「レンコンはみじめだ」と言い続けた父

昨年のファーマーズ&キッズフェスタでレンコン揚げを販売する野口さん
──野口さんは、もともとご実家が農家だったのですよね。
そうです。うちは代々レンコンを作っているレンコン農家でした。
──それでは、農業をやるのは小さい頃からイメージしていたことだったのでしょうか?
いいえ、親父は私が農業を継ぐことに反対でした。レンコン農家というのは、昔は地域の中でも比較的貧しい人がやる作物でした。昔はコメは国家的な作物でしたから、可能であればコメ農家をやったほうがよかったのです。それでも他の作物を育てているということは、それが育たないような田んぼしか持っていなかったということを意味していました。レンコンを収穫する時には泥の中に胸のあたりまで入って手で掘ります。大変な農業だったのです。親父は「レンコンはみじめだ」と言い続けていました。それで私は大学に進学したのです。

一面に広がる野口農園のレンコン畑
植物と接することの楽しさに改めて気づいた
──そこではどんなことを専攻していたのでしょう?
民俗学と社会学を専門に学び、博士号をとりました。民俗学を学ぶことで、農業がどのような文脈に置かれているものなのかを見つめなおしたり、社会学を通して都市から見た農村がどのようなものなのかを捉えなおしていったのです。さらに、民俗学の調査をしている折、あるカイワレをつくる工場をやっている方に出会い、農業のすばらしさに開眼したのです。
──どのようなできごとだったのでしょうか。
そのカイワレ工場は、私からしてみれば、農業とは言えないような工場といったものでした。それを伝えると、その人は「私たちは出荷したカイワレが買われた先でどんなふうにしているかにまで思いをはせている。植物と会話しているかのように気持ちを寄り添わせることが楽しいのだ」と私に言ったのです。それから、植物と接することの楽しさに改めて気づいたのです。

民俗学や社会学がきっかけとなり、農業の新たな魅力に気づくことに
──それで、子供にも農業体験をしてもらおうということにつながったのですね。
そうです。植物と接することはとにかく素晴らしいことですが、都会の子供たちが農業や植物に触れる機会はほぼなく、自然をリアルに感じられなくなっています。このフェスタで子供が実際に土に触れ、植物に触れることで、どこに根が生えて、どんな風に育つのかを体験することができるのです。教育の現場でテストの点をとるために教科書に書いてあるのと同じことをやってもつまらないですよね。現実の植物にできるだけ近づいてもらうことがねらいなのです。それも、1000人が目標です。
──クラウドファンディングでは、どんな方に支援してもらいたいですか?
子育て世代は金銭的にも大変でしょうから、そこからもらおうとは思っていません。植物を育てることや、土に触れる喜びを知っている農業関係者には私の心が伝わると思いますので、共感してくれたらぜひ支援していただきたいですね。
【著書紹介】
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「1本5000円のレンコンがバカ売れする理由」 安値傾向にあったレンコンのイメージを根底から覆し、自身が生まれ育った農家が育てるレンコンを、パリの高級レストランでも取引されるほどに育てあげたブランディングのストーリーをつづった著書。新潮社より発売中。 |