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米や牛肉は期待大! 日本の農家が考える海外輸出・海外展開

米や牛肉は期待大! 日本の農家が考える海外輸出・海外展開

たとえば、米の1人あたりの消費量は年々減少傾向にあり、過去50年間で約半分程度まで減ってきています(※1)。さらに人口減少も進んでいく社会背景を受けて、農産物の新しい市場として、海外に目を向けはじめている方が少なくありません。今回は、農業経営における海外輸出や海外展開の実態について、日本政策金融公庫の「2013年度上半期農業景況調査」の結果から紹介しましょう。

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海外輸出を行っているのは2.7%

まず農産物の輸出を行っている人は、どの程度いるのでしょうか。農産物の輸出状況について、担い手農業者(日本政策金融公庫のスーパーL資金及び農業改良資金の利用者)に聞いてみると、「農産物の輸出を計画中」は1.0%、「輸出に取組中」はわずか1.7%にとどまりました。

農産物輸出の取り組み状況(全国平均)

ただし、「農産物の輸出について関心がある」と答えた人は32.9%と全体の約3割を占め、まだ取り組みは行っていないものの、将来の輸出の可能性を探る層に一定の厚さがあることが明らかとなりました。

輸出を実施・計画しているのは米・肉用牛・果樹、関東・九州が積極的

では、海外輸出に高い関心を寄せる人に、地域や業種で特徴はあるのでしょうか。
先ほどの質問で「海外輸出を実施中」または「計画中」と答えた人の、地域と業種(営農類型)を詳しく見てみましょう。

輸出に「取組中・計画中」と答えた人の内訳

地域別では、関東(21.8%)と九州(19.6%)での関心が高く、営農類型別では稲作(17.9%)や果樹(12.8%)、肉用牛(12.8%)の関心が高いことが目立ちました。

輸出に「関心がある」と答えた人の内訳

海外輸出に「まだ計画はしていないが、関心がある」と答えた人について、同様に詳しく見た結果では、東北(19.7%)、北海道(19.6%)が多く、次いで九州(18.2%)、関東(18.0%)でした。営農類型別では、稲作が33.0%と突出して多く、施設野菜(9.8%)がそれに次ぐ結果になりました。

また海外輸出について地域別に見てみると、特に九州地方が他の地域よりも積極的に検討していて、営農類型としては稲作、果樹、施設野菜、肉用牛における関心が高いことがわかります。

海外での生産・加工・販売への関心は2割

次に、海外展開についてはどうでしょうか。海外現地で生産や加工を行ったり、販売したりする海外展開は、人件費を抑えながら日本のブランドを海外に広められることなどがメリットとして考えられます。

海外展開(現地生産・加工・販売)の取組・計画状況について

海外生産や加工、販売について「取組中・計画中」と答えた人は、全体のわずか1%前後と低く、まだまだ海外展開については一般的ではない実態が浮き彫りとなりました。しかし、「海外展開に関心がある」と答えた人は21.5%と、決して少ない数値ではないでしょう。

海外展開に関する取組について地域ごとの回答比率

海外展開に「取組中・計画中」または「関心がある」と答えた人について、地域別に見てみましょう。九州地方が「取組中・計画中」で5.6%、「関心がある」で24.4%と、全国でも最も高い回答比率となり、海外輸出と同様に、九州地方が他よりも海外展開へ関心が高いことがわかりました。

海外展開に関する取組について営農類型ごとの回答比率

営農類別では、「取組中・計画中」と「関心がある」の両方で全国平均を上回っていたのは、茶、果樹、きのこ、肉用牛の4つでした。酪農、養豚、ブロイラーについては、どちらも全国平均より低く、海外展開にはあまり向かないと考えられているのかもしれません。

海外輸出・展開の資金調達法は?

もしも海外輸出や海外展開を考えるのなら、考えなければならないのが資金です。資金調達はどのように行っているのでしょうか。

輸出や海外展開における必要資金の調達方法(複数回答)

海外輸出と展開について「取組中」または「計画中」と答えた人に、資金調達の方法を聞いたところ、最も多い回答は「国内金融機関」(海外輸出34.6%、海外展開39.0%)でした。2番目に多いのが、「自己資金」で海外輸出は31.8%、海外展開は34.8%となりました。

海外展開においては、「現地金融機関」や「現地パートナーとの共同出資」を挙げる回答も目立っています。

今回の海外輸出、海外展開で回答として多かったのが、米や肉用牛でした。どちらも質の良さが評価され、ブランド化しているものも多くあることから海外展開しやすいことも理由にあるのでしょう。国内需要の先細りが懸念されるなか、成長が期待される海外に新しい販路を見出していくことは自然の流れで、今後もさらに海外展開の流れが進んでいくのではないでしょうか。

2013年9月 日本政策金融公庫調べ

※1. 2015年3月 米をめぐる状況について

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