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統計からみる農産物輸出 見えてきた1兆円輸出

齋藤 祐介

ライター:

統計からみる農産物輸出 見えてきた1兆円輸出

人口減少と高齢化によって食自体の消費が小さくなっている日本。食全体の市場規模の縮小が見込まれるなか、農林水産品・食品の輸出強化が国策として掲げられています。2019年までに輸出額1兆円という目標が設定されており、現在、目標達成にかなり近づいています。本記事では、1兆円目標が生まれた背景を振り返ると同時に、実際の統計から日本は今どの農林水産品を、どのくらい、どこに輸出しているのか見ていきたいと思います。

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農林水産省が目指す輸出額1兆円

農林水産省は、2019年までに農林水産品・食品の輸出額を1兆円にする目標を設定しています。

この目標は2013年に、安倍政権の「3本の矢」の「成長戦略」のなかで、「攻めの農林水産業」の目標の一つとして設定されました。当初は2020年を目標年としていましたが、農林水産物・食料の輸出額は2012年に約4500億円であったので、1兆円というのは当時の2倍の規模になるという、攻めた目標設定でした。

設定当初の、2020年を目標とした戦略イメージ図
出典:首相官邸ホームページ

当時はTPPが高い関心事項で、貿易自由化が進むことでコメ等の保護されていた農産品が深刻なダメージを受ける事が懸念されていました。貿易自由化のネガティブな面だけではなく、ポジティブな面を示すべくこのように高い目標が設定されたのかもしれません。

その後の輸出の伸びを受けて、2016年には目標年が2019年へと前倒しされましたが、目標設定から5年以上たった2019年2月現在、どこまで輸出が拡大されたのでしょうか。農林水産省ホームページに発表されている速報値(2019年3月1日時点)によると、昨年2018年には輸出額は9068億円(前年比12.4%増)となっています。かなり順調に輸出が拡大しており、2019年に1兆円の目標を達成する可能性が出てきています。

1兆円が見えてきた輸出額ですが、実際にどのような品目が輸出されているのでしょうか。

野菜や果実の輸出額は少ないのか

下の図は2018年の輸出額9068億円に占める割合をカテゴリ別に表示したものになります。

加工食品が34%、水産物・水産調製品が合計33%と大きく占め、野菜・果実等、穀物等(赤い部位)はそれぞれ5%前後存在している程度といった形になります。このように並べてみると、輸出総額の中では、野菜や果実、穀物といった農作物が占める割合は限定的だとわかります。

また加工食品の原材料は輸入品も多く、1兆円目標を達成しても農業への影響は小さいのではないかという声も上がっています。しかし、輸入額の増加率を見ると、また違った見方ができます。

下の図は、カテゴリ別に2012年と2018年の輸出額を比較したものです。

野菜・果実等は、他のカテゴリに比べても増加率が高く3倍以上もの成長をしているのがわかります。金額になおすと423億円で、3兆円前後の日本の野菜・果実の市場全体に対してはまだ少量でありますが、確実に輸出を拡大していることがわかります。

輸出で人気の果実は「リンゴ」

では、野菜・果実等の詳しい内容を見ていきましょう。輸出額が大きい作物を並べたのが下記の図です。

野菜・果実等の輸出額423億円中、3割を占めるのが140億円の輸出額をもつリンゴです。その次に30億円前後でブドウ、イチゴが続きます。果物の人気が高いと思われたかもしれませんが、イチゴ等に比べてリンゴがここまで輸出されているのは意外だったのではないでしょうか。

輸出リンゴは、主に中国や台湾で贈答品として人気が高いそうです。ブドウやイチゴなどに比べて傷みづらく、輸出に適しているのかもしれません。

このような市場のなかでリンゴ中心に果物の輸出を手がけるベンチャー企業も現れてきました。2016年創業の株式会社日本農業はリンゴ輸出数量日本一を目指して、アジア各国への輸出事業を行う企業です。台湾に加えて、タイやインドネシアといった新興国にも駐在員を配置して、現地でのリンゴの販売を行っているようです。

人口減少のなか、海外への農産物輸出は注目されてきています。ニュースでさまざまな事例が特集され、その中でも継続的に成果を生み出したもの、小さく一度きりのトライアルに終わってしまったものがありました。1兆円が見えてきたタイミングで、統計を見ながら全体を俯瞰(ふかん)してみると、見えてくる戦略があるかもしれません。

次の記事では国別の輸出状況を見ていきたいと思います。

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