作型設定と畑の準備
定植は、遅霜の心配がなくなるころから、さらに1週間経ってから行えば、初期の生育が順調に進みます。それよりも早く定植する場合は、夜間の温度確保のために、保温キャップを使用するようにします。
元肥は、10平方メートル当たり成分量で、窒素:300~350グラム、リン酸:350~400グラム、カリ:300~350グラム、堆肥(たいひ)を約20キロ投入し、15℃以上の地温を確保できるよう、1週間前にはマルチを張っておきます。
露地抑制作型なら、キュウリはエンドウやソラマメの後作に作付けできます。マルチを黒からシルバーか白黒に替えると、地温の上昇を抑えることができて栽培がより安定します。この露地抑制作は、中間地で7月上旬まで播種(はしゅ)できます。台風の被害がなければ、9月のお彼岸ごろまで収穫が続けられるので、作型を増やし、連続出荷を目指すのもよいでしょう。また、本葉2~2.5枚の若苗を定植すれば、高温期の活着がスムーズになります。
草勢維持のポイント
確実に着果節位まで芽かきを行う
下位5節とはいわず、7節までの側枝と雌花は除去します。特に雌花は必ず7節目まで除去し、茎葉や根圏への養分分配を優先させ、長期間収穫できる株に仕上げましょう。
1番花開花期の理想の草勢をイメージする
8節目以降で最初の雌花が開花した時、側枝が開花節から5センチ程度伸びていて、成長点までに本葉が6枚ほど展開している状態(上図)が理想の草勢です。側枝が短い、あるいは展開葉が5枚以下であれば、思い切ってもう一つ雌花を除去します。この雌花の除去が草勢を回復に導き、収穫開始1カ月の収量を上げることにつながります。
主枝摘芯の重要性とタイミング
主枝は、本葉25枚までには摘芯し、側枝の発生を促します。摘芯のタイミングは、成長点が手の届く高さが理想です。伸ばしすぎた主枝をハサミなどで切りとる方法では、キュウリの収穫が進む中、草勢を急激に落とす原因になります。
追肥量のカンどころ
キュウリの追肥は、収穫した果実に含まれる窒素成分を、圃場(ほじょう)に戻すイメージです。収穫本数に応じた追肥を実施することが、草勢を維持し、秀品性とつるもちアップにつながります。
10平方メートル当たりの追肥量は、粒状の化成肥料なら、チッソ成分で30グラムを1週間に1回、液肥ならチッソ成分で10~15グラムを1週間に2~3回施すのが基本です。ただし、1株当たりの1日の収穫本数が3本以上となる時期には、粒状肥料なら5日に1回、液肥なら2日に1回程度の追肥が適当になります。
ブリーダーのおすすめ! 直売所これが定番品種
ロングベストセラー品種の「夏すずみ」は、夏秋栽培で問題となる病気(うどんこ病、べと病)に安定して強く、側枝の節間も短くて間延びしないので、他品目を同時に栽培している忙しい方でも、必要以上に手をかけずに省力で長期間収穫が続けられることが最大の特長です。近年は、ウイルス病(ZYMV)耐病性を兼ね備えた「VR夏すずみ」を遅まき(7月定植)で組み合わせた直売所リレー出荷などが人気です。
定番に加えて、漬け物や加工向けなど、肉質・食味の特長を生かすことが可能な「シャキット」「鈴成四葉(すずなりすうよう)」を作ってみてはいかがでしょうか?
「シャキット」は、外観はイボイボの四葉キュウリですが、果実の長さは市場の規格と同じ22センチ前後で曲がりが少なく秀品率が高い露地栽培用の品種です。寒さは苦手ですが、暑さには強く6月以降の定植が適作型です。
また、うどんこ病、べと病、ウイルス病にも強く安定しているため、農薬使用回数を極力控えた栽培ができます。最大の特長はみずみずしさと歯切れのよい食感で、発売以来多くの人々に愛好されています。「鈴成四葉」は、暑さに強く早生性が高いので遅まき(7月定植)の露地栽培に最適です。イボイボが非常に強く、26センチ前後と少し長めの果実ですが、果肉はシャキットよりもさらに緻密でしまり、特に漬け物や加工に用いると食感の差別化が図れます。
「半白節成(はんじろふしなり)」に注目!
「半白節成」は早生性が強く、各節に雌花が着生して初期から収量が上がります。低温性にすぐれ半促成~雨よけ栽培が適作型です。見た目になじみは少ないですが、韓国では主にキムチに使われることが多く、漬け物にしても食感がしっかりと保たれる点が特長です。果皮は薄くやわらかく、加熱調理しても果肉が崩れず料理の幅を広げてくれます。200~400グラムほどの少し大きめの果実サイズで収穫して、加熱中心の異文化料理のレシピと一緒に提案してみてはいかがでしょうか?
執筆:栽培基礎講座・タキイ研究農場 新 久紀(しん・ひさのり)/品種紹介・タキイ茨城研究農場 馬塲大悟(ばんば・だいご)
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