糖度計とは?
果物や野菜の価値を決める大きな要因である「味」。しかし、果物も野菜も外見からは味は分かりません。そこで登場するのが糖度計です。
果物や野菜の味に大きく影響を与える成分の一つに、糖分が挙げられます。その糖分が食品などに含まれる割合を百分率(%)で表したものが糖度です。糖度計は、この糖度を測るための機械です。
ただし、「糖度」の値として広く採用されている「Brix(ブリックス)値」では、実は糖以外に水に溶け込んでいる物質も計測されます(後述の「屈折計」参照)。そのため、糖度は正確には「水に溶け込んでいる固形分の濃度」ということになります。しかし一般的に果物や野菜においては「糖度が高い方が糖分が多い」と言えることから、糖度が甘さの目安となっているのです。
また、厳密には糖度=甘さと単純に言えないので注意が必要です。果物に含まれる甘みの成分には、「果糖」「ブドウ糖」「ショ糖」などがあり、同じ量でもそれぞれにBrix値が異なるうえ、甘さの質も違います。さらに、クエン酸などの「酸」も糖度として計測されるため、糖分の量との比率によって感じる甘さは変わってくるでしょう。
糖度計の仕組みと原理
では、外から見ても分からない果物や野菜の糖度を、糖度計でどのように測るのでしょうか?
一つは、果物や野菜から試料とする汁を採り「屈折計」で測定する方法です。この方法では、必ず一つ以上の作物を無駄にすることになります。そこで新しく登場したのが光センサーで作物の外側から糖度を確認する「非破壊糖度計」です。作物を傷つけることなく糖度が測れるため、手間も無駄も省くことができます。
屈折計
作物を絞るなどして採った汁を測定用の“試料”とし、試料に溶け込んでいる固形物の濃度を計測します。水や空気の中をまっすぐ進む光の性質を利用し、液体の中の固形物が多いほど光の屈折率が大きくなるという原理をもとにしたものです。果実や野菜では固形物のほとんどが糖分であることから、計測値が糖度に近い値になります。この方法で測定した数値は、Brix値として表されます。
非破壊糖度計
果実や野菜の表面に近赤外線を当ててセンサーで計測します。糖が特定の波長の光を吸収しやすい性質を持つ、という原理を利用したものです。作物に傷をつけずに数秒で計測することができます。
糖度計の使い方
糖度計は種類によって使い方が異なります。
屈折計
計測面に試料となる液を1〜3滴垂らして計測します。アナログタイプは目盛りを読み、デジタルタイプはデジタル表示の数字を見ます。タイプによっては100℃までの試料が計測できるため、ジャムを煮詰める途中で糖度を測ることもできます。垂らした試料液は水洗いできるので、清潔さも保てます。
非破壊糖度計
果実や野菜の表面に計測面を当てたり、乗せたりするだけで計測できます。
糖度計のタイプ別おすすめポイント

アナログタイプの屈折計
糖度計は、用途や使う場面によっておすすめのものが変わってきます。また、一つ購入すれば何でも計測できるわけではなく、対象ごとに糖度計を用意しなければならない場合があります。計測対象に合わせたさまざまなモデルが発売されているので、購入の際には、何にどのように使うか、目的と予算などからよく検討しておくとよいでしょう。
アナログ屈折計(手持ちタイプ)
電池が不要で手軽に使えます。1~2滴の少ない試料液で測定できるため、水分の少ない作物にもおすすめ。価格も安いものが多いことから、学校などでもよく使われています。
デジタル屈折計
コンパクトサイズのものはポケット、ハンディ、ポータブルなどと呼ばれ、持ち運びやすくなっています。試料液は2〜3滴でOK。デジタルで表示してくれるため、数値が一目でわかります。
また、ペンタイプといって、試料液を垂らすのではなく液に浸したり、作物に直に挿して測ったりするものもあります。
非破壊糖度計
ハンディタイプの非破壊糖度計は、果実の表面に当てるだけで糖度が計測できます。試料液が不要で作物を傷つけないため、収穫前の作物をそのまま測ることもでき、出荷の際にはすべての個体を計測してそのまま出荷することも可能です。
出荷時期を決めたり、出荷物の品質を確認して販促に役立てたりと、さまざまな使い道が考えられる糖度計。
どれを買うべきか迷っているかたは、メーカーのレンタルや無料お試しシステムなどで試してみるのもいいかもしれませんね。
※ 本記事の内容は、2019年3月時点のものです。
監修:農研機構 果樹茶業研究部門 中村ゆり