日々の集中力がアップする食材は?
「炭水化物×食物繊維」で脳のエネルギーを長時間持続!
――受験勉強を効率よく行うためには、集中力が大きく関わってくると思います。ずばり、集中力がアップする食材はあるのでしょうか?
“これだけ食べたらOK”というスーパーフードは、残念ながら存在しません。バランスの良い食事がベースにあり、そこに受験に必要な要素をプラスすることでパフォーマンスをアップさせるというのが、受験フードの基本的な考え方になります。
集中力をアップしたいのなら、まず必要になるのが“脳のエネルギー”。これが無くなってしまうと、脳がガソリン切れ状態になって、うまく頭が回らなくなります。その脳のガソリンになってくれるのが「炭水化物」です。脳をしっかり働かせるためには、炭水化物が必要不可欠。試験当日に朝食抜きは絶対にNGです。
――炭水化物にもいろいろな種類がありますが、受験生におすすめの炭水化物はあるのでしょうか?
集中力を持続させるためのカギは血糖値の供給です。限定してこれというものはないですが、血糖値を安定供給するには、食物繊維が豊富な玄米や蕎麦などの茶色い炭水化物を摂るといいでしょう。ただし、茶色い炭水化物は消化がやや悪いという特徴を持っています。胃腸に負担をかけたくない時は、白い炭水化物(白米・うどん・もち・食パンなど)を選び、他の料理や食材で食物繊維をプラスするようにしてみましょう。炭水化物は、食物繊維と一緒に摂ることで、血糖値が緩やかに上昇・下降するようになります。血糖値がじわじわ上がるということは、ガソリンをゆっくり吸収して、ゆっくり使い終えることができる。つまり、集中力を長時間持続させることができますよ。
――食物繊維には、脳へのガソリンを安定供給させる効果があるんですね。
そうですね。なので、茶色い炭水化物にこだわらなくても“炭水化物+食物繊維”の組み合わせを意識してもらうといいと思います。食物繊維が豊富な食材というと、野菜全般やキノコ類。特に色の濃い緑黄食野菜がいいですね。
効率よくエネルギー変換するための食材とは?
――脳を働かせるには炭水化物が必要ということですが、その栄養素を効果的に摂りいれる方法はあるのでしょうか?
先ほど炭水化物のお話をしましたが、実は炭水化物だけでは体の中で効率よくエネルギーになりません。そこで重要になってくる要素が“ビタミンB1”。炭水化物をエネルギーに変えるには、このビタミンB1の力が必要なんです。
ビタミンB1の王様は豚肉。ほかには、鶏肉や牛肉の肉類や魚類にも含まれています。お豆腐や豆類にはビタミンB1に限らずビタミン・ミネラルがバランスよく入っているのでおすすめですよ。
――集中力アップ&持続させるには、炭水化物、食物繊維、ビタミンB1の組み合わせが重要なんですね。ほかにも必要な要素はありますか?
脳の働きを助けるという点でいうと、体中に酸素を運搬するのにかかわりのある“鉄分”も摂り入れたいところ。鉄分が不足していると、脳にも酸素がいきわたらず、脳が酸欠状態になったり貧血のリスクが高まります。そのため、鉄不足が続くと勉強や日常生活にも支障が出てしまいます。鉄分が多い食材は、レバーや赤身の肉、赤身の魚、あさり(水煮缶がおすすめ)海藻、青菜などが挙げられます。
そしてもうひとつ意識して摂りたいのが、青魚などに入っている“オメガ3系脂肪酸”。脳の大部分は脂質で構成されていることもあり、質のいい油を摂ることも大切です。このオメガ3系脂肪酸は、記憶力や判断力など脳の健康を維持するためにも欠かせない栄養素です。サバやイワシなどの青魚に豊富に含まれ、えごま油、亜麻仁油にも含まれます。青魚は缶詰を利用するのもおすすめです。
ただ、このオメガ3系脂肪酸は酸化しやすいという弱点がありますので、ビタミンA・C・Eなどの抗酸化作用のある栄養素と一緒に摂るのがベターです。緑黄色野菜や果物、ナッツ類に含まれますので、これらと合わせて食べるのがおすすめですよ。
栄養素に加え“消化の良い食べ方”も意識して
試験直前に意識したい食べ方
――今から来年に向けての勉強期間中と試験当日では、必要となる栄養素も違うのでしょうか?
基本的には変わりません。ですが、試験前に意識したいのが、コンディションを崩さないための食べ方。試験当日はもちろん、試験の3日ほど前からは、食事のバランスも整えながら、コンディションを整えることに重点を置いていきましょう。
例えば、試験当日に油たっぷりの食事や消化に悪いものを食べて、いつまでも胃に食べ物が残っていると、消化のために胃が忙しく動き続けなくてはならないため、胃で血液が使われてしまい、本来試験でフル回転させたい頭に血液を効率よく届けられない恐れが出てきます。“ゲン担ぎでとんかつを”とよく言われていますが、試験直前はあまりおすすめできません。
試験当日をベストコンディションで迎えるには、胃腸に負担をかけないように、消化の良さも意識して食事をしてみましょう。
――胃腸に負担がかからない、消化の良い食べ方とは?
