ワイヤーメッシュ(溶接金網)の正しい設置方法
イノシシもシカも優れた跳躍能力を有していますが、障害物を飛び越えることよりもくぐり抜けることを好む動物です。
大型の野生動物は着地時に足をけがしてしまうと十分に餌探しができず、命の危険にさらされるので、むやみに跳ぶことはありません。被害現場でもほとんどが柵の隙間(すきま)からの通り抜けや、柵の下部からのくぐり抜けによって農地に侵入します。
侵入防止柵を設置する際は、高さを気にするよりも地際の補強に力を入れてほしいと思っています。しかしながら、なかなかそれが徹底されません。
人目を盗んで柵をくぐり抜けた野生動物でも、人間に見つかってしまった場合は生命の危険を回避するため、けがのリスクもいとわず柵を飛び越えて逃げます。それを見た農家は「跳んで逃げた。侵入する時も跳んだに違いない」と勘違いしてしまいます。
繰り返しますが、野生動物の侵入防止において、柵の地際を固定することが重要です。
柵の高さはイノシシで80センチ以上、シカで150センチ以上あれば良いでしょう。イノシシやシカを対象とした場合、目合い(網目の寸法)は10センチ四方の正方形を選びましょう。長方形の目合いは破壊されやすくなります。
ワイヤーメッシュ同士のつなぎ目は、一マス重ねて固定します。
ワイヤーメッシュの地際はパイプを用いて固定するとくぐり抜けの侵入を防ぐことができます。
これらの方法で侵入を防ぐことができますが、それでも野生動物の跳躍が心配な方はワイヤーメッシュの上部30センチほどのところを外側へ20~30度折り曲げてやると、跳躍行動を制御できます。柵の内側をトタンや遮光ネットで中が見えにくいようにするとさらに効果が増します。
タヌキ、アナグマなどの侵入を防ぐためには7.5センチ以下の格子を選ぶ必要があります。10センチ目合いを使う場合はワイヤーメッシュとネットを組み合わせると良いでしょう。
電気柵設置のポイント
電気柵は効果の高い防護柵ですが、いくつかの約束事を守ったときに初めてその効果が発揮されます。
野生動物は口元や鼻先以外の体毛のある部位で電線に触れてもほとんどショックを感じません。また、イノシシやシカの鼻先に電線が触れるだけでも不十分です。電気柵の電気が動物の鼻先から体を通って足先にたどり着き、足から地面に流れていくことで初めて電気ショックが起きます。したがって、アース線の設置はとても重要です。
イノシシ対策の場合は支柱を2~3メートルおきに立て、地面から20センチ間隔で電線を2段あるいは3段張ります。基本的には2段で十分です。
イノシシの跳躍能力を考えてしまい、電線を高くして電線同士の隙間を大きくしてしまうと逆効果です。
電気柵の支柱に取り付けて電線をひっかけるガイシの向きにも注意が必要です。
イノシシは、十字状の構造物を見せると、横よりも先に縦の部分を触る個体が多いです。電気柵は支柱と電線でできた十字状の集まりなので、電線よりも先に支柱を鼻で触って探査する傾向があります。
この時、ガイシを内側(作物側)に設置してしまうと、イノシシは電線に全く触れることなく支柱ばかりを触って押し倒すことが可能になります。
ガイシを外側(イノシシ側)につけると、イノシシは支柱を触りながらガイシに触れて、一緒に電線にも触れる確率が高くなります。
同時にシカ対策も必要な場合は、地面から20、40、60、90センチの高さで電気を流します。そして120センチと150センチの高さにダミー線を張ると良いでしょう。
舗装道路沿いに電気柵を張る場合、道路ぎわに支柱を立てる方が多いのですが、そうすると野生動物が電気柵に鼻で触れたとき、動物の足は電気の通りにくい舗装道路の上にあります。これでは大きなショックを与えることができないので、前足だけでも電気の通りやすい土の上に来るようにします。特にイノシシは顔が長いので、舗装道路から50センチ以上内側に支柱を設置すると良いでしょう。
凹凸のある場所での電気柵設置は気を付ける必要があります。凹凸の地面の場合は、説明書通りに一定間隔で支柱を設置してしまうと、所々イノシシが通り抜けられるような大きな隙間ができてしまいます。このようなときは支柱を追加して電線が常に地面から同じ高さにすることを最優先に考えます。
ハクビシンやアライグマは体がイノシシよりも小さいので、地面から10センチ以下の高さに電線を張らなければならず、漏電防止の草刈りが大変です。したがって、木登りが得意な彼らの性質を逆手にとって、低い位置はネットやワイヤーメッシュで囲い、その上に電気柵を巡らせるのが効果的です。
電気柵を設置する際は、雑草抑制シートを利用して草刈りの労力を軽減させるのも良いでしょう。
ワイヤーメッシュ柵、電気柵以外にも、ネット柵やトタン柵などがあります。どれも一長一短ではありますが、適切に設置すれば間違いなく被害軽減効果があります。
しかし、ちょっとした設置ミスが野生動物の侵入を招くので注意してください。
そして何より、被害対策は柵を張ってから始まります。定期的な点検と補修を必ず行うようにしましょう。