水と一緒に液肥を流せる! 便利で使いやすく、収量も着実にアップ!!
28歳の若さでイチゴ栽培を任される
江戸時代に本格化した干拓により広がった佐賀平野。全国屈指の米どころであり、野菜や果実類の生産も盛んなこの地で、米、麦、大豆そしてイチゴ栽培に携わっているのが徳永英憲さん(28)です。工業高校を卒業後、一般企業に就職していましたが「人手が足りないから手伝って欲しい」という父親からの要請を受けて退職。福岡で観光農園を営む『玄農舎』で最新農業システムを使ったイチゴ栽培のノウハウを学び、3年前から代々続く農家の4代目としてバトンを引き継いでいます。
「実家に戻ったタイミングで、親父が『お前が好きなようにやってみろ』と、イチゴのハウスを僕に任せてくれたんです。収量を増やすには『水の管理がもっとも重要』だと分かっていましたから、株式会社アイナックシステムの灌水コントローラー『KPS』をまずは導入しました」と振り返る徳永さん。ただ、「任せた」とは言いつつ、最初は水やりのタイミングや量、やり方を巡って親子の口論が続いたとか。「20年の経験がある」という3代目と、「最新の農業ノウハウを学んだ」という自負がある4代目のぶつかり合い。それが、1年目、2年目と確実に増えた収量を見て、今はすっかり収まったそうです。
要望にも迅速に対応するフットワーク
『KPS』の魅力について尋ねると、「水と一緒に液肥を流せる独自のシステムと、使っていて『もっとこうだったらいいのにな?』という要望にフットワーク軽く応えてくれる対応の丁寧さ」という答えが返ってきました。
実際、『KPS』にもともとインプットされているシステムは肥料の目詰まりを防ぐため、先に液肥を流しその後に水を流す設定になっていたとか。ところがイチゴの高設栽培は土が浅いため、せっかくかけた栄養分が水で流れ出てしまうデメリットがありました。
「液肥もいろいろな種類があって、詰まりやすいものがあれば詰まりにくいものもある。『ケースバイケースで設定を変えられないか?』と今年3月に相談したら、イチゴの定植がスタートする9月までに改良版を作ってくれたんです。そのスピーディーさと細やかさが嬉しかったですね」と笑顔を見せます。今年から、栽培する品種も佐賀県が改良した新品種『イチゴサン』へ変更。これまで以上に食味がしっかりしていて色艶が良く、1.5倍の収量を見込めるのが特長らしく、『KPS』のシステム改良との相乗効果に期待が高まります。
市販品で手軽にカスタマイズ。自分仕様に進化できるのが魅力
農家に生まれ育ったからこその農業への思い
『KPS』を開発した株式会社アイナックシステムは、最先端の工場内の設備やプラントの制御システムを提供している会社です。社長の稲員重典さんの実家が農家を営んでおり、イチゴやブドウ栽培の大変さを両親の背中を見て痛感したことが農業に役立つコントローラの開発へと掻き立てたそうです。
「畑の水やりがあるから、家族そろって出かけられないし、たまに出かけたとしても午後3時までに帰らないといけないという制限付きでしたから、子どもの頃はやはり寂しかったですね。それで『灌水時間や量、回数を自動設定できる機械があったら楽になるだろうな。いつか創りたいな』と、ずっと思っていました」と振り返ります。
意外だったのは、先端技術を意識しタッチパネル式やIoT遠隔操作式も販売していますが、同社の主力商品はアナログ版だということ。実は開発を進める中で、「スマート農業という言葉とは対照的に、生産者の多くが『簡単に設定できること』を求めている」と気づいたと言い、シンプルで、分かりやすく、壊れない製品造りを推進。しかもアナログ版に完備されている端子に、市販のスマートプラグやWiFiルーターを接続するだけで、スマホやタブレットを使って離れた場所から灌水のON・OFFや水量設定ができるようになるというから便利! 必要な人が、必要に応じてカスタマイズできる“進化するアナログ版”なのです。さらに嬉しいのは、既存のシステムに相乗りする形なので、初期投資やランニングコストをグッと抑えられるというメリットもあります。
農家一人ひとりに向き合い、より求められるものを提供したい
「農家の方々は、周りよりも多く、より美味しいものを作りたいという競争の中にいます。より高みを目指すお手伝いを、それぞれのニーズに合わせたシステムの改良で行なっていきたい。市販品で代用する分は代用し、一人ひとりに寄り添うシステム改良にコストと人員を割いていきたい」と前を向きます。
この画期的なカスタマイズ法を聞いた徳永さんも「今年、子どもが生まれたので家族と過ごす時間を大切にしたいけど、父がメインで見ている田んぼや畑を引き継ぐと農作業も忙しくなる。田んぼにいながらイチゴの水やりを遠隔操作できるなんて便利ですね」と興味津々。
「でも、土中の湿度を測れるセンサーと連結したほうがいいな」と早速改良点を発見し、「どの辺に何カ所くらいあればいいですか? やってみましょう」と応じる稲員社長。ここからまた新たな何かが生まれそうです。
2年後の実用化を目標に、自動収穫装置の開発にも着手
これまでオーダーから納品まで約3週間かかっていた『KPS』ですが、この秋に量産体制が整い約1週間での納品が可能となり、さらに注目度が高まっています。
「今はイチゴの高設栽培を中心に九州でご活用いただいていますが、全国の農家さんの作業が楽になるお手伝いをしていけたら嬉しいですね」と語る稲員社長。実はイチゴやきゅうりの自動収穫装置も開発中で既にプロトタイプは完成しているそう。
「制御の世界で培ってきた経験とスキルを生かし、農業の未来を明るくしたい!」――同社の挑戦はまだまだ続きます。
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株式会社アイナックシステム
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担当:稲員(いなかず)