例えば野菜の場合。普段の勉強期間中は胃腸の負担や、消化の良さについてそこまでストイックに考えなくても大丈夫なので生野菜でも問題ありません。しかし、試験3日前くらいからは、胃腸への負担や消化の良さを考え、同じ野菜でも加熱したり、普段よりも柔らかく煮たり、小さくカットするなどの工夫をしてみましょう。また、豚肉を食べたいなら、脂たっぷりのとんかつではなく、煮豚などを選ぶとよいですね。魚であれば、生の刺身ではなく煮魚にするなど、消化がよくなる食べ方を心がけてみてください。
あとは、日本の受験シーズンは寒い時期にあたるので、消化も良くて体も温めてくれるスープやおじやなどもおすすめです。
――具体的におすすめなメニューはありますか?
例えば、試験当日の朝ごはんの場合。先ほども話したように白米などの炭水化
物だけではなく、食物繊維を含むニンジンと小松菜、ビタミンB群やミネラルをバランスよく含む納豆をのせた「3色丼」などもおすすめ。1皿の中に、炭水化物、食物繊維、ビタミンB群やミネラルを合わせることで、脳へのガソリンを安定供給できるようになり、集中力アップにつながる効果が期待できます。
さらに、体を温めながら脳の健康のための栄養素である、オメガ3系脂肪酸や鉄が補給できる、サバ缶やアサリの水煮缶を使ったスープ類もあると、栄養バランスも増し勉強に必要な栄養素をしっかりとることができます。
私が監修している「POWER EATS」というサイトでは、子どもの受験という切り口でレシピを紹介しているので、そちらも参考にしてみてくださいね。
普段はどんな食べ方をするのが良い?
――試験間近は消化がいいものが大切なんですね。それ以前の勉強期間中に気を付けたい食べ方はあるのでしょうか?
これから来年の試験にむけての勉強期間中は、胃腸への負担や消化の良さなどの食べ方はそこまで意識しなくてもOK。まずはお子さんの好きな食材を取り入れながら、必要な栄養素を不足なく補給していくことが大切です。いくら栄養がたっぷり詰まっていて勉強のためだからと言っても、嫌いなものを無理やり食べさせてしまったら食べる楽しみが半減してしまいます。食事は楽しむことが大前提、かつ勉強期間中のリラックスできる貴重な時間でもありますので、あまりストイックになりすぎず、食事を楽しむことも忘れないでくださいね。
――たまにはコンビニを利用することもあると思いますが、その際の注意点はあるのでしょうか?
コンビニを利用するときは、ついつい単品で買ってしまいがちですが、できるだけ色々な食材が入っている商品や組み合わせを考えてみましょう。
例えばおにぎりだと、具なしの塩おにぎりよりも、鶏肉やひじきが入っている炊き込みご飯のおにぎりを選ぶことで、摂れる食材を増やすことができます。パンであれば卵やレタス、ハムなどが入ったサンドイッチを選ぶことで色々な具材を食べることができ、結果的に摂取できる栄養素を増やすことに繋がります。手に取った商品には何が入っているのかを少し意識しながら買い物をしてみることをおすすめします。
受験フードマイスターとは?
頑張る受験生を食の知識と料理でサポート!
受験勉強を毎日コツコツ頑張るのと同じで、食事も日ごろから学習効果が高まるような栄養素をしっかりとることが大切。試験直前や当日だけ食事に気をつけても、受験生のパフォーマンスが最大限になるとは限りません。日頃からバランスのいい食事を取ることで、毎日の勉強が定着する。受験に向けてじっくりとコンディションを整えていく。これが大切です。
そのための必要な栄養素や食事のノウハウ、レシピなどを教えてくれるのが、「受験フードマイスター養成講座」。受講スタイルは、築地にある会場で勉強する「通学制」と、自分のペースで学習できる「通信制」の2つからセレクト。通学の場合は1日の受講ののち、修了課題を提出。次は2019年3月18日(月)に築地会場で講座があります。
これから受験を迎えるお子さんのためにも、今の時期から栄養たっぷりの食事でサポートしてあげてくださいね!
お話を伺った方
◆椎橋聡子(しいばし・さとこ)さん◆
管理栄養士 受験フードマイスター養成講座講師 株式会社Food Smile 代表 受験生、アスリート、ビジネスパーソン向けの食事セミナーは、トータル300本超え。“むずかしいことをわかりやすく、そして常にWOW!(驚き・感動・楽しさ)を与える”ことをモットーに、食の専門知識をひとりひとりのニーズに合わせて伝授する。パフォーマンスを発揮したい時に食事で失敗しないための食事術「パフォーマンス飯」が得意分野。 |