リンゴ農場での授粉試験を提案
一般的なリンゴの授粉作業は、中心花の1つ1つにダチョウの羽で花粉を付けていきます。中心花は満開、天候は晴れ、花は濡れていないことなど、いくつかの条件が揃わなければ作業はできません。また、この授粉の善しあしが果実の形に影響するため、生産者にとって、精神的にも肉体的にも負担の大きい作業となっています。
『マルショウ紫波』では、東長岡果樹生産組合(川原一文組合長)に、リンゴの授粉作業にドローンを活用することを提案しました。
「以前から、花粉の空中散布に興味があった」と話すのは、副組合長の藤沼伸(ふじぬま・しん)さん。しかし、花の向きはバラバラなので下向き、横向きが混在する花全体に上からの散布でうまく授粉できるのかという不安もあったそうです。検討の末、形の良い果実を作るのが特に難しいリンゴの品種の圃場で試してみることになりました。
3年間の実証実験をスタート
2018年5月、いよいよドローンによる花粉散布の実証実験が始まりました。天候は晴れ、中心花は乾いた状態で樹齢約40年のサンふじ約100本に花粉を空中散布。以前は4人で1時間以上かかっていた作業が、わずか15分で終了しました。
約30aの圃場には、従来通り授粉を助けるマメコバチと受粉樹を設置し、その後の生育を観測。花の向きに関わらず均等に授粉ができ、手作業の授粉と比べて収量も品質もやや上回る結果となりました。
続いて今年5月、同じ圃場で2度目のドローン散布を実施。1回目と条件が違うのは、中心花が濡れた状態での散布ということ。「散布から約2カ月が経過しましたが、授粉率も結実数も問題ないです」と藤沼さん。このまま例年並みの収量と品質が確保できれば、中心花が濡れた状態でもドローンを使えば授粉作業が可能だということが実証されます。来年は、これまでと違うタイプの溶液での散布も計画しているとのことでした。
実証実験は2020年で終了予定です。実際の花粉散布は、『マルショウ紫波』のオペレーターが行いましたが、今後もドローンでの花粉散布を継続できるよう組合員の資格取得を考えています。岩手県内初の試みが、リンゴ生産者の負担を大きく軽減してくれそうです。
自分のペースで資格取得できる
農業用ドローンを操縦するには、『一般社団法人農林水産航空協会』指定の教習施設で、資格を取得しなければなりません。学科と実技を合わせて5日間という日程が一般的ですが、農業従事者にとって5日間連続で作業を休むことは容易なことではありません。
2019年5月に『マルショウ紫波』のスクールで資格を取得した、『志和アグリサービス組合』の高橋和久(たかはし・かずひさ)さん。細かい日程変更や調整が可能で、5日間連続ではなく1日空け、5日空けというように、農作業を優先したスケジュールで無理なく教習に通うことができたそうです。
資格取得を後押ししたのは、和久さんの父でもある組合長の高橋淳(たかはし・あつし)さん。「時代の変化に合わせて、農業も変化して当然。ドローンのような最先端の技術を導入することで、若い世代に意欲を持って農業に従事してほしい」と話してくれました。
今年は、『銀河のしずく』や『ヒメノモチ』を栽培する組合員14名分の水田のカメムシ防除を実施。初めてのドローン散布に、緊張気味の和久さんでしたが、何でも相談でき、すぐ駆けつけてくれる『マルショウ紫波』のフットワークの良さに助けられているとのことです。水稲のほか、ジャガイモの生育促進用酵素の散布など、ドローン活用の幅は拡がりそうです。
ドローンで地域を元気にしたい
「水稲や果樹の生産者が多く、林業も盛んなこの地域で、何か貢献できることはないか」という思いから始まった『マルショウ紫波』マルチローター事業部は、オペレーター育成、ドローンによる害虫防除作業等の請け負いサービス、空中果樹授粉、運搬作業や測量など林業支援、地域防災協力など、事業の幅を広げています。
「農業でも林業でも、働きがいを感じてほしい」と話すのは、『マルショウ紫波』の代表取締役・伊藤政之(いとう・まさゆき)さん。ドローンの導入で作業負担を大幅に軽減し、スマート農業の実践、生産性の向上、次世代の担い手の確保、そして地域の活性化に繋がることを願っています。
『マルショウ紫波』では、東北唯一の国産ドローンメーカー『東光鉄工』の産業用ドローンのほかDJIの空撮ドローン、SwellProの完全防水ドローンも取り扱っています。無料の飛行体験もできますので、ドローンで何ができるかを詳しく知りたい、自分の圃場でドローンを飛ばしてみたいなど、お気軽にお問い合わせください。
【お問い合わせ先】
株式会社マルショウ紫波
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