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JA高知県女性部による子ども食堂が大盛況のワケとは?【農業と子ども食堂#2】

JA高知県女性部による子ども食堂が大盛況のワケとは?【農業と子ども食堂#2】

子どもたちの新たな居場所として注目が集まっている「子ども食堂」について、農業を通して見つめる全3回の連載企画。今回は、JA高知県女性部が運営している大篠(おおしの)子ども食堂が舞台。全国的にもJAを母体とした団体が子ども食堂を運営している例は珍しく、さらにこの食堂は毎回行列ができるほどの人気ぶり。JAの女性部だからこその強みを生かした子ども食堂の運営方法や、農業が子ども食堂にかかわることの意味について紹介します。

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「夏休み明けに子どもたちがやせている?」雑談からスタートした子ども食堂

大篠子ども食堂は毎回大盛況

大篠子ども食堂は、昨年(2018年)5月にJA高知県女性部南国市地区大篠支部が始めたもの。民生委員をしていたメンバーが「夏休み明けになると子どもたちがやせている」という話を雑談交じりにしたのがきっかけだったそうです。もともとさまざまな活動を女性部でしてきたこともあり、支部長の窪田理佳(くぼた・りか)さんは「これは私たちがやらんといかんのやないか?」と感じたといいます。女性部内外の人たちから、「ぜひやろう」、「やってほしい」という声が集まってきて、子ども食堂を始めることを決意しました。

JA高知県女性部南国市地区大篠支部の支部長、窪田さん

初めは何をすればいいかさえもわからない状態からスタート。食品を提供するため、食品衛生責任者の講習を受けに行って資格を取るなど、手続きの面での壁は高かったそうです。
また、約90人いる女性部は、最高齢が95歳と高齢化も進んでいて、人手を確保できるかどうか心配もあったと言います。「声を掛けると思ったよりもたくさんの部員が協力すると手をあげてくれました。さらに、食材なら持ってこられるという人もいて、心強かったですね」と、当時を振り返って窪田さんは話します。

寄付されたダイコン、女性部の部員が食材を持ち寄ることも多い

JA高知県土長(とちょう)地区大篠支所の2階を会場とし、場所の提供や光熱費をJAにお願いして準備を整え、2018年5月に大篠子ども食堂はそのスタートを切りました。

農業にツテがあるメンバーだからこその強みを生かす

窪田さんの畑、コメやオクラを育てている

JA高知県の女性部は農家の人だけでなく地域に住んでいる人も参加していますが、大篠支部は部員のうち約半数が現在農家世帯だそうです。自身も、コメやオクラなど少量多品種の農作物を栽培する農家で、JAやスーパーの直販コーナーで農作物を販売。子ども食堂に自身の畑でとれた野菜を寄付することもあります。
さらに横のつながりを大いに生かして、知り合いの農家に食材の提供をお願いしたり、面識がある別の支部の女性部の人から食材の寄付をもらったり、長年活動してきたコミュニティの力を感じることも多いそうです。

育苗用のハウスも

「子ども食堂のメニューは、できるだけ高知県産、地元の食材を使って作りたい。作っている人の顔が見える、そしてとれたてで新鮮な食材というのは自分にとっては大切なことなんです。ただ、夏に地元産のスイカが8玉も寄付されたときは驚きましたね(笑)」と語る窪田さん。農家だからこそ、食に妥協はできないという強い意志が見え隠れするとともに、その姿勢に賛同する仲間がたくさんいるということがうかがえます。「今これがあるんだけど」と、開催日の前には旬の農作物を持ってきてくれる人も多いのだそうです。

「夏はオクラがたくさんとれる」と窪田さん

ただし、農家ならではの悩みも。台風のような悪天候の場合は、農作物の寄付が偏ったり、量が減ってしまうこともあり、そういった時期には足りない食材を店舗で調達しなければならないこともあります。そうした場合には、高知県と大手スーパーが連携して子ども食堂に食材を寄付する取り組みや、精肉店の知り合いから肉を寄付してもらうなどの助けも得ているのだそうです。
さらに、今年3月からは、JA高知県土長地区からの農作物の寄付も始まりました。パプリカやピーマン、キャベツや小松菜、リーフレタス、ほうれん草などさまざまな農作物を寄付してもらうことになっていて、窪田さんも「ますますJAとの連携が強くなり、私たちも助かっています」と話していました。

JA女性部だからこその強みを生かして、必要とされる子ども食堂へ

道の駅の農家レストランでの調理経験があるメンバーもいる

大人300円、中高生100円、小学生以下は無料と、リーズナブルな料金にもかかわらず、地元産の食材を使ったさまざまなメニューが並んでいるとあって、月に1度の開催日には毎回約150人が食べにくるという大篠子ども食堂。そのメニューは毎回約15種類程度あり、なくなるとその都度新しいおかずを作り足しているのだそうです。もともと道の駅の農家レストランで調理をしていた部員や、大皿料理を作り慣れている部員が多く、長年いっしょに活動してきたメンバー同士の連携プレーは息がピッタリ。手際よく大量の食事を毎回作り上げています。

毎回15種類近くのメニューを用意する

メニューは、主食、主菜、汁物、野菜サラダに煮物、酢の物、炒め物、和え物、揚げ物にデザートなど、数多くかつバランスよく作ることを心がけていて、米は毎回7~8升たき、それをおむすびなどにしています。「ここに来たら野菜を食べてくれる、旬のものが食べられる」という親たちからの声も集まっていて、この野菜たっぷりのメニューが人気の秘訣と言えそうです。

右下の寒天は季節ごとのフルーツを入れた人気の定番メニュー

大篠子ども食堂を運営する女性たちの周りでは、農家同士の個人間の連携がしっかりとできていて、寄付や協力など、さまざまな形でこれまでのつながりを生かして、上手に子ども食堂を運営していることがわかります。みなさんが大切にしていることは「もらった食材はできる限り使い切ること」。ダイコンをたくさんもらったときは、干しダイコンにして1か月後の開催日に利用したのだそうです。どこからそうしたアイデアが出るのかたずねると、「なんとなくですねぇ(笑)」と答えた窪田さん。その姿には、女性部のみなさんの強い絆を感じました。

食事をとる子どもたち

大篠子ども食堂で提供される食事は、バイキング方式。食べ残しをなくすことを重視しているそうで、「子ども食堂ではバランスよく栄養をとるということよりも、食堂に足を運んで、そこで食べるということが大切なんです」と窪田さんは話します。
今後の展望については、「どこにでも身近なところに当たり前に子ども食堂があるようになってほしい。そのために自分たちは、一度やると決めたこの活動をしっかりと続けていきたいですね」と話していました。

農業を通して子ども食堂について考えるこの連載企画、次回は千葉県にある子ども食堂と、障害者の就職支援会社による食材の寄付の取り組みについて紹介します。
 

大篠子ども食堂
開催日:毎月第二土曜日
場所:JA高知県土長地区大篠支所2階
(住所:高知県南国市大埇甲1853-2)

写真提供:窪田理佳さん、JA高知県
 

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