目に見えない排水がもたらす農耕地への変化。暗渠(あんきょ)排水で、農業を陰から支える

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目に見えない排水がもたらす農耕地への変化。暗渠(あんきょ)排水で、農業を陰から支える

目に見えない排水がもたらす農耕地への変化。暗渠(あんきょ)排水で、農業を陰から支える
最終更新日:2019年06月13日

北海道の中心都市、札幌市。その東隣の江別市に、今回紹介する『株式会社ナラ工業』があります。ナラ工業は今、農地の給排水能力を向上させ、土壌を改善する『暗渠排水』という技術で注目を集めています。そもそも農業における『暗渠排水』とはどのような技術なのか。なぜナラ工業が注目されているのか。同社の社長である奈良幸則さんにお話を伺いました。

泥炭地が多い農地は、暗渠排水が欠かせない

「暗渠排水は、ひとことで言うと『水はけが悪かったり、地下水の水位が高くてぬかるみがちな農地に土管などを埋めて水を集め、地下の水位を適切な高さに保ちながら、水はけを良くする』という技術のことです」。普段私たちはあまり意識しませんが、農耕地の下には、見えない水管が走っているとういうことです。
もともと泥炭地が多い北海道で暗渠排水の技術は欠かせないものであり、開拓使が来道した明治初期に導入されて以降、現在に至るまで、北海道の開拓は暗渠排水と共にあったと言って良いそう。

日本で初めての暗渠工事は、北海道江別市といわれている

「1877(明治10)年、二期生として札幌農学校(現在の北海道大学)に入学した新渡戸稲造が、これから札幌の人口が増えていく時期に『泥炭の克服なくして北海道の開拓なし』と言い、泥炭の研究をしていました。同じ時期、1879(明治12)年ころに札幌農学校のウイリアム・ブルックスが土管製造機を輸入し、1880(明治13)年に、ここ江別で泥炭地に土管を埋めて暗渠排水の施工をした。これが日本で初めての暗渠排水工事とされています」。

奈良社長

『暗渠排水』という技術を知らない方や若い世代にもぜひ知って欲しい、と熱心に説明してくれる社長

札幌や江別が位置する石狩川下流域などには広く泥炭地が広がり、暗渠排水による農地の改良工事が、現在もなお各地で行われています。

代々受け継ぐ、トレンチャー技術

この工事で、ナラ工業の施工法、技術が注目を集めており、その理由のひとつが、施工を行う重機や溝を掘るアタッチメントを、自社で開発していることだといいます。「弊社で使用している重機は、一般的に『トレンチャー』と呼ばれるもので、言ってみれば『溝を掘るための機械』です。トレンチャーは、これも国内では北海道で初めて、我々の親戚が作った機械なのですが、当時のカタログの表紙には『これであなたの寿命を短くせずに済みます』と書かれている(笑)。つまり農地に人力で溝を掘るという作業が、いかに重労働であったか、ということですよね。私どもの強みは、このトレンチャー自体を自社で作っているほか、溝を掘る際に取り付けるアタッチメントも自社で用意し、その現場ごと、農地ごとに細かく使い分けていることです」。

トレンチャー

トレンチャーを使った施工の様子。自社で開発をしている企業は、全国を見回しても数少ない

農地へのダメージを最小限にする暗渠とは

農地に与えるダメージを最小限にとどめ、コストを削減するための創意工夫も、ナラ工業の暗渠排水の大きな特長。そのひとつが、掘る溝の幅をできるだけ狭くする、というものです。 「平成14年に行われた中央農業試験場のテストで、暗渠排水を行う際、掘削の断面が大きくても小さくても24時間後に流れ出る水の量は変わらない、という結果が出ました」。であれば、掘削する溝は細いほうがダメージも小さいうえに工期も短くて済み、コスト的にも良いのではないかと考えた、と奈良社長は言います。

