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猟師の山歩きや仕事を体験できる! 「ちびっ子猟師学校」とは

猟師の山歩きや仕事を体験できる! 「ちびっ子猟師学校」とは

2019年1月。猟師工房の原田祐介(はらだ・ゆうすけ)さんが、11~18歳を対象に野生動物の生態観察や、猟犬との山歩きといった体験を提供する「ちびっ子猟師学校」を開催しました。この取り組みの面白い所は、対象年齢であれば誰でも参加できるのではなく、ちびっ子とその保護者との面談が行われ、参加の可否が決まる点です。この日はどんな子達が、どんな体験をしたのでしょうか? 詳細をレポートします。

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なぜ若年層を対象に狩猟学校を? 原田さんの思いとは

「ちびっ子猟師学校」の会場である埼玉県飯能市の「猟師工房」を訪れたところ、3人のちびっ子達が集まっていました。

下段左がカイ君、中央がショウ君、右がソウ君

カイ君(11歳)は、原田さんが執筆した「これからはじめる狩猟入門」(ナツメ社)が愛読書だそう。お年玉でハンター用のアウトドア用ナイフを買うなど、狩猟に強い関心を寄せています。

ショウ君(11歳)は、大の考古学好き。縄文時代の貝塚からイノシシやシカの骨が出土したと知り、狩猟に興味を持ったのだそう。狩猟イベントに参加し、野生動物を解体した事もあるそうです。

ソウ君(8歳)は昆虫や野生動物に興味がある事から、「ぜひこのイベントに参加させたい!」と思ったお母さんに連れて来られたそう。参加対象年齢より若干若いので、体力に注意しながら参加します。

こんな個性的なちびっ子達に、原田さんが面談で聞いた事はただ一つ。「猟師の仕事は、日本の自然を守ることだってわかる?」この質問の裏には、原田さんのどんな思いがあるのでしょうか?

「私は獣を狩るだけではなく、自然を守るのが「猟師」の役割であると考えています。獣の問題は山の問題の一つですが、百年、二百年、三百年……という人間の命よりも長いスパンで考えていかないとなりません。そこで、猟師である私が若手を育てる。次に、成長した若手が人を育てる事で、猟師としての知識や思いを伝えていきたいと考えたことから、この取り組みを始めました」

新米ハンターでもある私。原田さんの思いをしっかり受け止めつつ、イベントを見守りたいと思います!

野生動物の生態を観察する為に山へ。ちびっこ達が見つけたのは?

原田さんからちびっ子達に本日の注意事項を説明した後、野生動物の生態観察に出かけます。ここで保護者とは夕方までお別れです。

「保護者が側にいると素を出せない子がいるんです。時には山で擦り傷をつくるかもしれませんし、野生動物の解体を見せるかもしれないので、保護者に理解いただけるよう事前面談をし、お子さんを預けてもらっています」と、原田さん。それでは早速山に入ってみましょう。

猟師工房から林道を15メートル程歩いたところで、原田さんが立ち止まりました。

「ここに道があるのがわかる? これは、野生動物が生活に利用している獣道。気を付けて見ると、あちこちにあるね。獣が増えすぎると、雨が降った時に獣道から土砂崩れを起こして、山が崩れてしまう。だから、自然を守る為に野生動物の数を調整していかなくてはいけないんだ」

そんな原田さんの説明に耳を傾けながら、ちびっ子達は「なんだかここ、周りと違う」と感じる部分を探していきます。

「食痕(しょくこん)」と呼ばれる、野生動物が植物の葉先を食べた痕跡

真ん中にシカの足跡があるのがわかるでしょうか?

ぬかるんだ水辺についたシカの足跡やフンなど、猟師工房がある国道299号線沿いからわずか200メートル足らずの場所に、野生動物が生息している証拠があちこちに見つかります。イノシシが餌となるミミズやサワガニを探す為に、林道を鼻で掘り返した跡もたくさん見つかりました。

ショウ君が手にしているのは、乾燥したシカのフン

「すごい! 山って楽しい!」と、野生動物の痕跡を次々に見つけるちびっ子達。山歩きを楽しむだけではなく、不法投棄されたペットボトルを拾ったりと、自然環境を守ろうとする姿勢が身についている事に驚かされました。

ジビエ料理でランチの後は、猟犬と山へ

イノシシの頭骨を愛でつつ、イノシシカレーをいただきます

2時間ほど山を歩いた後で猟師工房に戻り、ランチをいただきます。本日のメニューはイノシシカレーに、鹿ドッグ。ちびっ子達はあっという間に平らげ、猟師工房で販売されているシカの角や、狩猟グッズに興味を示していました。

午後からは猟犬を連れて山に入ります。獲物の追跡が得意な猟犬は、細身なのに筋骨隆々! 自宅で中型犬を飼っているというカイ君も、人間を引っ張るようにして山を歩く猟犬の力強さに驚いたようです。しばらく林道を歩かせていると、猟犬が突然ワンワン!と鳴き始めました。

「猟犬にはイノシシやシカの生肉を食べさせ、獣の匂いを覚えて追いかけるよう訓練するんだ。今のは、風上から流れてきた野生動物の匂いを捉えたから鳴き出したんだよ。狩猟をする時には犬の首にGPSをつけて放し、動物の後を追わせるんだ」と、原田さん。

この日は猟犬を放したりはしませんでしたが、猟犬は「巻き狩り」という猟法において、ハンターのいる所まで獣を追い立てる役割を担います。その猟犬を連れて山に入るのは、勢子(せこ)と呼ばれる人たちです。本日、ちびっ子達は勢子の気分を体験できたのではないでしょうか。

猟師工房に戻って休憩がてら、鹿骨のパーツを使ってキーホルダーを作り、本日のイベントは終了となりました。

「ちびっ子狩猟学校」に同行してみて、子供の興味を伸ばすには年長者が先回りをして子供にいろんな体験をさせ、興味の取捨選択をさせる必要があると感じました。3人に「次回は何をしたい?」と聞いたところ、カイ君は猟犬と山歩き。ソウ君はシカ角を使った工作。ショウ君は野生動物の毛皮をなめして、服にしたい!といった答えが返ってきました。ちびっ子達の興味の対象は三人三様ですが、ぜひとも立派な猟師になってほしいものです。
 

【取材協力】一般社団法人猟協(事業部「猟師工房」)

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