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統計からみる農産物輸出 安定の台湾・中国。増えるASEAN輸出

齋藤 祐介

ライター:

統計からみる農産物輸出 安定の台湾・中国。増えるASEAN輸出

2019年の今年、一つの大台である1兆円の達成を目標としている農林水産品・食品の輸出。前回は商品別に輸出額を解説してきましたが、今回は輸出される農林水産品・食品が一体どこに送られているか、統計をもとに解説していきたいと思います。減少する日本の人口を踏まえて、人口と経済の成長が著しい国への輸出を戦略的に進める必要があります。これから農産品の輸出を検討されている方への参考になれば幸いです。

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中国・台湾への輸出がメイン。ASEAN各国も成長

1兆円にも届こうとしている農林水産品・食料の輸出ですが、主にどの国へ輸出されているのでしょうか。下の図は、2018年の輸出額の大きい順に輸出先の国名を並べた表です。

香港、中国、台湾といった中華圏への輸出額は合計4000億円を超え、2018年の輸出総額9068億円の約半数がこれらの国への輸出だという事がわかります。3位に米国、5位には距離的に近い韓国が入っています。また、注目すべき点としては6位~9位にASEAN(アセアン:東南アジア諸国連合)各国が入っていることです。前年比ではベトナム15.9%、タイ11.4%、シンガポール8.6%、フィリピン15.2%と、10%前後の高い成長率をキープしています。シンガポール以外は人口と経済規模が急成長しており、これから韓国に追いつき、5位内に入り込んでくる可能性があります。

台湾で重要な位置を占めるリンゴ

前出の表には「主な輸出品目」の項目があり、各国とも主に水産品や加工品が記載されているのがわかります。しかし、台湾だけは輸出品の1位に果実であるリンゴがランクインしています。

リンゴの輸出は全体としても好調で、2018年は139.7億円と前年比27.6%の成長をしています(2018年速報値、農林水産省調べ)。しかし、台湾で輸出品1位となっている理由にはなにがあるのでしょうか。

そもそも台湾ではリンゴの生産がほとんど行われていないというのが一つの理由のようです。日本より南に位置し、緯度が低い台湾は気候が温暖です。冷涼な気候が必要なリンゴは、台湾では高地でしか生産できません。FAO(国連食糧農業機関)が運営する食料・農林水産業関連のオンライン統計データベースFAOSTATによると、2017年の作付面積は200ヘクタールと記載されており、非常に小さい事がわかります。

また、台湾がリンゴを輸入する相手国としては他にも米国、チリなどがありますが、長距離輸送になるため皮にワックスをつけており、消費者に敬遠されているようです。

もともと果物を贈答用に渡す文化もあることから、国内生産が少ないため珍しく、品質も高い日本産のリンゴは贈答品として人気なのかもしれません。

急成長するASEAN市場

ASEANとは東南アジア諸国連合の総称で、現在加盟している10カ国(タイ、インドネシア、シンガポール、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス、カンボジア)から成ります。

このASEAN地域は急激な人口増加と経済成長が予測されるほか、日本との距離が近いことから、将来の貿易上、非常に重要な地域となることが見込まれます。この記事でも触れたように、日本からの農林水産品・食品の輸出額でも、年間成長率10~15%の国もあり、次第に大きな割合を占めてきています。

そのため、ASEAN諸国の急拡大する市場、特に嗜好(しこう)品を買うようになってきた中間層の市場成長に目をつけ、日本の農産品のASEAN諸国への輸出に力をいれる企業が増えてきました。

また、昨年末より進んでいる環太平洋パートナーシップ協定(TPP)による関税引き下げも輸出への追い風となりそうです。ASEAN加盟国の中では、シンガポール、ベトナムは加入済み、マレーシア、ブルネイが加入する事になっており、これらの国への輸出は今後伸びることが予想されます。

人口の減少が予測される日本。経済発展が見込まれる海外への輸出は、国レベルでも、企業レベル、個人レベルでも考えていく必要があります。統計データから大きなトレンドをつかむことで、継続的な輸出拡大が進むとよいですね。

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