説明の様子

聞きなれない単語が続く中、タブレット端末で画像を見ながら説明してくれました

数cm単位でのアタッチメント開発

「平成19年に幅7cmの溝を掘るトレンチャーとアタッチメントを開発しました。それまでは、直径6cmの土管を埋めるために約15cmの幅で溝を掘っていたんですね。そこに、直径6cmの土管のほか、水を集めるために砕石とか火山礫など、疎水材と呼ばれる材料を入れるわけですが、掘る溝の幅を最小に抑えれば、入れる疎水材の量も削減できる。結局、この7cm幅のアタッチメントはその後あまり使うことはなかったのですが、それがキッカケとなり、以後、10cm、12cmなど、農家さんの要望に合わせたトレンチャーを開発することになり、それが弊社の評価につながる結果となりました」。
暗渠の施工から機材開発までを一貫して行う企業は非常に稀な存在で、自治体からのリピート受注も多いという。

きめ細かい施工で、農家に伴走する

奈良社長2

暗渠を行った農耕地は、作物の生育もよくなる。育った農作物を社長自ら購入することも

暗渠排水の技術は、現在も『農業土木』の分野で議論されることがほとんどで、その技術論の多くは「いかに多くの水を短時間で排水するか」が課題とされているとのこと。しかし奈良社長は「そうではないのではないか」と疑問を呈します。

よい土壌をどう保つか、それが暗渠の役割

「暗渠排水の技術は、もちろんどれだけの水を出すか、も大事なのですが、いちばんの目的は、農家さんが求める良い土壌をいかに作るか、だと思うのです。肥料は、水や空気に触れ、酸素を取り込むことによって効くわけですから、行き着くところは『いかに土の中に空気を入れてやるか』。暗渠排水も、そのための手段にすぎません」。だから、暗渠排水を施工して終わり、ではなく、その後、農家が水はけの良くなった土をどう利用して、収量アップにつなげるか、良い土壌を保つ営農を続けていくかも重要、と奈良さんは言います。「私たちは、農家のために暗渠排水を施工するのであって、単に水はけを良くするために溝を掘って土管や疎水材を埋めているのではありません。ですから、これからも農家に寄り添い、キメ細かい対応ができるよう努力を続けていくつもりです」。施工後の変化にまで長く付き合い続けるのが、ナラ工業流だ。

農村風景と一体化できる企業を作りたい

ナラ工業のHPには『農地を彫刻する企業』という企業理念が掲げられています。「私はもともとランドスケープの仕事に携わっていたのですが、あるとき、イサムノグチさんの彫刻に出会い、北海道は農地も重要な風景のひとつだろう、であれば、我々の暗渠排水の技術も、農村風景を作っていると言えるではないかと考えましてね」と奈良社長。高校生を対象とした施工現場の見学を行うなど、一般的にはまだまだ低い暗渠排水技術の認知普及にも努めています。

北海道の風景

北海道でよくみられる農村風景。等間隔に並べられた土管は暗渠作業に用いるもの

以前はアパートの一室に事務所を抱えていたというナラ工業。「自分の子供たちが働く年齢になったときに、従業員自身が自慢したくなる事務所じゃないとだめだな思った」と奈良社長。現在の社屋である『鐵拓(かねひら)』は、そんな社長の思いから生まれた。地元企業のレンガや、風合いが時間と共に変わる鋼材を使い、自然と一体化するような建物に仕上げられている。竣工時が完成ではなく、時間の経過とともに変化し完成に近づくという建物は、暗渠後の農耕地と長く向き合う会社の精神にも通じる。北海道の基幹産業でもある農業を陰で支える大切な技術『暗渠排水』。ナラ工業はこれからも活躍し続けます。

奈良社長3

会社のメインホールにて


株式会社ナラ工業
<本社>
北海道江別市野幌代々木町13-2
TEL 011-384-5592
FAX 011-385-1231
<北陸事務所>
石川県鹿島郡中能登町金丸477
http://www.narakougyou.com/

※なお、株式会社ナラ工業は6月12日(水)に開催する『北海道スマート農業SUMMIT』に参加します。
ぜひお気軽にお立ち寄りください。

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