農業の最先端技術が集まるイベント、『九州アグロ・イノベーション2019』に行ってきた!

公開日:2019年07月31日
最終更新日:
日々の農作業に取り入れたくなるような便利グッズから、最先端のアグリテック商品まで一堂に会する農業専門の展示会、『九州アグロ・イノベーション』。2019年6月26日に福岡で開催された同イベントに、農家による農家のラジオ「ノウカノタネ」のつるちゃんとコッティが遊びに行ってきました。最先端の農業技術が勢揃いの会場で、特に気になった3つの製品を中心に、イベントの様子をレポートしていきます。
■パーソナリティ紹介
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つるちゃん……本記事の筆者。実家の圃場(ほじょう)で夏・秋ナスの生産をしながら果樹園芸指導員として勤める兼業農家。 |
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コッティ……水耕栽培でレタス、露地季節野菜などを生産する農業法人の生産担当。ミカン農家の嫁。 |
やってきました!『九州アグロイノベーション2019』
会場となるマリンメッセ福岡は、1万人を超える収容人数を誇る九州でも最大規模のアリーナ付きホールで、有名バンドのコンサートなどでも利用されています。
ツルちゃん
『アグロ・イノベーション』ってこれまでも開催されているのかな? 似たような他のイベントと一緒くたになって区別しきれていないけど……。
もう何年もやってるよ! 東京でもずっと開催されていて、九州では2015年から毎年開催しているんだって! 私は来るの2回目だしね。就農したばかりの頃に1回来たことあるよ。こういうのって見て回るだけで楽しいじゃん?
コッティ
ツルちゃん
そういうのを世の中では“冷やかし”っていうんだけどね。でも農家にとってこんなに楽しく農業のいまを知ることができる場所はないからね!
コッティ
会場に足を踏み入れると、これから盛夏期に入ろうかという季節に合わせるように同時開催していた「猛暑対策展」がお出迎え!
冷やかしに入ったのに、冷やされ面食らってしまいました! こちらは農業に限らずさまざまな業界で暑さ対策に使える、最新技術を使った商品やサービスがたくさん展示されていて、見て回るだけでもかなり面白い展示会でした!
それでは、お目当ての『九州アグロ・イノベーション2019』へ。すべての展示を紹介することは難しいですが、我々園芸農家の目線で、特に面白かった部分を紹介していきます!
「気になった商品その1」。ciRoboticsの自動運搬車『THOUZER』
たくさんの人が往来する中、特定の人に自動でついて回る謎の台車を発見!

人について回る運搬車。急停止しても急旋回しても、一定の間隔を保ち続けます
コッティ
ツルちゃん
ciRobotics さん
コッティ
ciRobotics さん
ワンボタンで認識して、あとは勝手についてきますよ。
ちょっといじわるして、コッティと運搬車の間を横切ってみましたが、ちゃんと最初に認識した作業者の動きにしか反応しません。どうやって識別しているんですか?
ツルちゃん
ciRobotics さん
フォルムをレーザーセンサーで認識していますので、他の何かに反応することがないんです。別の人間にもちゃんと識別して反応しませんから誤作動は起きにくいですね。
コッティ
ツルちゃん
障害物に当たったり凸凹道や坂道で動かすのは難しいでしょうか?
整備されている施設園芸などで導入されていますね。坂道は9%の勾配まで大丈夫です。果樹園ではナシ農家の導入事例はあります。足場が悪い場合は、半自動にして指一本での操作にするとある程度までは対応できますよ。
ciRobotics さん
コッティ
圃場の状態に合わせて使えて、運搬がずっと楽になるのは嬉しいですね。

指一本で手動操作もできる。慣れれば後ろ手に操作しながら移動することもできそうだ
「気になった商品その2」。TAKIGENの『替刃式きゅうりカッター』

ツルちゃん
便利グッズを新しく発掘する場でもあるからね。情報をアップデートすれば、普段の仕事にも生かすことができるし。
コッティ
ツルちゃん
この『替え刃式きゅうりカッター』っていうの、話には聞いたことがあるけど、使ったことはないなぁ。
こんにちは! この商品気になりますか? こうやって収穫するので片手でできちゃいます。
TAKIGENさん

