下葉はアブラムシが来やすいので早めにとりましょう。

全滅させるのではなく、増えすぎないような対策を

アブラムシは全滅させようと躍起になればなるほど、逆にそれを超える繁殖力で対応してきます。アブラムシはその数が増えすぎなければそこまで厄介になることはありません、全滅させるのではなく、その数が増えすぎないようにするという程度の楽な気持ちで対応してみてください。
 
次の記事:畑の雑草図鑑〜チガヤ編〜【畑は小さな大自然vol.27】

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