助成金利用の研修生 4年以内に35.4%が離農
農林水産省は、2023年に40代以下の農業従事者を40万人に拡大するという目標を達成するため、農業次世代人材投資事業などの施策を実施しています。40 代以下の新規就農者のうち新規参入者(※)と、新規雇用就農者は増加傾向にある一方で、就農後の定着率に課題があることが総務省の調査で分かりました。
(※)調査期日前1年間に土地や資金を独自に調達(相続・贈与等により親の農地を譲り受けた場合を除く)し、新たに農業経営を開始した経営の責任者及び共同経営者のこと。
総務省が全国18都道府県に調査をしたところ、2014年度に農の雇用事業による研修を受けた1,591人のうち、35.4%に当たる564人が離農していました。
離農理由トップは、理想と現実のギャップ
離農した研修生527人に調査をしたところ、離農理由で最も多かったのは「業務内容が合わない、想定と違っていた」(31.5%)というもの。次いで「労務管理不満(給与関係)」(19.7%)、「労務管理不満(勤務時間関係)」(13.4%)となっていました。
また、就農10年以内の新規参入者2,265人に就農後の農業所得を聞いたところ、「生計が成り立っていない」と答えた人が75.5%に上ることがわかりました。全国新規就農相談センターの調査によると、新規参入者の就農理由のトップは、「自ら経営の采配を振れるから」(52.3%)、「農業はやり方次第でもうかるから」(38.2%)といったもので、理想と現実のギャップを感じさせる結果でした。
研修内容の充実、離農理由の詳細把握を
総務省は調査結果から、①栽培方法だけではなく農業機械の取扱い方や農業経営に関するものなど、農業法人などが新規参入希望者向けの研修を充実させること、②支援の必要性が高い新規参入者に、都道府県普及指導センターなどが重点的に指導をすること、③離農理由を詳細に把握すること を通して、離農率を低下させるよう勧告しました。
③の離農理由の把握に関して、総務省の調査によると、18都道府県の平均離農率より低い離農率だった12都道府県農業会議では、研修を中止した研修生の離農経緯等を確認した206件のうち、詳細な離農経緯を把握できていないものは38件でした。
これに対して、離農率が平均よりも高い都道府県では、研修を中止した研修生の離農した経緯を確認した218件のうち、詳細な離農経緯を把握できていないものは94件(43.1%)でした。
このことから、離農率が低い都道府県では、研修生の離農経緯を詳細に把握できている傾向があるとしました。
【関連リンク】
農業労働力の確保に関する行政評価・監視-新規就農の促進対策を中心として- 結果に基づく勧告