ツルちゃん
これは革命ですよね。ハサミだと両手が必要だから、台車を一旦止めて収穫しないといけなかったのに、片手を伸ばせば良い訳ですからね!
ちなみにキュウリ以外の作目には対応してないんですか? 僕はナスも作っているんですけど…。
ナスもこれでいけますよ! サンプル送りましょうか?
TAKIGENさん
ツルちゃん
「気になった商品その3」。inahoの『AI野菜収穫ロボット』

ツルちゃん
コッティ

収穫適期を判断して自動収穫。しっかりグリップし、カットします

そのまま背面の収穫かごに詰めていきます
ツルちゃん
動きも安定しているし、夜中もずっと一台で作業し続けるのかぁ。労働時間が激減するね。収穫作業を完全ロボット化できることは全農家の夢だけど、でも……。
コッティ
inahoさん
あら! ところがそんなことないんですよ! このロボット、実は販売していなくて収穫量に応じて手数料をいただくレンタル方式なんです。
え! それはすごい! 初期投資ゼロで導入できるんですね。しかもそのシステムだと不作の時でも豊作の時でも費用割合は変わりませんね。
ツルちゃん
inahoさん
そうなんですよ。しかも市場の中値で計算するので、品質を上げて高値で販売できる農家さんはより一層お得になります。収穫作業がなくなることで大幅に空いた時間を、農家さんの経験や勘の生きる、栽培管理や販売促進などのクリエイティブな分野にあててほしいと考えています。
収穫にやりがいや達成感を感じる人も多いけど、つるちゃんは収穫大嫌いだもんね。
コッティ
ツルちゃん
そうそう! 栽培は大好きなんだけど、収穫から出荷までは頭をカラッポにしてひたすら同じことを繰り返す作業だから、自分が機械にでもなったような気分になるんですよね(笑) この考え方はすごく面白いと思うし、どんどん広がって欲しいな。農家はより一層多収や高品質のための技術や、営業努力に注力していくべきだと思う。アスパラガス以外も収穫できるんですか?
どういう形にすると農家さんが利用しやすいかをヒアリングしている段階なので、まだまだこれからなのですが、下の図にある「選択収穫」のような、目で見て収穫しなければならない作目に挑戦していけたらと思っています。
inahoさん

イベントに行ってみた感想
コッティ
紹介しきれないくらい多くの企業が、いろいろなアイデア商品や新技術を展示していました。つるちゃんどうでしたか?
面白かったですね! 実際に導入してみたいと思ったものもあったし、とてもそこまで手が届かないなぁと、見世物を見せられているように感じるくらい進んでいる技術もありました。こういうのを見ておかないと、きっと知らぬ間に現代から置いてきぼりを食らうんだろうと思いました。
ツルちゃん
コッティ
これから起こっていく変化にそれぞれの農家が対応していくためにも、こういう機会があったら、会場に足を運んで見ておかなきゃね。
たくさんの発見がある展示商談会のイベントですが、何よりその提案をしているたくさんの企業の人柄に触れられる唯一無二の機会だと感じました。
その技術を使って何をしたいのか、どういう思いでやっているのかなど、顔を合わせて言葉を交わしていると、例え同じ商品やサービスであっても、インターネットで調べられる以上の価値を一度に多く感じられることができるのではないでしょうか。
今回ご紹介したものは、九州アグロ・イノベーションのほんの一部分に過ぎません。気になった人は、是非次回(2020年6月 マリンメッセ福岡)自らの目で確認してみてください。
2019年11月20日~22日は東京で開催!
アグロ・イノベーション2019
「草刈り・除草」や「農作物の鳥獣被害対策」、「野菜・果物展」など同時開催も盛り沢山!!