イチゴ農家の声から『farmo』が誕生

『farmo』は設置工事不要。地面に差すだけですぐに使えます
ハウス内の環境管理はとても重要。勘と経験だけに頼るよりも、ハウスの環境を計測してデータを見える化できれば、作物の品質向上や収量アップにつながるはず。しかし、ハウス環境モニタリングシステムの導入は、コスト、設置、技術的にハードルが高いと感じている農家は少なくありません。
『farmo』は、そのハードルを大きく下げました。1台あたり14万7000円(通信機込み)と手ごろな価格で簡単に設置でき、難しい知識は不要です。
ハウスの管理に必要な気温、湿度、飽差、土壌水分、地中温、成長点温度、照度、CO2の8項目が1台で計測可能。データはクラウドのサーバに保存されるので、いつでも、どこでも、スマートフォンのアプリでハウス内の環境を確認することができます。
利用していない期間は月額利用料がかからない点も魅力の一つです。

分かりやすいインターフェースが特徴
開発メーカーの株式会社farmo(ファーモ)は、もともとはスマートフォンアプリの開発会社。ある日市役所から「農家向けに何かアプリを作れないか」と相談を受けた代表取締役の永井洋志さんは、大谷市のイチゴ農家のもとを訪れました。
「地下水を活用して真夏にイチゴ栽培に取り組む農家さんだったので、常に水温が気になるようでした。そこでハウスにいなくても、水温と気温をスマートフォンで確認できるようにしようと思い、作ったのが『farmo』でした」と永井さんは開発当時を振り返ります。

永井洋志さん
「家に帰ってもスマホでデータを見られるので、夜も安心できて、これはすごく良い!」というイチゴ農家の感想に、手応えを感じた永井さんは本格的な開発に着手。さまざまな農家の声を直接拾い上げて機能の取捨選択を行い、現在の形となりました。
『farmo』はイチゴだけでなく、同じくハウスで栽培するトマト、キュウリ、メロンなどの作物にも使われています。
念願のハウス環境の見える化を『farmo』で実現
栃木県壬生町のイチゴ農家3代目の落合実乃里さんは、両親、叔父と4人で、ハウス面積4000㎡の圃場で『とちおとめ』を栽培しています。3年前に『farmo』と出会いました。

広々とした連棟ハウス内で栽培
「導入当時、私は農業を始めてまだ2、3年。親が主に栽培を見ていました。自分も栽培に携わるべく、ハウス内のデータを計測したいと思いましたが、有名メーカーの商品は高くてとても手が出せませんでした。ある日農協で手ごろな価格の環境モニタリングシステムがあることを聞いて、試しに使ってみることにしたのです」と落合さん。
親の勘と経験が頼りのハウス管理でしたが、実際にセンサーで計測した数値をはっきり示すことで、経験がまだ浅い落合さんの提案も、両親に納得してもらえるようになりました。

落合実乃里さん
「他社製品は設置工事が必要だったりと大掛かりですが、『farmo』はコンパクトなのが一番良いですね。設置はとても簡単で、アプリをダウンロードして製品番号を登録すれば、それこそ5分で使い始めることができました」と振り返ります。
太陽光発電で稼働できるので、電源の確保は不要。通信機を自宅のコンセントにつなげば、センサーで集めたデータを、どこにいてもスマートフォンやタブレットから確認することができます。

コンパクトサイズの通信機。インターネット回線の準備は不要です
冬場に収穫最盛期を迎える落合さんのハウスでは、イチゴの価格が高い時にたくさん出荷するために、寒い季節もいかにハウスを適温に保てるかが重要となります。
落合さんのハウスは内張りと外張りの2重構造で、以前は肌感覚や時間でハウスのビニールを開閉していましたが、温度を『farmo』で確認できることにより、開ける温度と閉める温度をアプリでアラーム設定して、正確に管理できるようになりました。
「ハウスの温度管理のためにパック詰めの作業を中断することがなくなったので、作業効率が上がりました。僕の場合、一度集中が途切れると、また集中した状態に戻るのに10分、20分かかってしまうので、そのぶん早く仕事を終わらせることができますね」と落合さん。
収量は導入前に比べ1~2割ほど増えたとのことで、導入の効果は目に見える形で表れています。

2台目を増設し、単棟ハウスでも使用しています
農業の現場に寄り添い、ICTで課題を解決
就農5年目となった落合さん。現在では、親からイチゴ栽培を任されるようになりました。データを一緒に見ながら話し合えることで、親子間の農業継承にも一役買っています。
「圃場規模を守って、できれば拡大して、おいしいイチゴを作り続けていきたいですね」と落合さん。このような農家さんの期待に応えるべく、『farmo』はまだまだ進化し続けます。
『farmo』初号機のリリースから半年後、宇都宮市役所の農業企画課から永井さんに、「水田にも課題が多いので何かできないか」と相談がありました。水稲農家に話を聞いていくと、毎日朝晩2時間かけて圃場の水位の見回りをしていることが分かりました。
どこにいても水位を確認することができれば、水管理は楽になるはず──。そう確信した永井さん。水稲農家の悩みを解決するべく、新たな挑戦が始まりました。
【お問い合わせ先】
株式会社farmo
〒320-0855 栃木県宇都宮市上欠町866-1
TEL:028-649-1740 FAX:028-649-1741