大地とつながる古民家で、海と山を望む農的な暮らしを堪能

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大地とつながる古民家で、海と山を望む農的な暮らしを堪能

大地とつながる古民家で、海と山を望む農的な暮らしを堪能
最終更新日:2019年06月03日

千葉県南部のJR館山駅から車で20分ほど南へ下ると、有機農園に隣接する築100年の古民家「土の環(わ)」があります。ここを拠点に、「農のある暮らしとからだケア」をテーマにした体験を提案しているのが土屋裕明(つちや・やすあき)さん。「土の環」という名前には、大地とつながることを通じて、体や健康のことを伝えたいという思いが込もっています。東京のフィットネスクラブでトレーナーの仕事も続けながら農的な暮らしを営む土屋さんに、今のライフスタイルに至った経緯や今後のビジョンを伺いました。

農家の「研修生」として足がかりをつかむ

土屋さんご夫妻は自然とつながる暮らしを求めて2016年、念願の農地付き古民家を購入して、館山に移住しました。畑を開墾するかたわら、地元の大工さんのサポートを得て、長らく放置されていた古民家を見事に再生。生活基盤を整えながら、手作り麹(こうじ)を使ったみそづくりワークショップを開くなどして、思い描いていた暮らしの形を模索しています。

室内の調度品は、ほとんどが頂きもの。テーブルは廃品利用の手作り

学生時代から体を動かすのが好きだった土屋さんは、卒業と同時に都内のフィットネスクラブでトレーナーとして働き始めました。土屋さんが目指すのは、やみくもな筋力アップではなく、体を「整える」こと。バランスのいい体づくりを追求する過程で気づいたのが、「体の健康を考えると、自分の育った環境はとても恵まれていたんじゃないか」ということでした。実は、土屋さんは千葉県北部の農家のご出身。今もご両親は農業を営んでいます。

「実家で暮らしていたころは、農業を手伝っていたわけでもなく、その大切さなんて思ってもみませんでした。でも、結婚して子育てのことなどを考えると、都市的な生活を続けることに違和感を覚えるようになったんです」

そこで、本格的に移住を考え始めました。九州などの遠方も含め、夫婦であちこち見るうちに、候補地として急上昇したのが館山でした。決め手の一つになったのが、都内から高速バスで2時間弱というアクセスのよさです。

さらに背中を押したのは、南房総への移住をサポートするNPO法人「おせっ会」の存在。親身になって移住相談に乗ってくれたり、地域の人とつないでくれたりしたそうです。妻の有希子(あきこ)さんが農家レストランを営む南房総市の有機農家に「研修生」という形で受け入れてもらえることになったのも、「おせっ会」がつないだ縁でした。市があっせんする新規就農者向けの住宅に入居できることになり、2014年に待望の田舎暮らしの足がかりをつかみました。

柱の傷はそのままに。「古い家の味わいもいいかなと、真新しくリノベーションしないことにしたんです」

決して「スロー」ではない田舎暮らし。人の縁が何より大切

土屋さんは東京でトレーナーの仕事との二地域居住、有希子さんは南房総市での研修生活を続けながら、当初思い描いていたライフスタイルにふさわしい家探しが始まりました。田舎の住宅情報は、ほとんどが人づてです。不動産屋さんで効率的に探せるわけではありません。ここでも、NPOの縁で少しずつ生まれていたネットワークが役立ちました。土屋さんが家を探していることを知った「先輩移住者」が、いまの古民家の持ち主を紹介してくれたのです。

ようやく農地付きの古民家が手に入ることになりました。ただし、農地はだいぶ荒れているところもあり、すぐに耕作できる状態ではありませんでした。館山市で「農家」になるには5反(約50アール)の農地が必要。土屋さんが購入した家の畑だけでは足りませんでした。そこで土屋さんは、再び知人のつてを頼って、不足分を別の農家から借りることにしました。

「細かい苦労がなかったわけではありませんが、家や土地探しにしても、いつも人の縁に恵まれてきました。強いて苦労というなら、田舎はやることが山ほどあるという点でしょうか。『スローライフ』をイメージして移住すると、ギャップに驚くかもしれませんよ」

二地域居住の場合、たとえ交通の便がいいとしても、ある程度は移動にエネルギーを取られることを覚悟したほうがよさそうです。土屋さんも、当初は週3日は東京に出ていたのを、今は週2日に抑えるようにして、だいぶ心身に余裕が生まれたといいます。

夏野菜の準備も着々と。古民家の玄関を出た目の前が育苗エリアだ

農的な暮らしの「日常」を感じられる拠点に

5反もの農地を持つ土屋さんですが、「生産農家」になるつもりはありません。土屋さんが伝えたいのは、農や土のある環境が体にいいということ。それを実感してもらうために、日ごろ忙しい生活をしている人に、少しでも農的な暮らしに触れる時間を提供できたら、と語ります。

いま着々と進めているのが、ブルーベリー狩り体験農園の準備。移住前に知人から譲り受け、挿し木でこつこつ増やしてきた苗木をようやく畑に定植し、成長を見守っているところです。農地は複数の場所に点々とわかれていることもあり、場所によって地質がまったく違うそうです。そこで、ブルーベリーを含め、さまざまな野菜の苗を植え、どの区画にどんな作物が合うのか「実験」している最中だといいます。

ブルーベリー狩り体験農園の実現に向け、苗木の手入れに余念がない

こうした農的な暮らしに憧れる人に、ファーストステップとして土屋さんが勧めるのは、まず気になった地域に何度も足を運んでみること。土屋さんの移住が比較的スムーズだったのも、しっかり「助走期間」を設けていたためです。移住前から2年間ほど、月に1度は通い、その間にNPOなどを介して少しずつ人のつながりをつくっていました。実際に移住してからも、そのネットワークにずいぶん助けられたといいます。

「いま言われているような『二地域居住』というのは、どちらか、あるいは両方に住まいを構えるイメージだと思いますが、そこにとらわれなくていいんじゃないでしょうか。ときたま実家に帰るような気分で、まずはその地域に関わってみるといいですよ」(土屋さん)

南房総に興味のある人がいれば、ぜひ「土の環」を拠点にしてほしいと土屋さんは願っています。都内から日帰りも十分に可能な地域とはいえ、泊まりがけで「土の環」を体験できるよう、民泊の申請も進めているところです。

「休日のレジャーには、『非日常』の楽しさや癒やしを求めることが多いかもしれません。でも『土の環』で感じてほしいのは、海や山もある館山という地域の『日常』です。それもあって、食事の提供はしないことにしました。畑から旬の野菜を一緒に収穫して、一緒に料理をして一緒に食べる。そんなふうに時間を共有しながら、体や健康のことを感じてもらえたらいいのかなと思っています」

土の環

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理想の農業を追い求めて、地元や新しい土地へ移住したいと考える人は多いのではないでしょうか。新規就農希望者が移住先で初めにやるべきことやご近所付き合いのコツなど、実際に移住して輝く人々の生き様からヒントを集めました。

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